phase17.ハーツ自警団
「俺がですか?」
「お前、だからだ。」
西宮はそう言って颯音に近づく。
その目はまっすぐ颯音を見ていた。
「俺たちは”ハーツ”という自警団をしている。この研究所直属の自警団だ。」
「自警団が俺みたいな一般人いきなり襲ったり攫ったりしないでしょう。」
「その件については悪かった。まあ俺たちはお前がそういう能力を持っているとわかっていたからな。闇雲に襲ってるわけじゃないんだぜ。」
「そうなんですか。なんでわかったんですか。」
「まあ色々研究中で分かってないことが多くてな、どうやら同じ超人類同士だと分かるみたいだぜ。」
「俺はさっぱりわからなかったんですけど。」
「意識を集中すれば分かるよ。」
言われるがままに颯音は意識を一点に集中する。
するとどうも言葉で形容しがたい感覚が颯音の脳内に投射された。
目の前の西宮の体内に光が走っているかのような光景だった。
「ほんとだ。」
「え?」
「いや、見てみたんです。こうやって見分けてたんすね。」
「え、見たの?」
「は、はい。」
「やっぱりお前はすげえよ。意識を集中すれば見分けられるとしか言ってないのに、見方も教えてないのに見えるとか。もはや天性の才能だよ。」
「え、えー……」
(見なきゃよかったかな。)
「つうわけで、藤崎颯音。お前をハーツ自警団へ参加をお願いしたい。」
「イヤです。」
「即答!?」
西宮はまさかの即答にがっくり肩を落とす。
「俺、一般人ですもん。別に能力も使わないし、普通に過ごしたいんで。」
「お前、さっき言ったよな。同じ超人類なら察知できると。つまり、お前も他の能力者から認知されてもおかしくないってことなんだよ。」
「いや、分かるけど、でも襲うメリットもなんもないでしょう。別に察知されても。」
「それが、これを見てくれ。」
そう言って西宮はポケットから新聞の切れ端を颯音に渡した。
「こ、これって。」
「超人類にあたる人口70万人のうち、犯罪組織に加担している比率は71%。これが意味していることがどんなことか分かるか?」
「日本で起きている組織犯罪のほとんどに能力者が関与している可能性が高い……?」
「そういうことだ。もしかしたら身近で動いているかもしれん。そして、同じ能力者はその人にとって敵、邪魔になるだろう。だから襲われてもおかしくないんだよ。」
「こんな脅しまでして俺を自警団に?」
「脅すつもりはないが、これが現実だ。俺たちはそういう犯罪や平和を脅かす存在と闘う。」
「俺戦うとか……。」
「それはおいおいの話だ。それに颯音はもう普通の能力とは違う、すごい何かを秘めている。間違いない。これは彼らにとって脅威であり、俺達の希望だ。」
「そこまで飛躍しなくても。」
颯音は考えた。
「俺、普通に過ごしますよ。学校も行きますし。そっち優先ですから。」
「分かってる。もとよりメンバーもみんな普段は普通と変わりない日常生活をしている。」
「まあ、俺ももう普通の人間じゃないわけですから、いいですよ。席だけ置くくらいならその自警団に所属してもいいです。」
「さすがだ。歓迎するぜ、藤崎。」
「はい、よろしくお願いします。」
颯音と西宮は固く握手をした。
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