ある少女A

バブみ道日丿宮組

お題:明るい天才 制限時間:15分

ある少女A

 毎日コツコツと少女は物書きを続けた。そのおかげで毎年十冊程度の物語が誕生した。

 少女はそれを年末に読み耽るのが儀式としてた。

 どこかの賞に応募するということはしない。自分で書いて、自分で楽しむ。ただそれだけだった。

 もっとも両親は何を書いてるのかは知ってる。それが日記ではなく、物語の類であることもそうそうに知ってた。母に隠し事はできない。父が隠してたエロ本を発見するほどの探偵屋だ。

 少しずつ親たちも少女の物語に目を向け始めた。

 棚に入れてある本は幼稚園から始めたもので、最初は童話だったものが、今ではSFまでをも妄想する成長っぷりを見せる。

 そしてこれだという賞に親が勝手に応募した。

 その数も数だ。何十冊もの作品をいろいろな場所に出した。

 その結果は、散々なものになるはずであったのに、受賞した。

 小学生が書いたものという認識であるはずなのに、とてもそうは思えない内容とコメントをされた。もちろん両親がアドバイスするようなことはなかった。

 自分で文字の意味を調べて活用してるのだ。そのため文字が書かれた教科は満点。数字があるのは赤点という奇妙な点数のとり方をしてた。

 少女に賞が受かったことを伝えると、赤面した。

 他人に見せるものじゃなかったものを読まれたと、血の巡りが回りに回った。

 少女は激怒した。地団駄を踏み、床に穴が空きそうだった。

 でも、受賞をしたという封筒の数を見せられて落ち着いた。

 それが当たり前のことのように、少女は一つ一つ封筒を受け取り、中身を確認していった。中身は両親は確認済みだが、難しい言葉もあったと思う。

 のだが、少女は唸り声をあげると、ぱーと明るくなった。

 理解してるのだ。審査員のコメントを読めてる。難しいと思ったことが少女にはできてた。

 そのときになって、両親は自分たちの娘が天才なことに気がついた。

 それからは何十回になるかわからない授賞式に参加する日々を送った。

 取材も結構あり、少女はそつなくこなした。逆に付き添った母が困惑したものだった。

 少女はそれからも物書きを続けた。

 今度は自分のためでなく、誰かのために。

 人に読まれる嬉しさをしった少女の物語は、一段と面白さが増加したそうだ。

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ある少女A バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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