(二)-8

 では、いつ動くか。どこへ行くか。いつというのはともかく、どこへ行くかについては全く決まらなかった。学生運動家の自宅や実家についてはすでに警察や軍にマークされており、戻ったらすぐに逮捕されてしまう。だからといって、すぐに新しいアジトを確保できるわけではない。当面はトリビシに近いどこかの街に行き、身を隠すしかない。

 それにはどの方角へ逃げるのか。北へ行くと、政府軍を支援する新ソ連の方へ行くことになる。南の国境線は、軍で封鎖されていた。西のトルコや黒海方面であれば抜けられる可能性はあるが、山が険しいのと、ここトリビシからは距離があった。東の山岳地帯も険しくて厳しい。

 聡明で賢いデニスにも、この議論については大いに悩まされ、決断できずにいた。


(続く)

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