頑張るって分からない
シヨゥ
第1話
「上には上がいるな」
落選した作品が返送されてきて思ったことが言葉として漏れてしまう。
「十分努力したと思うけどな」
「十分じゃだめなんだよな。十二分、いや二十分を目指さないと」
彼女の言葉にそう返してため息が出てしまった。
「ごめん」
「いいけど。大丈夫?」
「ちょっと参っている。どこまで時間を使って頑張ったらいいのか分からなくてさ」
「1分でも自分で頑張ったと思えたならそれでいいと私は思うけど」
「そうかな?」
「取り組んだらもう十分頑張っているんだよ。頑張ったと思った瞬間には十分を超えていると思うよ。だからその作品は君が十分以上頑張った作品になっていると思うんだ」
「それでも落選した。それって頑張ってないってことじゃないのかな?」
「頑張ったと思った。完成したと思った。だから投稿したんだよね?」
「そうだけど」
「なら頑張ったんだよ。あの人はもっと頑張っているはずとか思っちゃだめだよ。頑張ったと感じる程度なんて比べるものじゃないんだから」
「頑張ったと感じる程度か」
「君は十分以上に頑張っているんだから、今回はたまたま運が悪かっただけ。そう思ったほうがいいよ」
「運が悪かった。なるほど。そういう考え方もあるか」
「運が味方するまで頑張ってみようよ」
「そうだね。ここで心を折っちゃいけないよね」
「そうそう。頑張れ頑張れ」
彼女と話すだけでここまで心が軽くなるとは思わなかった。これがもし独りで抱え込んでいたら心を折られていただろう。彼女の存在に感謝するとともに感謝に見合う作品を作り上げよう。それが僕にできる恩返しだ。
頑張るって分からない シヨゥ @Shiyoxu
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