シグマギア・ガール
くれはら
第1話『爆誕・右ストレート系魔法少女』
六月頭、天気は快晴。
見事なまでに雲一つない静けさすら感じるほどの青空の日だった。
そんな静けさを反映したように、ボランティア部の部室はゆったりとした時間が流れていた。
カツカツ、カリカリ、とシャープペンシルを走らせ、
外から聞こえる運動部のかけ声と、同じくボランティア部に所属する有真の先輩でこのボランティア部の部長――――
後もう少しで課題が終わる、そんな折、部室の扉がガラガラと音を立てて勢いよく開いた。
「お疲れ様でーっす」
有真の友人である
緒島は文庫本に目をやったまま「おつー」と間の抜けた返しをし、有真も集中力を切らしたくなかったのか緒島と同じような返事をした。
が、達人はつかつかと真っ直ぐ有真の方に迷いなく向かい、隣の席に荷物と一緒に腰を下ろすと間髪入れずに有真に喋りかけた。
「宿題やってんの? 相変わらず真面目だなお前」
「なんだよ、邪魔すんなら学校の掃除でもしてこいよ」
「んだよ、折角人が面白い話を持ってきたって言うのに」
「宿題しながらで良いなら聞くよ」
「お、流石」
そう言って達人は話し始めた。
「ちょっと前にUMAの正体の話あったの覚えてるか?」
「あぁ、なんだっけ……
UMA――――未確認生命体。
誰でも一度は聞いたことがあるその存在の正体がつい数年前明らかになった。
世間はその発表に大いに驚き、数日間にわたりテレビでもネットでもニューストップを飾り全世界を駆け巡った。
肝心のその正体とやらはなんと未知の元素によるものだという。
その元素の名は「シグマニウム」。
今まであったどの元素の中でもトップレベルに特異な存在であり、それ故に「シグマニウムという存在が発見された」ということしか分かっていない。
つまるところ、そういった話題に対する専門家でもない限り、一般人の間では「今までUMAと呼ばれていた存在はシグマニウムという新元素によって構成された生物だった」という認識なのだ。
「で、確か名前がUMAから
「結構覚えてるな」
「ということは、お前がこれから話す内容はそのシグマニオンに関わることだ」
「やるじゃん? まぁその通りなんだけど、なんでもそのシグマニオンが商店街の近くに出たんだってよ」
「は? すぐ近くじゃん!」
UMA、もといシグマニオンは原因は不明だが有真たちが住むこの
シグマニオンは時間帯や場所を問わず現れ、時折近くの店や近隣住民に被害を出すことがある。
市でもシグマニオンへの対策を練ってはいるもののシグマニオンは気づいたときにはすでに現れており気づいたときにはすでに消え去っている神出鬼没な存在であるために中々有効な手立てが今のところ打ち出されてはいない。
市民たちも山から猿が下りてきて悪さをしている程度の危機感しかなく、すっかり慣れてしまっているのか騒ぎにはなるが大事にはあまりならない。
――――もっとも、十年前に起きたとある事件のインパクトが大きすぎて麻痺しているだけなのかもしれないが。
「しかも連日出てるらしい。時間は大体夕方くらい。きっと今日も出るぜ? 見に行ってみないか?」
「行かない……って言いたいけど、商店街の近くだろ? あの辺はお年寄りも多い、何かあったら大変だ」
「じゃ、行くってことで決まり?」
「あくまで様子見って感じだからな。面白半分じゃなくて」
「あ、先輩も行きませんか? 一緒に」
達人がそう言うと緒島は先ほどまで呼んでいた本を閉じ、長い前髪の隙間から双眸を二人の方へ向けてこう言い放った。
「面白半分じゃなくても、行かない方が良いよ」
普段はからかい上手なお姉さんと言った口調や雰囲気の緒島だが今回ばかりは違う。えらく神妙な面持ちだった。
親睦のある二人ですら少々すごんでしまうくらいに。
「危ないから、行かない方が良いよ」
「えー、でも先輩も気になりませんか? 一緒に行きません?」
「行かないって。先輩これでも忙しいから」
