第27話 意外な遭遇
「ほんっと、私って馬鹿だ」
そう言ってうなだれる
「なんで出る時間、確認しなかったかな」
そう決めた
説得するなら
それに今は
だって私なんだから。
早くしないと
そうなったらもう、どうすることも出来ない。
大橋くんには申し訳ないけど、でもそれでも、私は
そう思い
玄関先で頭を抱え、恨めしそうに
「……私ってばさ、いつも肝心な時にこうなんだよね。詰めが甘いって言うか」
「そういう所、確かにあるかもね」
「
「ごめんごめん。それで?
「……聞いてませんです、はい」
「なるほど。流石は
「ううっ……自分のことながら情けない」
「まあ、行っちゃったものは仕方ないよ。終わったことを悔いるより、次の手を考えた方がいいと思う」
「こうなっちゃうと、
「僕は僕に出来ることを考えるだけだよ。先に説得したかった
僕らにはまだ出来ることがある筈だ。今はそれを考えるべきだし、その方が建設的だと思う」
「分かった。落ち込むのは後にする」
「どちらにしても、
「そうだね。順番が変わっちゃったけど、まず
「ははっ。僕って本当、役に立たなさそうだね」
「そういう意味じゃないってば。ただ……
「そうなんだ」
流石
「うん。
「ははっ、そうかもね」
「よし! じゃあUターン、
「……あれ? ねえねえ
「だね……10年後の世界で、このツーショットを見ることになるとは」
駅前の喫茶店の前で、
「私と」
「僕の母さん、だよね」
馴染みの喫茶店で談笑している二人に、
「
「駄目って言っても聞かない顔だよ、
「あはっ、やっぱ分かる?」
「勿論。
そう言って笑い合い、二人は店内へと入っていった。
昌子とみつ子。二人は
同じ時期この街に越してきた二人は、出会った時から意気投合し、家族ぐるみでずっと付き合ってきた。
年齢も近い彼女たちは、互いに子育ての苦労話などを共有し合い、まるで本当の姉妹のように仲睦まじく付き合っていたのだった。
「私たちが別れた後でも、二人は会ってたんだね」
「子供の恋愛と友情は別。母さんたちならそう言いそうだけどね」
「確かにね、ふふっ」
昌子とみつ子、二人が向かい合っている中、
ミウの言った通り、誰も自分たちの存在、そして移動した椅子のことも認識しない。
「でも本当、久しぶりよね。こうしてみっちゃんと話すのも」
「まぁちゃん、私を避けてたみたいだし」
「何よそれ」
「うふふふっ。でもまあ、お互い色々あるからね。こうやってゆっくり会う機会、確かに減ったわよね」
「家でもやらなくちゃいけないこと、色々あるし」
「弘美ちゃんとはどう? うまくやってる?」
「勿論よ。あの子は本当にいい子だから」
「智弘くん、いい人と結婚したわね」
「私にしてみれば、あの子の唯一の親孝行よ」
「何それ、酷い言い方」
「だってそうでしょ? あの子、私の言うことなんかまるで聞かなかったんだから。それでもまあ、真面目に育ってくれたからよかったんだけど。
あの子、ちょっと
「男の子なんてそんなものでしょ。いつの間にか親離れして、知らない内に大人になってる」
「でもあの子、父さんが長くないって分かった頃から変わったわ。そしてすぐ、弘美ちゃんを家に連れてきたの。『この人と結婚する』って言って」
「親孝行、生きてる間にしたかったんでしょうね」
「父さんが亡くなってすぐ、私と一緒に住むって言ってくれて……本当、あの時は嬉しくて泣いちゃったわ」
「まぁちゃんを守れるのは自分だけ、そう思ったんでしょ」
「後は
「またそういうこと言って。まぁちゃん、私たちまだ50代なのよ? まだまだお迎えのことを考えるような年じゃないんだから」
「そうなんだけど……ごめんなさい、そうよね」
「それに私たち、まだまだやりたいこともあるんだし。覚えてる? 子育てに区切りがついたら、二人で旅行しようって言ったの」
「勿論覚えてるわよ。でもね、私の子育てはまだ終わってないから」
「
「……」
「全く……」そう言って溜め息をついたみつ子が、頬杖をついて微笑んだ。
「まぁちゃんにとっては
「子供に偏った愛情を持っちゃいけないのは分かってる。智弘だって、私にとって可愛い息子よ。でもね、それでも……どうしてなのか自分でも分からない。でも
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