第15話

「これでいいんだよ。これぐらい単純で動き易い方がカラミティーズも全力を出せるし、お前達もそっちの方がいいだろ?」


「それは、そうですけど……」


「あの、カラミティーズって何ですか?」


 以前聞いたレオーラとパルコーの戦い方を思い出しながら熊翔が聞くと、実際にその通りであるレオーラが頷き、パルコーが彼の言葉の中にあった聴き慣れない名前について質問をする。


「ああ、カラミティーズはこのダンジョンを守るゴーレムで……その、前にお前達をこのダンジョンで殺したのもカラミティーズなんだよ」


『『ええっ!?』』


 熊翔が後半の部分を声を小さくして言うと、自分達を一度殺した相手だと聞いたレオーラとパルコーが全く同時に驚き、それに対して彼はカラミティーズの一体、胴体の部分が機械と同化している奇妙な蝙蝠を呼び出して二人に見せた。


「ほら、これがカラミティーズだ。今は味方だから攻撃しないでくれよ?」


 呼び出したカラミティーズの一体を自分の右手に乗せた熊翔がそう言うと、レオーラとパルコーは興味深そうにカラミティーズを見る。


「こうして見るとちょっと可愛いかも? でも、この子が私達を一回殺したんですよね……?」


「というか、あの時私達が受けたあの爆発……。この蝙蝠は一体どうやってあれを起こしたのですの?」


「ああ、このカラミティーズはな……」


 カラミティーズを見て顔色を若干青くしながら和んでいるパルコーの隣でレオーラが聞くと、熊翔は今は味方であるレオーラとパルコーにカラミティーズの能力を説明した。するとレオーラとパルコーの二人は徐々に顔色を悪くして額に冷や汗が流れた。


「ず、随分と凶悪なゴーレムですわね……? でも確かにそれなら私達が倒されるのも納得ですわ」


「は、はい……。それに旦那様の話が本当だったら、入り組んだ迷宮よりもここみたいな広い場所の方が、この子も戦い易いですよね」


 怯えた顔で熊翔の右手の中にあるカラミティーズを見ながら納得をしてくれたレオーラとパルコーに熊翔は頷いてみせた。


「二人とも納得してくれて何よりだ。あと、俺がこの新しい階層を何も無い空間にしたのはもう一つ理由があるんだ」


「もう一つの理由、ですか?」


「ああ、これがそうだ」


 熊翔はパルコーの言葉にもう一度頷き光の板を呼び出して操作すると、彼等の前に三つの武器が現れる。現れた武器は柄頭に鉄球付きの鎖が繋がっている大剣に柄の部分が長い戦槌、そして散弾銃で、大剣と戦槌はレオーラとパルコーが持つ武器とどこか似ていた。


「ダンジョンは階層が増える時にエネルギーが発生して、ダンジョンマスターはそのエネルギーを使って新しい階層の構造を決めたり、すでにある階層に手を加えたりするんだ。そして余ったエネルギーで罠やゴーレムが使う武器を作る」


 そこまで言って熊翔は大剣をレオーラに、戦槌をパルコーに手渡した。


「この三つの武器は、一つの階層に使うエネルギーの全てを使って作った俺達専用の武器だ。威力だけじゃなくて持っている能力だって他の武器とは比べ物にならないはずだ。まずレオーラに渡した大剣は……」


『『……………!?』』


 新しい階層をただ広いだけの空間にしたのは、カラミティーズやレオーラ達が戦い易くするだけでなく、これらの武器を作るためでもあると言う熊翔は三つの武器が持つ力を説明して、その説明を聞いたレオーラとパルコーの二人は驚きのあまり絶句するのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る