第60話 指輪交換

 富士山の見える絶景スポットで検索ヒットした公園に行くと、ベルとテーブルとベンチがあって、そこで弁当を食べる事にした。

 富士山が綺麗に見えるなぁー。


 有希はベルに近付き、そこでベルを3回鳴らすと、


 「お兄ちゃん、もう指輪したい。

 私にはめて。」


 「あぁ、いいよ。

 ちょっと待ってな、今用意するから。」


 俺は車から指輪の入った袋を持って来て、中に入っていた箱から指輪を出した。

 俺の指輪と有希の指輪を見較べたところ、俺の指輪の中に有希の指輪がスッポリ入った。

 

 有希の指って細いんだなー…。


 有希が俺に左手を差し出して来たので手を取り、薬指にはめようとした。


 「お兄ちゃん…呼び方を変えるね…?

 真之さん…これで、私が真之さんの家を出る時までは、私は真之さんの婚約者です。

 どうか、末永く…

 よろしくお願いします。」


 「あ…あぁ、何か本格的だな。

 大学受かったらの話だからな。

 こちらこそ、よろしくお願いします。」


 俺はそう言いながら、有希に指輪をはめた。


 有希も俺の指輪を手に取り、俺の左手の薬指に指輪をはめながら、


 「必ず大学合格するから。

 その時にまたちゃんとした答えを聴かせて。」


 「答え?

 答えって何うおっ!」


 有希が正面から抱き付いて来て、俺の頬にキスをした!


 マジか…色々とふんわりしていて柔らかくていいニオイがして…ビックリした、とにかくビックリした…!


 「婚約者のフリでいいんだよ、フリで!

 ビックリしたー!」


 有希は、

 

 「キャーッ!」

 

と叫びながら走って逃げて行き、離れた所から


 「カタチから入るの、カタチからーっ!」


と大声をあげていた。


 

 …こんな思わせぶりな事をして、有希は俺の事をどう思っているんだ?

 まさか…有希は俺の事を…

 好き…?

 イヤイヤ、そんな事はないだろう。

 それとも、モテない俺をからかっているのか?

 でも真面目なあの子が、そんな人が悲しむ様な事はしないだろうし…

 

 答えを聴かせて、か…。

 

 イヤ、有希がどうのではなく、自分は有希の事をどう思っているのか?

 ハッキリ言えば、勿論……


 好きだ。

 

 以前、有希に相応しい男が現れるまでは…とか、見守って行きたい…とか思ってはみたが、もし、こんな俺でもいいのならば、俺が有希の隣に立ちたい…。


 でも、こんな事ハッキリさせても…

 もし告白して断られたら、有希が大学生活を終えるまでの4年間、俺の家でずっとギクシャクしながら過ごさなくてはならない。

 それはかなりの苦痛だ…

 

 こんな醜いバケモノを、誰が愛してくれようか…か…


 どこかで聞いたフレーズだが、まるで俺の事を言い表している様で、昔からずっと頭から離れない言葉だ。


 俺の様なブサイクを、本当に誰か好きになってくれるのだろうか…?


 有希も大学が受かったらって言ってたし、それまでもう少し考えさせてくれ…。

 

 有希が恥ずかしがりながらも戻って来たので弁当を2人で食べた後、俺だけベルの方へ行くとプレートがあり、そこには


 『3回鳴らすと恋愛成就、縁結び』


 と書いてあった。


 


 

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