「本読んでるだけじゃないすか」
「そういうことは言わないものだよ後輩」
緒島は再び本に向き直り、誘いを断られた上に注意までされた達人は「ちぇっ」とふて腐れたようにぼやいた。
結局達人は「本屋でも寄って帰んね?」と有真を別の目的で誘い、有真は「宿題が終わってからなら良いぞ」と達人からの誘いを承諾した。
それからおよそ十分程度経って有真の宿題が終わると、二人は荷物を帰り支度を始めた。
「じゃあ先輩、また明日です」
「お疲れ様です部長」
「んー、おつー」
部室から出てしばらく歩いた後に達人は再び商店街への誘いを有真に持ちかけた。
本屋へ寄ると言う提案は緒島に対して、商店街へ行くことを諦めたことをアピールするためのものかと察した有真はため息を一つ吐くと、観念したように「分かった分かった」と渋々答えた。
玄関に到着するとそこには一人の女子生徒が靴を履き替えている最中だった。
「ん? 律花?」
「お、有真。今帰り?」
有真の姉、陽咲
陽咲という名字から分かるように有真と律花は家族である。と言っても血の繋がった本当の家族ではない。
十年前にこの街を襲った災害において、当時まだ幼かった有真は親も記憶も失い、たまたま現場に居合わせた陽咲家に引き取られて養子となったのだ。
「丁度良かった。有真ちょっと付き合って、猫探し」
「いやオレらこれから商店街の方に行くから無理……というか猫探しって何?」
「ただの猫探しじゃないよ。なんと喋る黒猫!」
「大友、行こうぜ」
「えっ、うそ、興味ないの? 喋る黒猫だよ? ねぇ待って何で聞こえてないふりするの本当だって朝ちゃんと私見たんだからねぇ有真ってば」
始めから律花などいなかったかのように無視して靴を履き替える有真の隣で達人は「へぇ、律花ちゃんってああいうことも言うんだ……」と珍しいものを見たかのような口調で呟いた。
事実、有真や律花と仲の良い友達以外に律花のこういった言動を目撃することは少ない。
律花はその均整のとれた顔立ちとスタイル、そして雰囲気から高嶺の花のような扱いを受けることがしばしばあるが、本当のところは何も考えておらず如何せん顔が良いばかりにそういったミステリアスさが意図せず醸し出されているだけなのだ。
「へい弟。姉を置いて行くなよ」
「黒猫探しの旅ならお断りだ」
「違う違う旅じゃないよ。私も商店街の方行くの。ほら、猫って商店街とかにいるイメージあるし。大友君、私も付いてっていい?」
「是非是非! 勿論!」
達人は有真の耳に手を当て「やっぱ有真の姉ちゃん可愛いな!」とテンション上がっている様子で囁き、有真は羽虫を払うように達人を耳元から追いやった。
三人は談笑しながら商店街の方へと歩いて行き、入り口にたどり着いたところで有真はいつもより人が多くなっているのに気づいた。もしかしたら例のシグマニオン騒ぎの影響なのかもしれないなとぼんやり思っていると、横で律花が「あ」と一言だけ喋った。
途端に駆け出す律花。有真と達人はそれについて行く。
有真が背後からどうしたのかと尋ねると、律花は「黒猫が居た!」と返した。確かに律花の走る先には黒猫が居るが有真が見た感じ普通の黒猫である。
件の黒猫は自分の方へ向かって走ってくる人間三人に気づいてびっくりしたのか逃げ出してしまった。
「待て」
「律花! ちょっと!」
ちょっと待って、と有真が口に出しかけた時だった。
商店街の奥の方から爆音ともまた違う、けれども何か大きなことがあったには違いない轟音が有真と達人の耳に届いた。
それと同時に大勢の市民たちが悲鳴や怒号、そして何よりも端から見て分かるくらいに明確な恐怖を振りまきながら、蜘蛛の子を散らすように必死に何かから逃げていた。
どの動物とも似つかない叫び声のような音が聞こえる。
それは段々と有真たちの方へと近づき、やがてその声の主は有真たちの前に姿を現した。
化け物。そうとしか形容出来ない存在だった。
