第58話 俺の町に帰る道中 その1

 ……


 俺は此処から家に帰るルートを色々と調べた結果、高速道路通行料金を少しでも安くしたかったので、王乃おうの市から備前市までは一般道路を使い、そこから高速道路ICに乗り、後は高速道路で家に帰ることを決めた。


 交通量の少ない、週末の深夜に入りかける時間の道路を、俺は備前に向けて車を走らせている。

 車内はもちろん俺一人だけなので、一人喋りをしながら車を走らせる。


「今の時刻だと……俺の町に着くのは明け方に成るか…」

「けど、仮眠を取りたいから、家に着く頃には日が完全に昇っているだろうな」


「……家に着いたら、さくらに連絡を入れないと行けないな!」

「これからは本当に大変だが、今は家に戻ることだけを考えよう!」


 ……


 地方道路の交差点から、一桁国道に進み、大型トラックが行き交う国道を姫路方面に走らせる。

 一桁国道だけ有って、この時間でも交通量の多さを感じる。


「案内標識通りだと……この国道は、神戸まで行けるのだよな!」

「でも、俺は大きな都市での運転経験が少ないからな……」


「……この時間だと、さくらはもう、部屋の中でくつろいでいるかな?」

「後でRailの確認しないとな!」

「真面目なさくらのことだ。きっとメッセージが入っているに違いない!!」


 俺は一人喋りをしながら……備前市に有る、備前ICに向けて俺は車を走らせた。


 ……


 高速道路のPA……


 途中で道の駅などの休憩所が無かったので、此処までほぼ無休憩で来てしまう。

 俺の車は、駐車マスに車を停車させる。

 宇野あぞの駅から出発する前に、公衆トイレでトイレは済ませて置いたので、トイレの方は大丈夫で有った。


 今の時刻は、23時30分手前の時刻。

 この時間帯のPAは、既に本日の営業を終了しており、駐車場もそんなにたくさんの車は停まっていない。


「仮眠をするのはもう少し後にしたいし、それに小腹も空いてきたので、この先に有るSAで何か温かい物でも食べたいな!」


 俺はそんな事を呟きつつ、スマートフォンを手に持ってRailの通知確認をする。


「あっ、やはり。さくらからメッセージが来ていた!」


 俺はRailアプリを起動させて、さくらからのメッセージ詳細を見る。


『颯太さん! こんばんは☽』

『今は、どちらにいらっしゃいますか?』


『私は無事に家について、自室で寛いでいます!!』

『今日は本当に楽しかったのと、私と仲を深めてくれてありがとうございます❤❤』

『気を付けて、おうちに帰ってください!☆』


『また、明日にでも連絡します!!』


 今までに無い、長文メッセージがさくらから書き込まれていた。


「……恋人関係だから良いけど、文面だけ見れば完全に女性だな!」


 これを……さくらの正体を知らない人に見せれば、誰もがこの文章を送った人を女性だと信じるだろう!!

 この時間帯なら、さくらはまだ起きていると思い、俺はメッセージの返信をする。


「さくら、メッセージありがとう(*’-‘*)」

「今は、県境手前のPAで休憩している!」


「遠距離恋愛に成るから気軽には逢えないけど、その分メッセージはたくさんしようね♪」

「愛しているよ。さくら❤」

「自宅に着いたら、また連絡するよ!!」


 さくらにメッセージを送った後に気付いたが、俺はさくらを完全に女性と認識してメッセージを送っていた!


「同性に『愛している❤』は、やり過ぎたな……」


 俺は独り言を呟いて、眠気覚ましに缶コーヒーでも買うかと思い車外に出る。

 自動販売機で缶コーヒーを買い終えたと同時に、スマートフォンからRailの通知音が鳴る。


(さくらからかな……)


 流石に屋外に居る時は、俺は一人喋りはしない!

 頭がおかしい人に見られるからだ!!

 缶コーヒーのプルタブを、まだ開けてないので、缶コーヒーをポケットに一時的に仕舞い、Railの確認をする……


『今は、県境前ですか!』

『あと少しで……同じ県から離れてしまいますね(泣)』


『けど、凄く太い赤い糸で私達は結ばれているから、問題ないですね!(*^▽^*)』

『愛していると言ってくれて、私は嬉しいです❤』

『思わず……彼処ぞうさんがピクンと跳ねてしまいました❤❤』


『安全運転でお願いしますね☆大好きな颯太さん!❤』


「……」


 文面だけ見れば、笑みが零れそうな文面だが、俺はさくらの中身を知っている。

 俺はさくらが本当の女性ならばと思いながら、さくらからのメッセージを眺めていた。

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