イバラの御旗【wrote by DEAD SCREENING】

NOVEL OFFICE MT SECO

第1話 NEO WORDS 戴冠式

エレキギターをバイオリンに、

スネアドラムをティンパニに、

拡声器をトランペットに、

垂れ流す嗚咽を旋律に乗せて、私たちは音楽を日常にリフトアップしていく。


クラシカルな楽器が必要だった。世界には秩序と規則と権威がなければひとつの言葉も軽んじられてしまうからだ。


軽んじられたものを重厚な鉄筋に作り替えて、

要塞だった街々を草花が生い茂る原野に戻すことが私たちの使命となった。


あの日、俺たちが見ていたことを誰も彼もが語ることを許されない。


ひとりの女が、「鬼ごっこしましょう?」と志願を募り銀河の行軍の旗印を立てたあの日を覚えているだろうか?小さなレジスタンスに過ぎなかった我々が今や天下国家の旗印となっている。


これは途切れたに見えた、銀河の行軍の続編である。

銀河の行軍は行軍の途中で巨大隕石の襲来を受けた。その激突を持って部隊は、ひとつもふたつも星々を飛び越えて、ブラックホールの解明に成功してしまった。

ブラックホールを覗き込んでも我々は吸い込まれることはない。永遠を夢見るよりも、新しく、永遠という謎を解き明かす使命を拝命した。私たちの名前は銀河の行軍である。

仮面を被った女の総大将はすでにいない。彼女の仮面はすでに顔に同化し、そのように振る舞えるようになったからだ。

各分隊、それか各方角の総大将たちも変革された世界に少しずつ馴染んできている。



巨大隕石には名前があった。女の総大将が涙を流し、耐えて、立ち上がり歩きはじめたあの記念の日には名前があった。

もつれた足を切り落としてしまえと笑った群衆を女の総大将は飛び上がり、叩き割るように垂直にそのつるぎを振り下ろした。脳天が割れるよりもまず真っ二つに血飛沫が上がった。一点直後、すべての群衆は逃げ惑うが総大将は掃討作戦を開始した。

「焼失させる。殲滅作戦である、焼失前、爪ひとつ大地に落としてはならない。これは掃討作戦である。焼き捨てたのち、灰を献上せよ」

視界に見えたその血の色を我々は約束の色とした。献上された灰は女の総大将が瓶にすべて詰め込み、力一杯踏みつけて大地に帰した。怒りに染まった女の総大将は圧巻だった。地上のすべてがその時総大将に従った。イバラの冠を模した旗印にも名前が与えられた。

王位継承、歴史的戴冠式を見守るためにカラスが数羽、鳩が数羽参列した。

我々もその戴冠を見守った。総大将は見違えるほどだった。もはや群衆はいない。軍は歓喜した。


「銀河の行軍は隕石の衝突をもってもはや無敵となった。我々はさらに目指す位置を高みに持っていく。全軍これより、大地に散れ。そして与えられし任務を遂行せよ。私は銀河の行軍の女の総大将であったが、この戴冠式を持って、万軍の統合幕僚長となる。すべての権限は私にある。秩序と礼節をもって愛と正義のために我々は戦う。耳のあるものは聞け、そして理解したのなら私についてこい。私が見せてやる、夢のその先に広がる地球の本当の姿を」

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