どの肉食動物と比べものにならないくらい発達した四肢で地面を踏みしめ、長い尻尾を鞭のように震わせた恐竜のような顔立ちの異形な生命体がそこには居た。体長はおよそ十メートルそこらといったところだろうか。さながら恐竜だ。
あまりの恐怖で言葉を失う二人。
化け物はその長い尻尾で人々をなぎ払い、前足や後ろ足で叩き潰し、我こそが最強だと知らしめるように咆哮を上げた。
そして運の悪いことに化け物は逃げ惑う人々とは違ってその場で硬直する二人をその視界に捉えた。
「ギャァアァァアァァアァァアアァァアァァァァアアアアア!!!!!!!!!」
「うぉぉぉおぉおおおおぉぉおおおおぉおおおおおおぉお!!!!!!!???」
「うぉぉぉおぉおおおおぉぉおおおおぉおおおおおおぉお!!!!!!!???」
その瞬間二人は全く同じ叫び声を上げながら身体を化け物の方から反転させ、未だ黒猫を追いかける律花の方へと逃げた。
「律花!!! 律花!!!! やばいぞ!!!!!!!!! 黒猫なんか追っかけてる場合じゃないって!!!」
「おいおいおいおいおいどうするよ有真!!!!!!!!!」
「どうするったって! そんなの逃げるしかないだろうが!!?」
律花から逃げる黒猫、黒猫を追いかける律花、化け物から逃げる有真と達人、二人を追いかける化け物。
ブレーメンの音楽隊 feat.地獄絵図である。
そんな折、先頭を走る黒猫は後ろが一層騒がしいことに気づいたのかチラリと後ろを振り返ると―――――
「なんなんにゃこれはーーーーーーー!!!!!????」
と、叫んだ。
律花はやっぱりこの黒猫は喋る黒猫だったと喜んだ声色で、有真と達人は猫が人語を喋った出来事に驚いた声色で、それぞれ「喋った!」と声を上げた。
律花はとても嬉しかったのかにこやかな笑顔をひっさげて有真たちの方へ振り返った。
「有真! 聞いた!? ほらやっぱり喋る黒猫だったでしょってうわあああああああ!? なんかでっかい化け物がいるうぅ!!? 」
「むしろよく今まで気づかずに猫追っかけてたな!? とりあえず逃げるぞ! 走って!」
「どこに!!」
「オレが知りたい!」
三人と一匹は迫り来る化け物から逃げるためギアを上げた。
脇目も振らず一心不乱に、当てもなくただただ逃げ惑った。
が、足がもつれて躓いたのか達人は一人その場に転んでしまった。
「大友っ!」
達人より少し前方を走っていた有真は踵を返して達人を助けようとしたが、化け物はその強靱な前足で転んだ達人を周辺のアスファルトの一部ごと吹き飛ばした。アスファルトの破片が有真のこめかみ付近に直撃し、有真の頬に血が伝った。
宙を舞う達人は律花たちの走る歩道から車道を越えて反対側の歩道に激突し、意識が朦朧とした中で有真たちの方に戻ろうと試みた。だが運悪く化け物が振るった尻尾に直撃してしまい、達人はその場で意識を失った。
有真は達人を吹き飛ばし、あまつさえさらに追い打ちをかける化け物に対し激昂し、足下に転がって居たアスファルトの破片を拾い上げ、化け物に向かって投擲した。
化け物は達人の方を見ており有真からしたら顔の左側を向けている状態だった、さらに運の良いことに有真の投げたアスファルトの破片が化け物のギョロリとした青白い目に直撃した。
化け物は叫び、有真の方を睨み付けた。完全に敵として認識されたことを察した有真は恐怖と怒りとの狭間の感情のまま化け物を睨み返していた。
化け物が前足を上げ、攻撃態勢に入ろうとしたその時だった。
パトカーのサイレン音が複数聞こえ、それらに気がついた化け物は興味を有真からそちらに移して走り去っていった。
「有真っ」
「……律花」
律花と黒猫が有真の方へとやってきた。
「大丈夫? 血が出て……無茶しないでよ、もぅ……」
「ご、ごめん。心配、かけた」
律花は涙ぐんだ目で、持っていたハンカチを有真の傷跡に当てて血を拭った。
「おみゃーら、みぃの声を聞いたにゃ?」
