電車

3.14

電車

「ガタンゴトン…ガタンゴトン…」


「キィィィー」


「はっ」


やばい寝過ごした。

今どこだ、

すぐさま横にある窓から外を見る。

「え、」

僕がこの電車に乗ったのは、学校帰りの4時44分。少し用事があっていつもより乗る時間が遅くなった。

だから多分、家につくのは、4時55分くらいだろ。

学校から家までは約10分、なのにだ。

いま外を見ると真っ暗だった。いくら季節が冬に近づいていると言え、この暗さは、どう考えても夜の9時以降…。

立ち上がり周囲の座席を確認するも誰も居ない。

前の席も後ろの席も…。

「…とにかく電車のアナウンスが流れるのを待とう」

次の駅で降り、駅員さんに聞けばきっと帰れる。

僕は、そう信じもう一度窓の外を眺めた。

すると少し目が慣れてきたようだ。外が少しずつ見えてきた。

だがここで僕は、自分の目を疑うようなものを見てしまった。

ここは東京。中でも都会の方だ。

なのに今、外にあるのは全て田んぼ、田んぼ。そしてぽつぽつと光る民家、だけ。

僕は、言葉を失うと同時にとてつもない恐怖が襲ってきた。

本当にここは、どこなんだ。


「あっ」


僕は持ってあったケータイを取り出した。

とにかく電話か…メール…。

親に連絡すれば…、

しかし、想像どおりというかなんというか…。画面の右上には、無情にも「圏外」とだけかかれていた。

(まじ… かよ…)

僕は、言葉を失った。

そう言えば今何時だ?!ケータイの画面を開き、時計を見た。

するとそこには、「4時44分」。

僕がこの電車に乗った時間だ。

「壊れてるのか?…」

その言葉はただ虚しく車内を響かせた。

ガタンゴトン…ガタンゴトン…。

「ガチャー」

「?!」

「コツ、コツ、コツ…」

この音、この足音は?!…。

きっと車掌さんが来てるんだ。

もし違うとしてもおそらくこの電車の乗客だ。なんにしてもとりあえず声をかけよう。

僕は、ゴクリと唾を飲み込んだ。

そして大きく振り向き後ろの奥のドアを見た。

「駄目だ…。あれは、駄目だ。絶対駄目なやつだ。」

「コツ…コツ…」

確かに車掌さんだ、だが、。

ボロボロの制服を着て…口は裂け、奥歯が見え…真っ赤な目はこちらを見ている…?

とにかく僕は急いで前を向いた。


奥から鳴っている…。

「グギギギギ…」

血まみれの歯をガタガタと震わせ。

「ガクガクガクガク、ビチャ…」


「コツ…コツ…」

頼むから…、頼むからそのまま行ってくれ…。

どんどんと近づいてくる。

一歩…

二歩…

三歩…、。

「コツ」

…止まった。

「ドクンッ…ドクンッ…ドクンッ…」

心臓は、鳴り止まない。

そして今、真横にそれが居る。

「イギギップ…、ウグググ…。ギップ…」

何を言ってるんだ?!。今にも心臓が張り裂けそうだ。

「キィップゥぅ゙」

きっぷ、切符か?!

カチンカチン…。

手には、切符を切る道具が握りしめられていた。

(切符が必要なんだ…!)

僕は、急いでカバンの中を探す。

「カチン…カチン…」

早く出せとも言わんばかりに急かしてくる。いや、まだ急かすくらいならまだいい。

もし今、切符を出せなかったら…。

どこだ、どこだ、どこだ。

「カチンカチン…」

静かな車内に大きく鳴り響く。

「あっありますっ」

カバンの奥にあった切符を握りしめ車掌…?らしき化け物に渡す。


「パチンッ…」


「あ゙ィ゙…」


目の間に突き返された切符を受け取り急いでポッケにしまった。

するとあの化け物はコツコツとまた電車の奥へと消えていった。

「はぁぁ、良かったぁー」

電車の中でつい大きな声を出してしまった。

と言っても僕の周りには、乗客なんて誰一人居ない…。

「うわッ」

突如、車内の電気が消えたのだ。

つい、反射的に立ち上がる、

「……」

すると蛍光灯の『カチッカチ…』という音と同時に電気が付いた。

「うぁッ」

その瞬間僕の周りに真っ黒な人影が現れていた。

するとまた電気が消える。そしてまた「カチカチ」と電気がつく。

「うっっ」

さっきより人影が増えている。

僕は、立ったまま固まるしかなかった。

「パチンッ」と、また電気が消える。


「〜次の駅は〜@jt4tm3a'wj5jma1twj5642k4w2g」

突如、車内にアナウンスが鳴り響く。わけもわからない。

「wjgta2tj3u@5kmt@mwjmwjamwu@mwg1rk4」

「ふ…増えてる…」

真暗な電車の中で少し目が暗闇に慣れ始め、真っ黒な人影が大量に見えだした。

するとまた意味の分からないアナウンスが鳴り響く。

そして徐々に電車は、減速し始める。

「プシュー」

ドアが開いた。

それと同時にさっきまで居た人影達がぞろぞろと列をなして降りていく。

僕はとにかくこの電車から降りたかった。

手探りながらも慣れた目を頼りにしドアを見つける。

よし、降りよう。

だがここで思い出す。

ちょっとまてよ、アナウンスで何駅って言ってた?ほんとにここで降りてもいいのか?

「〜間もなkドアが閉まrまsー」

降りるのか

降りないのか

「ドクドクドクドク」

「プシュー」

扉は閉まり…僕は降りなかった。

しかし…本当に良かったのだろうか…。

すると電気が付きはじめた。

僕はゆっくりと暗い窓の方へ目を向けた。

少しずつ電車は加速していく。外は相変わらず田んぼだらけ。小さな灯がぽつぽつ見えるのみ。

そして数分経った頃だろうか、ここであるものが目に入る。

さっき降りようとした駅の名前が書いてある看板を見つけた。

そこには…

[黄泉]とだけ書かれていた。

もはや声など出なかった。

そしてまた電車は、何事もなかったかのように走り出している。

「ガタンゴトン…ガタンゴトン…」


「大丈夫?、もう終点だよ?」

目を覚ますとそこには、心配そうに見つめる普通の車掌さんの顔があった。勿論普通の制服を着た。

(帰ってこれたのか?!)

僕は、すぐ起き上がった。

「とりあえず降りようか。」

優しく語りかけられ、僕はそのままつられる様に電車のドアの方へ歩いていった。

あっ親に連絡しなきゃ。僕は、歩きながらポケットから携帯を出し、画面を開いた。

あれ、時間がおかしい、〈4時44分〉?!

僕がこの電車に乗った時間、。

だがそう思ったときには、遅かった。

もう電車から降りてしまっていた。

勿論周りは、真っ暗。

「プシュー」

ドアが閉まる。そして窓越しには、車掌がニタニタと嬉しそうに笑っている。

「ガタンゴトンガタンゴトン…」電車は、徐々に加速していく。

「っちょっと待って、」

すると横の看板が目が入った。

「黄泉」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

電車 3.14 @3140905

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