第32話 世界市民
世界のパワーゲームと言えば何の事か分かりますよね。ニュースや解説ではパワーバランスという言葉が良く使われます。言うまでもなく軍事力のバランスの事です。もちろん軍事力を支えるのは経済力ですから経済力バランスと言い換えても同じことだと思います。
バランスとは自分の陣営と対抗勢力の経済力や軍事力のバランスの事を言うのですが、問題なのは対立する陣営のその繋がり方なんですよ。敵の敵は味方という単純な考え方ですから、いくら相手を非難してもそんな集まりに正当性や正義など有りません。例えば最近ウイグル族がどうとかこうとかテレビで解説してしていましたが、日本がウイグル族のことを本当に心配をしているのでは無く、ただアメリカの中国圧力に付き合っているだけです。中国が悪いという情報が好きなんです。こんなものが正義でしょうか?
SF短編集の敵の敵は味方で書いたように、どの国でもつつかれれば痛いところの一つや二つは必ずあるものです。それを利用して相手を非難することは正義では有りません。ましてや他国の内部の対立のどちらかを支援することは、絶対やってはいけない事です。それこそが悪だと思います。
臭いものに蓋をする日本では、何事も無かったように振舞っていますが沖縄の苦難を他県は見て見ぬふりをしていますし、北海道では日本がアイヌの文化を破壊したのです。
明治になってからは本土の囚人を北海道に送り、逃げ出さないように蛸部屋に閉じ込めて強制労働をさせていたのです。蛸部屋でググればわかると思います。こんなことは今なら道義的にも許される事では在りません。どのような理由であれ人を奴隷にしてはいけないのです。それが日本人の囚人であれ、朝鮮人であれ、アイヌ民族であれ同じことです。
在日韓国人の問題は、彼らにとっても日本にとってものどにひかかった魚の小骨のようにひりひりとした関係が続いています。彼らは皆戦後に日本で生まれ、韓国語も話せない人がほとんどです。ある在日の人が私に言った言葉が印象的でした。「日本では外国人扱いなのに韓国に行けば韓国でも外国人扱いを受ける。」彼らは帰属する国の無いような状態なんです。
もちろん日本に帰化する事は出来ますが、北朝鮮から来た人は北朝鮮から韓国に国籍を移しそれから日本に帰化する事になり弁護士でなければ難しい問題があるようです。弁護士に相談すれば30分5000円ですからかなりお金もかかりますよね。それとは別に親戚との絡みで躊躇している人もいます。戦前戦後受けた酷い差別から絶対日本に帰化しないとしてる人も多くいて帰化すると裏切り者のように言う人も居るそうです。
帰化して日本人になっても、兄弟親戚に帰化しない人がいれば彼らとは法的な立場が違ってくるので微妙ですよね。それに法的に日本人になっても在日の親せきや兄弟からそのように扱われるわけでは無く、日本人からも依然在日のように扱われるので、あくまで結婚などの法的手続が簡単になっただけだと言ってました。
私の知り合いの教育委員会の人が飲み会で、あそこの学校は在日の子が多から行かない方が良いよ、なんて若い親にアドバイスしていて閉口しました。在日の人に対する日本人の差別はひつこく陰湿ですね。
私の友人は子供のころ自分が在日だとは知らなかったそうです。私も彼女が在日だとは知らなかったというか、在日そのものを知りませんでした。
・・親は帰化しなかったそうですが、彼女は帰化しました。ただ親が帰化していないので微妙な問題があるようです。彼女は日本人として日本人男性と結婚しましたが、周りでは国際結婚のように扱われると苦笑していました。
私の周りにはロシア人の妻を持つ人や、イタリア人の妻を持つ人もいます。最近ウルグアイから帰化した人もいてスペイン語の通訳をしている人もいます。じっさい新宿を歩いていると外国人の多さに驚きますよね。国と国がどうであれ、我々は世界市民なのです。我々にとって(古い歴史の亡霊)や(お金がらみの利権)こそ我々の敵なのです。戦争が起きれば儲かる企業が有るんですよ。彼らにとって平和は敵なんです。兵器産業だけではなく、兵士の派遣会社も有るんです。怖い時代ですよね。
世界で最初に宇宙から地球を見た人はロシヤのガガーリン中佐でした。
彼が宇宙から最初に送ったメッセージは(地球は青かった。)だと日本で報じられたそうですが、実際は少し違います。
(美しい! 地球は青かった。国境線は見えない。)でした。
我々はどの民族に属するかではなく・・
どこに国籍が有るのかではなく・・
連携した世界市民なんですよ!
そう思う事が、このきな臭い時代の唯一の希望なのです。
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