第12話 対決②

 「では門川さん、こちらを聞いてください。」


 俺はボイスレコーダーを彼女から借りると、操作ボタンを押した。


 『イジメ?片山さん、それは何かの間違いじゃないかな、私は忙しいので、これで失礼するよ。』


 門川の声がボイスレコーダーから流れると俺は門川を冷酷な目で見ながら、


 「あと数パターン程ありますが、聞きますかな?」


 「そんな録音、本人の承諾が無ければ犯罪だぞ!」


 「学校や教職員は学生に対し法律上安全配慮義務があり、イジメを放置したり改善策を練らなかった場合は罰則はないが民事上損害賠償責任を負う。

 門川さんは彼女の訴出を無視し続けイジメを放置した結果、怪我をさせ心に傷を負わせた。

 つまり、民事訴訟の証拠としての録音ならば本人の承諾が無くても罪には問われない。

 そんな事より、嘘をついて彼女を傷付けた事に対して謝罪の言葉は無いんですか?

 つまらない嘘は身の破滅を招きますよ。

 時間の無駄だ、さっさと本題に入りましょうや!」


 俺はテーブルを両手でバン!!と叩き、本気で門川にガンを飛ばしたところ、門川は顔色を悪くして黙って俯いた。


 俺の顔はこんな時だけは役に立つ。

 過去に俺が本気で怒っているところを見て親友は、別人の様に怖いと言っていた。

 普段から怖いと言われてるのに、本気で怒った俺はどんだけ怖いんだろうか、一度映像で自分の顔を見てみたい。


 「彼女は昨年の秋から本年にかけて数カ月に渡り、白石というクラスメイト他数人からイジメを受けてきました。

 罪名で言えば、暴行、傷害、脅迫、器物損壊、窃盗等であり、これは明確な犯罪行為です。

 刑事・民事で訴訟を起こせばその生徒達は間違い無く罰を受けるでしょう。」


 俺が話していたところ、校長が、

 

 「証拠はあるのか?」


 と遮ってきた。


 「あります。

 画像、音声、文書記録、診断書等、訴訟に耐えうる証拠は揃っています。」


 「そんなもの今の世の中、偽造出来るではないか、全て偽物だ!」


 「ならば全て専門機関等に鑑定に出せばいい。

 画像も加工されているのかされていないのか判るし、犯人の声も声紋鑑定すればいいし、ノートや机に書かれた脅迫文は筆跡鑑定に出せばいい。」


 「貸してみろ、全ての証拠品を私に見せてみろ。」


 校長にSDカードや診断書等を渡すと校長は門川にSDカードをパソコンで内容確認する様に指示し、門川は近くにあったパソコンを起動させ画像を見る。


 『あんたのせいで、私が彼に振られたの、だから今度はあんたが私の代わりに苦しみなさいよ!

 顔は傷付けたらバレるからね、あんたの身体に私の苦しみを分けてあげるわ!』


 白石と思われる女子生徒の声が室内に響き渡る。

 

 隣にいる彼女は苦痛の表情を浮かべ、俯いている…。

 早く終わらせてやらないとな。

 

 証拠が録画されているのを確認した門川がカードを抜き取って校長に渡すと、校長は


 「あぁ、手が滑った」


床に落としたSDカードを何度も何度も踏み潰し、診断書を破り捨てた。


 それを見た俺は、


 「あぁ、やっちまったな…

 何をやってるんだか…」


 と洩らすと校長は高笑いし、


 「これで証拠は無くなった、訴える事も出来まい、馬鹿な奴等だ、コチラに証拠品を渡すとは…。」


 「馬鹿はお前だよ、犯人隠避はんにんいんぴ証拠隠滅罪しょうこいんめつざいで今からお前は犯罪者だ。」


 「何を言う、手が滑っただけだ、私が壊した証拠は無いだろう!

 …まさか…」


 俺は驚愕の表情を浮かべる高橋に、胸ポケットから覗く様にレンズが出ているスマホを取り出し、懐からボイスレコーダーを取り出して見せた。


 「そのまさか、さ。

 この部屋に入る前から動画も音声も取ってある、それに証拠品のコピーを取ってないハズは無いだろうが。

 お前らは終わりだよ。」

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