第55話 雨のち泥棒①
休憩後、交番の外を見ると、雨が降っていた。
雨になると事故は増えるが人が減るので事件や酔っ払いは比較的少なくなる。
深夜近くになり、ようやく交番内の取扱いの説明が終わりパトロールに行こうかという話をしていたところ、無線機にパトカー3号から、
『淀橋7丁目にある三角ビルの非常階段に不審者がいる、泥棒ではないかと通行人から訴出を受けたので、応援願います。』
との内容を傍受したので、交番の主任である河合巡査部長と俺と菅野で直ちに現場に急行した。
現場である三角ビルに到着したところ、パトカー3号の乗務員である
「黒っぽいキャップ、黒っぽいジャンパーを着た男が、三角ビルの非常階段の4階付近のドアの前でモゾモゾと何かやっていたらしい、俺はビルの出入口を押えておくから。」
とビル前で警戒していたので、河合主任と俺と菅野はエレベーターで三角ビルの10階部分にあたる屋上まで上がり、屋上を検索したが不審者は居なかった。
そこでふと隣の四角ビルの地上7階部分にあたる屋上を見下ろすと、何か黒い影が動いた。
俺は手に持っていたライトの光を黒い影に当てると、黒いキャップ、黒いジャンパーを着た男が居た。
俺は次の瞬間、
「動くな!
そこを動くな!!」
と男に叫んだ後、無線で
『隣のビル!
隣のビルの屋上に不審者がいる!』
と他の警察官に知らせた後、聞く耳持たず逃走しようと走り出した男に対し、
「動くなと言っているだろう!!」
と叫ぶと隣の四角ビルの屋上が目の前に来る三角ビルの7階付近まで非常階段を駆け下りた。
40代の無精髭の中肉中背の男は四角ビルの屋上側に、俺のすぐ目の前に居た。
観念したのか逃げる気配もなく、ただ立ち尽くしていた。
俺は男に対し、
「そのビルの関係者か?」
と質問したところ、男は
「俺は違う。」
と答えたため、俺は更に
「何でそのビルに侵入した?」
と追及したところ、男は
「お巡りが来たから俺はそっちのビルからこっちのビルに飛び移って逃げたんだ。」
と無表情で答えた。
そこに、遅れて来た河合主任と菅野が到着したので、今我々の居る三角ビルから1メートル以上離れている四角ビルの屋上に居る男をどう確保しようかと河合主任に話をしようとしたところ、河合主任は男に対し、
「そこを動くなよ!」
と言うと突然隣の四角ビルにその身を踊らせた。
その時俺は何か言い様のない悪い予感がしたのだが、やはりそれは現実のものとなってしまった。
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