隻腕のドラゴンイーター ~赤髪の少女と姉妹の絆~

森山郷

プロローグ

「マテリアルクリエイト!」


 赤髪の少女が叫ぶと右手が小さな光に包まれる。光が右手に収縮していくと、右手には中型の剣が姿を現わす。少女はその剣を両手で持ち構えた。


 少女の左手は鈍色をしており、機械仕掛けの義手だ。


 少女は一陣の風のように駆けていき、大型で緑色の蛇に向けて横一線に剣を振るう。すると蛇の体は見事に一刀両断された。


「さすが! 切れ味抜群ね!」


「レナ……次が来る……気を抜かないで」


「わかってるわよ」


 赤髪の少女をレナと呼んだのは、銀色の髪をしている少女だ。彼女は白いリカーブボウに矢をつがえ、大型の蛇に狙いを定めた。すると彼女の左目の瞳は次第に紫色に変化した。


 大型の蛇が毒液を銀色の髪の少女に向けて飛ばす。少女はその毒液を難なくかわすと、何かを待つようにタイミングを見計らって矢を放つ。


 放たれた矢は一匹の蛇の頭に見事突き刺さり、それが致命傷となったのか、蛇は全身の力が抜けていくように倒れ、動かなくなった。


「残りは任せて!」


 レナは魔力を溜めると、地面に手をついて一気に解放した。


「針のむしろ!」


 レナが叫ぶと、地面から突き出るように先の尖ったミスリル製の棒が複数本現れた。そして前方にいる数匹の蛇達を串刺しにして一掃する。


 残り一匹。


 レナは蛇に向かって走りだすと、蛇は毒液を飛ばした。


 レナは身をくるりと回転させながら毒液をかわすと、そのまま剣を蛇に向けて振り抜く。


 最後の蛇の胴体は二つに離れ、そのまま動かなくなった。


 レナは蛇を仕留めたことを確認すると「いっちょあがり!」と声をあげた。


「レナ、お疲れ、冒険者ギルドへの報告はワタシがやっておく、解体屋への依頼は任せた」


 銀色の髪の少女はそういうと、仕留めた蛇の牙を採取し始めた。


「わかったわ、アズサもお疲れ様」


 レナも仕留めた蛇の牙を採取し、銀色の髪の少女、アズサに「じゃ、お願い」と渡した。


「わかった、レナは帰ったら明日の準備?」


 アズサの声を聞くと、レナは少し考え込んだあと、つぶやくように口を開いた。


「準備は明日やっちゃうけど、心の準備は少し必要かもね……あれ以来だし」


「そっか……」


「アズサも明日来てよね!気合い入れて料理を作るからさ」


「うん、レナの料理好き、必ず行く、じゃぁまた明日」


 アズサはそういうと町へと向かっていった。


 明日はリサが帰って来る日、暖かく迎えてあげよう……また三人で一緒に暮らすんだ……やり直せるわ、大丈夫よ……。


 レナは自分に言い聞かせるように心の中でつぶやいた。



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