目覚めた瞬間死を悟った雑魚モンスターの僕

ポタいち

第1話 目覚める

 (ここはどこだ……)

 突如目覚めた彼は自分の体の違和感に気づく。彼は今置かれている状況に整理ができていない。


 「いたぞ、まだゴブリンの群れが散乱している!一匹残らず討伐しろ!」


 それは野太い声が森中に響き渡った。それに答えるように、一人、また一人と返事をしている。


 (ゴブリンの群れ…?ひょっとして、今、危険な状況に置かれている…?)


 私は直ちに助けを乞うと、立ち上がる。だが、自分の体に違和感を気づいたのがそれからだった。緑色な皮膚、尖らせている鉤爪、そして、異様なまでに視線の低さ。


そう、思考に耽っていくと、


 「ゴブリンがまだここにもいるぞ!」


 声がした先に振る向いた矢先に、頬に暖かい液体が流れた気がした。


 「ッチ!外した。今度こそ、当ててみせる」


 その男は弓矢を大きくかざし、こちらの視点が定めるように狙っていた。次は外さないと言わんばかりの殺意が地肌から感じられる。


 早く、逃げろ、と脳内に響く本能がそう叫んでいた。信じたくはなかった。だが、己の本能を理解させるにはそれだけで十分だった…。自分こそが魔物という立ち位置にいるということを…。


 私は弓矢の男に背を向け、走り出した。


 思考がまだ混沌としていた。信じたくはなかったのだ。いっそのこと、動かずに、打たれようなどの浅はかな考えがよぎったが、諦めるようで、情けないようで…、その考えを捨てたのだった。


 「バカが、この俺に逃げられると思うか!」


 その男は相当手慣れだったのか、声から伝わるも余裕な表情だと見受けられる。


 そこで、肩から衝撃を覚えた。目線を左右に揺らすと、矢が肩に刺さっていたことに気づく。初めての感覚なのか、痛みに関してそこまでの激痛を感じているわけでもない。これも、ゴブリン特有の感覚なのだろうか、などのんきなことを考えていた。


 「くそ、見失った!どこだ!」


 男は苛立ちそうに吐き捨て、周囲を見渡しながら、走り去るような足音が聞こえてきた。幸いにして、木陰を見つけ、そこで身を細められた。改めて、状況把握していき、周囲を警戒すると肩から徐々に痛みが広がっていくことに気づく。

 

 (まずい…。これ以上走ると痛みが広がる……。いや、我慢すればいい話だ…)


 前までは社会人だったはずだった。仕事の残業を終え、やっとの帰宅なところにわけも分からずここに連れてこまれ、落ち着けと言われたほうが無理難題といったほうが等しい。


 周囲の状況を確認するため、木陰から顔を出す。


 そこには悲惨な光景が浮かんでいたのだった。


 
















 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る