七転八起 ~神スキルの代償で恋人を7回NTRました~
鬼頭星之衛
七転び七起き
第1話 新しい朝
「ふぅ―――、やっと終わった」
俺は目覚めのコーヒーを飲んで、大きく安堵の息を漏らす。
ある種の達成感を感じながら、不覚にも不用意に瞼を閉じてしまった。
すると、先日の情景がありありと、脳裏に浮かび上がった。
「クソがああああああああああああああ」
怒りの余り、拳を思いっきり目の前の机に叩きつけてしまった。勢い余って、部屋も半壊である。
「ハァハァハァ・・・」
安心してくれ、これには理由があるんだ。決して錯乱した訳ではない。いや、したか・・・
まず何から説明しようか・・・ とりあえず俺の名は『クロワカ・イプシオン』
世間からは英雄と持て囃されている。実際英雄だし、間違いではない。
13歳の頃に力の覚醒に目覚め、強力なスキルを獲得出来たんだ。それがこれだ!
――――スキル『英雄』――――
無双できる。
―――――――――――――――
説明雑すぎない? これ絶対、神様、他の世界創造するのに忙しすぎて手抜いてるだろ・・・
まぁ、それは横に漬物石代わりに置いておくとして、とにかく俺は英雄なのだ。
何もしなくても、魔法が使えるし、多分大賢者より使える自信がある。
剣術も剣聖に一日教えを乞うたら、次の日には負かしていた。
走ればどんな生物よりも早く、山を一つや二つ吹き飛ばすのは訳ない。やらないけど。
とにかく、この世で俺に敵うヤツはいないと思うぐらい強い。
しかし、力には代償が伴うものなのだ・・・
これを見てくれ。
―――――代償――――――
恋人を7回NTR
残:0
―――――――――――――
何これ? 冗談にしても度が過ぎてるぞ?
・・・・・・・・・・・・
まぁ、これは冗談でも何でもなくて、実際に俺が受けた呪いみたいなものだ。
だが、注目してほしい。代償の残数に!
そう! ゼロなのである。俺は7回恋人を寝取られたのだ!
・・・・・・・・・
辛い。俺のこんな変なテンションも許してほしい。だって、7回だぜ? そんなヤツの世にいる?
初めはこれが信じられなかった俺だが、実際に13歳の頃に恋人を寝取られた。早熟すぎるだろ!
そして、残数が減った。
それで確信したよね。この代償が本物であるって。
初めてNTRにあって、死ぬほど辛かったけど、何故かこの代償を消化しようと言う衝動に駆られていた。多分、これも代償の一部なのだろう。今にしてそう思う。
それに、何故か俺は恋愛体質らしく、次々恋をしていき、その度にNTRに会った。
4回目、5回目ぐらいになると慣れるかな~、って思ったけど、慣れる事は無かった。毎回同じぐらい精神的ダメージを受けた。
しかも、恋人になって肌と肌を合わせて合体しないとカウントされないみたいなのだ。何故か知らんけど。
多分、間男が「アイツよりも俺の方が気持ちいいだろ? グヘヘヘ」って聞くためだろう。
そう考えると腹立つ。スキル英雄で殺してもいい?
しかし、それもつい先日終わった。これで俺も思い残す事はない・・・
あるわ! まだ魔王倒してないわ! 代償の所為でまともに魔王討伐の旅なんて出来なかったからな!
まぁ、暫くゆっくりするつもりで、旅に出るつもりはないが。
それにしても、十数年で7人か・・・ 多いのか少ないのかは分からないが、その全てを寝取られてるヤツなんてこの世に一人もいないだろ。何回でも言ってやる!
まぁ、彼女らもある意味被害者ではあるが、俺が大きく傷ついたのは事実であり、この怒りとやるせない気持ちは如何ともし難い。
それで冒頭の場面に戻る訳だが、脳裏に7番目の恋人が間男と合体している場面が浮かんできて、つい、カッとなってしまったのだ。
因みに、その子はこの町の町娘で、となりのパン屋のおっさんと合体していた。
その子とそのおっさんは村八分に合い、今はこの町にはいない。ここの住人はみんな俺の味方である。
「ハァー、これからどうしようか・・・」
恐ろしい程の虚無感。何にもする気が起きない。本当に暫くは引き籠りになろうかな・・・
英雄だし、お金には困らない。
俺は魔法で半壊になった部屋を直しつつ、今後の身の振り方を考えた。
しかし、この時の俺はまだ知らない。俺を深く傷つけ、絶望のどん底に叩き落した元恋人7人が密かに俺の元に迫っている事に。
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