第71話 体育祭⑧声援

 午後のプログラムは既に始まっているが、俺と有希は学校からの事情聴取が長引いたため、昼ご飯を食べていない。

 

 俺と有希は2人で体育館裏のベンチで弁当を食べながら、午前の先生からのメモの話と有希ファンクラブの話をした。


 有希はまずファンクラブがあった事に驚き、次にファンクラブの人数がそんなに居たのかと目を丸くしていた。


 有希の周りにファンクラブの取巻きが今後常に一緒にいる事は、学校内にイジメっ子が複数いる以上、今日の様な事が無いとはいえないので、渋々了解してもらった。


 写真もファンクラブの隠し撮り写真が4年分貰えると話したら、隠し撮りでも貰えるなら嬉しいそうだ。

 俺にも見せて欲しいが、二上に写真は有希に渡せと言っておこう。


 さて、借り物競走だが、有希はどんなお題を引くのかな、楽しみだ。

 

 A組からG組までの7人でそれぞれ箱まで走って行ってお題を引き、紙に書いてある品物を審判まで持って行って、お題と品物が合致して最初の一組がゴールしたら、残りの組は時間の都合上全て切り捨てられるというルールだ。


 有希の順番が来た。


 「位置について…用意…」


 『パーン』


 有希は最初にお題が入った箱に到着した様だ。

 

 紙を開いて読んだあと…

 コッチを見た?

 

 んー?

 コッチに来てないか?

 

 んあー、手を掴まれた!


 「えっ、ナニナニ?

 何なの?」


 「いいから来てっ!

 お願い!」


 「えっ、これ物だけじゃなくて人間もあるんだ、お題は何?」


 「走って走って!」


 「あー、はいはい。」


 なんと、審判は阿部先生だった。

 阿部先生は紙を読んだ後、直ぐに、


 「ジャッジ…OKです。」


と許可を貰えたので、1番にゴール出来た。


 ゴールした後、紙を見せてもらったら、ナント…

 

 『素敵な人』


だった。


 これ、ジャッジする人が阿部先生じゃなかったらアウトだったんじゃね?

 審判が知り合いで良かった。

 有希も無茶するなー(笑)。


 最後はリレーだ。

 1年2年3年の3学年からそれぞれ選抜メンバーが出る。

 最初に1年から走って、最後は3年のアンカーまで繋ぐ。

 

 この得点配分は多く、A団はこの順位により、優勝が狙えるらしい。

 有希はアンカーでは無いが、選抜メンバーに選ばれるくらいだからやはり速いのだろう。

 

 頑張れー。


 撮影中は声を出すと録音されてしまうので、俺は声を出さない。

 

 現在A団の走者は3位で、有希の順番は、アンカーから2人くらい前かな。

 

 有希にバトンが…渡った!


 すると会場から、爆発的な黄色い悲鳴と声援が有希に浴びせられた。

 

 有希も動揺してるっぽいが、一所懸命走っている。

 会場もメチャメチャザワついているが、アチコチから、


 「片山せんぱーい、頑張ってー!!」


 「有希センパーイ、ファイトー!!」

 

 「お姉さまー、私のために勝ってー!!」


 オイオイ、最後の声援はなんだ?

 会場に笑いが漏れている。

 泣いてる子まで複数いるよ…マジか。

 

 イヤ…ね?

 二上に昼ご飯食べた後にさ、公認になったって話をしておいたのさ。

 で、コレがその結果。

 

 後輩からしたら大好きな先輩のラストランだもんなー、しかも非公認から公認になったんだから、ひと目をはばからなくても良くなったワケだし。


 有希、良かったな、こんなにも皆に愛されてて…。


 有希は1人抜かすと2位でバトンを渡した。


 有希が走り終わってもまだ会場はザワついていたが、有希が俺に小さく手を振った途端、


 「キャーッ、先輩が手を振ったー!」


 「誰あれ…」


 「えっ、マジで?」


と声が聞こえたので、俺は振り返そうとした手を降ろし、有希に何も反応を返せなかった。


 ちなみに結果は優勝がA団だった。

 

 今日はあんな事があったので、帰りは有希と正門で待ち合わせて帰る事にしたが…

 

 取巻きスゴっ!

 なんじゃこりゃ…

 早速今日からかい!

 

 仕方ない、有希から離れて片山家まで帰るか…

 なんかストーカーみたいでイヤだな…。

 

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