二人がそうしているところに黒猫が毛並みの良い尻尾をフリフリと揺らしながら語りかけてきた。
喋る黒猫という事実に驚きながらも二人はうんと頷いた。
黒猫は近くの路地裏へ二人を誘導し、それから話し始めた。
「単刀直入に聞くにゃ。おみゃーら、みぃと一緒にあの化け物を倒して欲しいって言ったら……協力してくれるかにゃ?」
「協力って……無理だろ!? あんな化け物相手に!」
「それが出来る手立てがあるって言ったらどうするにゃ?」
「はぁ? 何言ってんだ?」
「少し、みぃの話を聞いて欲しいにゃ」
黒猫の言葉に二人は頷き、黒猫はあの化け物の正体と倒す術について説明を始めた。
結論から言うとあの化け物の正体はシグマニオンであること、それもただのシグマニオンではなく、
そして次に化け物――ネガシグマニオンを止める手段について説明を始めた黒猫だったが、ここで二人は黒猫の言葉に耳を疑った。
「今、なんて言ったの?」
「みぃと契約して、
「なんか、どっかで聞いたことある台詞だな……」
「というか魔法少女ってことは私が変身したりするの?」
「そうにゃ」
「ダメだ! そんなの! 危険すぎる!」
「有真……?」
「オレ……律花には危ない目に遭って欲しく無いんだよ!!」
達人が吹き飛ばされた時の光景が有真の頭によぎる。
もしも律花があの化け物と対峙して逆にやられてしまったら、そう考えただけで有真は恐ろしくなった。
身近な誰かが傷ついたことで、もっと大切な人が傷つく可能性が浮上したことが、有真は何よりも怖かった。
しかしそれは律花とて同じだった。
「有真」
「……何?」
「私、さっき有真が怪我したの見て、すっごく怖くなったの」
「律花……」
「もしパトカーが来て、化け物がどっか行かなかったら、あのまま有真死んじゃってたのかもしれないって」
「……」
「私、やるよ。戦うのはちょっと怖いけど、うちの可愛い弟に怪我させたこと、後悔させなきゃね」
律花はウィンクをバチっと決めてそう言った。
有真はそんな姉の姿を見てほんの少しだけ安堵した。そういえばこういう姉だったなと。
「じゃあ向かうにゃ。やつの気配のある場所へ、みぃが案内するにゃ」
「うん」
「あぁ」
三人はネガシグマニオンと戦うため、路地裏を後にした。
△▼△▼△▼△
律花たちが化け物の元へと到着したとき、辺りは惨劇と化していた。
怪我を負った人々や無残に破壊された車。近くの民家やお店の窓ガラスが割れてあたりに飛び散っている。
その中心でネガシグマニオンは横転したパトカーに上って雄叫びを上げていた。
「……準備はいいかにゃ?」
「うん。でもどうやって魔法少女になるの?」
「簡単にゃ。まず魔法少女になった姿をイメージするにゃ。そしてみぃに触れて、変身!
って叫ぶにゃ!」
「えっ、はずっ」
「なんて?」
「やだよ、そんな、恥ずかしい。有真代わりに言ってよ」
「律花……今そんなこと言ってる場合じゃないだろ」
「おみゃーが言わないと変身できないにゃよ」
「えーじゃあ有真も一緒に言おう。それで恥ずかしさ半分こしようぜ弟」
「時間もないしそうしてくれにゃいか弟」
「おいこら黒猫……はぁ、分かった。言えば良いんだろ言えば!」
律花は黒猫を抱きかかえ、有真と呼吸を合わせ、叫んだ。
「「
その瞬間、黒猫と有真が光の粒子となって律花の身体に渦を巻いて収束していった。
そして強い閃光とともに衝撃波が律花を中心に発生し、ネガシグマニオンは訝しげに顔をそちらに向けた。
やがて衝撃波によって発生した土煙が晴れると、そこには魔法少女が立っていた。
金色のツインテールをなびかせ、ブレザーを着崩したようなピンクと黒でカラーコーディネートされた衣装を身に纏い、ロングブーツで地面を踏みしめる魔法少女もとい律花は変身した自分の姿を見て一言呟いた。
「……なにこれぇ」
『なにこれって、変身した姿にゃ』
「うわっなんか直接頭の中から声聞こえるんだけど!? てか二人居ないし!
