第21話

 一方的な蹂躙。


 視界が封じられた兵隊達を、上からカラミティーズが爆弾を投下して爆撃していく様子はその一言に尽きた。その様子を映す光の板を見ていたレオーラとパルコーは、顔中に大量の冷や汗を流していた。


「百人の兵隊が……何も出来ずに全滅……?」


「あれが、旦那様のゴーレムの力……」


 レオーラとパルコーの声は震えていて、そこからは隠しようのない恐怖の感情が感じられた。恐らく二人は、一度このダンジョンでカラミティーズに殺された時のことを思い出しているのだろう。


「旦那様のゴーレム、カラミティーズでしたか? このダンジョンの地形と暗闇と合わさって凶悪なまでの強さですわね」


「それはそうだろ」


 畏怖するような目で光の板を見ながら呟いたレオーラの言葉に熊翔が当然のように答える。


「ゴーレムはアーティファクトの能力の一部から与えられた戦闘能力。そしてそれをダンジョンで最大限に活かす姿を持っている。だからゴーレムは自分が生まれたダンジョンではほぼ負けなしで、それはカラミティーズも例外じゃない」


 あらゆる光と癒しの力を否定する特殊な闇に包まれたダンジョンに、光に頼らず周囲を把握して飛んで破壊と病を撒き散らす爆弾を投下する蝙蝠のカラミティーズの相性はこれ以上ないもので、熊翔の言う通りこのダンジョンではカラミティーズは負けなしの強さを発揮するだろう。加えて言えば下の障害物が何も無い階層は、大勢の侵入者を一度に爆撃するのにも向いていて、レオーラとパルコーは、熊翔が下の階層をこのようにした理由を改めて理解したのだった。


「それにしても、思わぬところでダンジョンの成長が稼げたな」


 熊翔は侵入してきた兵隊達が全滅したのを確認すると、光の板の画面を変えてダンジョンのステータスを表示させる。



【迷宮】???

【主人】小森熊翔

【秘宝】厄病呪毒若命鏡鎧

【階層】2

【成長】3/100

【脅威】C-

【MG】カラミティーズ(18/18)

【CG】72

【FG】2/113

【設備】光と癒しを否定する闇

【称号】新たに産まれた迷宮

【道具】騎士の長剣×10、鋼鉄の長剣×90、鉄の長槍×90、鉄の盾×100、騎士の鎧兜×90、兵士の鎧兜×90、指揮官の外套、魔法の指輪(体力小回復)、魔法の指輪(状態異常小対抗)、宝石付きのネックレス、宝石付きのイヤリング、宝石付きの指輪、伯爵家当主の証(指輪)、下級回復ポーション×300、上級回復ポーション×30、解毒ポーション×100、携帯食糧×120、皮袋(水)×120、高級ワイン×5、香水、松明×30、火付け石×30、



「あの、旦那様? 【成長】のところが増えていませんけど?」


「その代わり【FG】のところが増えているだろ? 今倒した兵隊達の分だけ増えていて、前にも言ったと思うけど、これをダンジョンに吸収させることで一気に【成長】を増やすことができるんだ」


 レオーラの質問に答えてから熊翔は、光の板が表示している【FG】の文字に触れて今倒した兵隊達の情報を確認する。今回彼は全ての兵隊達をダンジョンに吸収させるつもりだったのだが、一応兵隊達の情報を確認したところで一つ気になる情報を見つけた。


「何だ? 一人だけ女がいる。しかも職業は……戦姫?」

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