1-7. シャトーブリアン
達也はコテージ前の砂浜にテーブルを置き、オレンジジュースを注いで陽菜に出した。
「……。ありがとう」
泣き疲れた陽菜は腫れぼったい目をしながらジュースを一口飲む。
ポツリポツリと話す内容を総合すると、不良グループに狙われた陽菜はある日体育倉庫で囲まれて服をはぎ取られ、性的ないじめを受けてしまった。そして、その模様をスマホで録画され、それをネタにいろいろな脅迫を受けているとのことだった。
達也はうんうんと静かに聞き、
「陽菜はもう心配しなくていい。全部僕に任せなさい」
そう言ってまっすぐに陽菜を見た。
陽菜は安堵したように静かにほほ笑んだが、
「でも、もうお嫁にいけないわ……」
そう言うとまたうつむき、涙をポトリと落とした。
「何を言ってるんだ。いじめぐらいで陽菜の魅力は無くならないよ。もし、どうしてもうまくいかなかったら、ぼ、僕の所においで」
達也は真っ赤になって言った。
「え……?」
キョトンとする陽菜。
「陽菜ほど魅力的な娘はいないよ。その気になったらいつでもおいで」
女の子と全く縁のない達也が、なぜこんな臭いセリフを自然と言えるのか不思議だったが、それでもそれは本心だった。
「達兄ぃ――――!」
陽菜はいきなり達也に抱き着き、そしておいおいと泣き出した。
ふんわりと香る優しい匂いにつつまれ、達也はドギマギしながら陽菜の背中をさする。
陽菜はひっくひっくとしゃくりあげながら言った。
「達兄ぃ……、結婚……して、今……すぐ」
達也は、鬱屈していたものが弾けるように噴き出している陽菜を、優しく抱きしめる。そして、
「そんな焦らなくても僕は逃げないよ」
そう言って髪をなでた。
◇
「さぁ、ディナーにしよう」
達也はストレージから松坂牛のシャトーブリアンを一つとりだし、皿の上に載せるとスマホを向けて温度を上げた。
みるみる色が変わっていくシャトーブリアン。そしてブランデーを振りかけると表面温度を三百度に上げる。
ボッ!
一気に紅い炎が立ち上り、香ばしい匂いが漂ってくる。
「うわぁ! すごぉぉい!」
目をキラキラと輝かせる陽菜。
「ふふっ、おいしそうだろ? 日本一美味しいステーキだよ」
スパイスソルトをかけながらドヤ顔の達也。
「でも……、一つしかないわよ?」
怪訝そうに陽菜が言うと、
「ここからが神の力の見せ所!」
そう言ってステーキにスマホをかざすと、コピーしてペーストした。
ボン!
隣に全く同じステーキが登場する。
「へっ!?」
唖然とする陽菜。
「ほら、早く召し上がれ」
そう言いながら達也はナイフとフォークを手渡した。
陽菜はキツネにつままれたような顔をしながら一切れを口に運ぶと、
「うわっ! おいしーい!」
と、目を真ん丸にして驚いた。
「ふふっ、お口にあったようで何より。欲しければ幾らでもペーストするから言ってね」
達也はニッコリと笑い。
陽菜は満面の笑みでうなずいた。
◇
食事が終わると陽菜を自宅まで送り届け、達也はイジメの主犯格の女の情報を追った。
電話番号からスマホを特定し、神の力を使って中身を乗っ取る。そして、保存してる動画やLINEのグループメンバーの情報を引っこ抜いて動画は消し去った。同様にメンバー全員のスマホを次々と乗っ取って動画の削除や他に動画の保管先がないか確認していく。
見ると被害者は陽菜だけではなかった。多くの女の子がいいように嬲られている証拠が残されていた。
達也はギリッと奥歯をきしませると、復讐に使うツールを淡々と開発していった。奴らを殺すのは簡単だ。太平洋の深海にワープさせてやればいい。証拠一つ残さずこの世から消せるだろう。しかし、それでは飽き足らないのだ。一生解けない呪いをかけてやろう。
翌朝達也は不良グループ全員を次々と南太平洋の小島にワープさせた。
不良たちは突然現れた真っ白なサンゴ礁のビーチに戸惑い、デスゲームに放り込まれたのではないかと焦って小競り合いをしている。
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