もしかして私の心の中に居るにゃとかそういう感じ? ねぇ有真は? 一緒に居る!?」
『いるいる。いるけどなんでオレもこんなことに』
『みぃにも分からないのにゃ。普通契約したシグマニオンしか入れないはずにゃのに』
「というか魔法少女の姿ってこれ……へぇ……ふぅん……いや、うん、不満ではないけどデザイン……」
全員が状況をよく分かっていない中、ネガシグマニオンが律花たちの方へと突進してきた。
「ちょ、来たけど、なんか武器とか無いの?」
『えっ? むしろないのにゃ? 近くに落ちてるとか実は手に持ってるとかないのにゃ?』
「ない……」
律花は困惑した。何故チュートリアル的なのがないのかと。
黒猫は困惑した。何故武器がにゃいのかと。
有真は困惑した。もう色々ダメなんじゃねぇかなと。
「とりあえず避ける!」
律花はネガシグマニオンの攻撃をジャンプして躱した。
だが魔法少女に変身した律花の身体能力は本人が知っているそれとは違い、あっという間にビルを超える高さにまで達した。
「うわうわうわうわうわ! 高っか! おもしろっ!」
『言ってる場合じゃないだろ律花。黒猫、戦い方とか無いの?』
『そうしたいのは山々にゃんだが、みぃも人間と契約するのは初めてだからなんも分からん』
『よくそれで変身しろとか言えたな……』
「とりあえずこのままぶん殴ってみる!」
律花は空中からネガシグマニオンの元へ落下するよう位置を調整しながら落ち、ぶつかる瞬間に拳を握り締めて思いっきりぶん殴った。
拳は見事ネガシグマニオンの胴体を捉えて地面にめり込ませ、地面にクレーターや亀裂・ヒビを作った。
一発攻撃を当てると律花はいったん距離を取り、己の拳を見つめて悟った。
「……イケる」
『イケるな』
『イケそうにゃ』
あまりの攻撃力に武器がなくても戦えそうだと確信した二人と一匹は、肉体的にも精神的にも攻撃の構えを取り、起き上がるネガシグマニオンと向き合った。
『律花。どうせなら、次来た攻撃を真っ正面から迎え撃つってのはどう?』
「いいね有真。それ採用」
『きっとより強く戦えているイメージをすれば、より強い攻撃が出せるはずにゃ』
ネガシグマニオンは首をふるふると降ると、その逞しい後ろ足に力を溜めて地を蹴った。
律花はその行動に合わせて再度拳を固め、足に力を込めて地を抉った。
発達したネガシグマニオンの前足の殴りを首を傾けて躱し、渾身の右ストレートを放った。
「はあああああああああああああああぁぁぁぁぁーーーーー!!!!!!」
『必殺!! バスター・インパクト!!!!!!!!!』
『必殺!! バスター・インパクト!!!!!!!!!』
律花の雄叫びと律花の精神世界の一人と一匹の謎の言葉とともに、律花の拳はネガシグマニオンの顔面を捉えた。
ピンク色の閃光と衝撃波とともに、蹴飛ばされたサッカーボールのように地面をバウンドしながら十数メートル転がった後に、ネガシグマニオンは断末魔とともに霧散した。
軽やかに着地した律花は真面目な顔をして有真と黒猫に尋ねた。
「私が化け物ぶん殴ったとき、なんか言ってたけど……あれ何」
『にゃにって』
『技名』
「ダッサ」
こうして律花・有真・黒猫の数奇な物語が幕を開けた。
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