宿屋の本当の仕事は全滅回収業です。

とろろ侍

宿屋の本当の仕事は全滅回収業です。

chapter0

冒険に行く前は宿屋に泊まろう

 自称冒険者見習いの少年アレスは意気揚々と村の通りを進む。

 真新しい装備で身を包み、汚れ一つない剣を腰から提げている。ぶかぶかの兜からは深紅の髪が覗く。

 そんなアレスを早足で追いかけるローブを着た少女パシティア。

 パシティアも同じく真新しい装備。違いは剣を持っておらず、代わりに身の丈程の木製の杖。緩い癖のある金色の長い髪が歩みに合わせて揺れる。


 冒険者とはつまりギルドに所属して仕事を貰い、それをこなして生活をする者を指す職業であるが、もちろんこの少年は違う。

 実家の武具屋から商品を勝手に持ちだして身に着けるような自称冒険者。


「早くいくぞー! 今日こそは森の魔物を倒してやるんだ!」

「まだ私たちに倒せっこないよぉ。魔物って怖いんだよ?」

「お前はいつもそうやってビビりだから皆にバカにされるんだぞ」

「でも……」

「大丈夫だって! 宿に泊まれば全滅したって大賢者マーリンの加護を受けて宿屋で復活できるんだ! 冒険者の常識だぞ!」

「それでも痛いのはやだよ。それに全滅前提みたいな話し方だし――――ふぎゅ!?」


 急に止まったアレスにパシティアは顔面からぶつかった。


「さあ着いたぞ!」


 二人の目の前には宿屋。木造二階建てのどこにでもあるような造りで、このシープ村に一軒しかない宿屋。


「ここはな、この町で一番有名な宿屋だ!」

「知ってるよ。ユノ君のお家でしょ。ってか宿屋はここだけだよ?」


 アレスは顔を少し赤らめた。冒険者になりきっているのにパシティアが当たり前の事を冷めた口調で言うからだ。


「う、うるさいなぁ! 今日俺達は冒険者であいつは宿屋の店員なの!」

「ユノ君はお家のお仕事お手伝いしててえらいよね。アレス君とは大違い」


 実家から武器防具をくすねて、さらには金庫からお金も持ってきたとはとても言えない少年アレス。


「ぐ、とにかく入るぞ!」


 木製の扉を開けるとカランカランと入店を知らせる鐘が鳴った。

 汚くはないが整頓されたカウンター。一人の少年が帳簿に目を通しながら決まりの台詞を言う。


「いらっしゃいませ。お泊りですか? お食事で――ってアレスとパティか。今日も冒険者ごっこ?」


 カウンターの少年ユーノスは鐘の合図が客ではないと分かり少し残念そうにする。


「おいユノ! お前は客に向かってそういう態度するのか!」


 ユーノスは半眼で二人を見る。目の前にはいつも一緒に職業学校へ通っている二人。こちらとしてはいつも通りの態度のつもりだった。


「客? だって二人ともまだ子どもじゃん。宿に泊まるお金なんてないでしょ? 冷やかしはお断りー。それに僕は今日店番だから冒険者ごっこもできないからね」

「子どもじゃんってお前俺と同い年だろが! ――ってか今日はちゃんと泊まるんだよ! それにごっこじゃない! 今日は本気で森に行く!」

「ふーん」


 ユーノスは半眼のまま自称冒険者見習いアレスを見る。アレスの目は真剣で目を逸らさない。

 パタリと帳簿を閉じてメニュー表を差し出す。そして咳払いで声を作り直してから予定していた台詞を吐く。


「お泊りだけでしたらお一人様一泊3000ゴールドです。夕食朝食付きでしたら5000ゴールドになりますがどういたしますか?」

「一泊だ! ご飯はいらない!」

「かしこまりました。お二人様ですので6000ゴールドになります」


 アレスは腰に提げていたポーチから1000ゴールド札6枚を力強くカウンターに置いた。

 パシティアは不安そうにアレスの肘を引く。


「私お金持ってないよ?」

「俺のおごりだ! 誘ったのは俺だしな! それに魔物の素材をギルドに持っていけばこんなのはした金だぜ!」


 会話を他所にユーノスはゴールドをしまって後ろの棚からネックレスをふたつ出してカウンターに置いた。

 革紐でダイヤ型の小さな宝石の付いたネックレス。宝石の中に101という数字が刻まれている。


「一応確認しておきますが、ふたり部屋でよろしいですよね?」


 これまた半眼で確認するユーノス。アレスは顔が真っ赤になる。パティは首を傾げてハテナマーク。


「――お、おうよ!」

「かしこまりました。それではこちらのお客様シートへご記入お願いします」

「げ、文字書くのかよ!?」

「申し訳ございませんが規則ですので」


 お客様シートには氏名、年齢、種族、職業、住所、所属ギルド、宿泊日の項目。


「俺まだ文字苦手なんだよ」

「私も……」

「それでしたら口頭でお伝えください。こちらで代筆致します」

「わかった。それじゃ俺からな! 名前はアレス・クラット、12歳で冒険者だ! 住所はここの隣の隣の隣の武具屋でギルドはまだ入ってない! 泊まるのは今日!」


 ユーノスはため息交じりで代筆する。


「次はパティの番だな」

「え、えと。パシティア・テンネスです。歳は12歳です。冒険者? です! お家はアレス君の向かいのお薬屋さんです。 ギルドは入っていません、です! 泊まるのは今日です!」


 ユーノスは記入していく。もちろん隣の隣の武具屋なんて書き方はしていない。きちんとした住所を書いた。そしてネックレスを二人に渡す。


「記入は以上です。お部屋は101号室です。この加護のネックレスは必ず肌身離さず持っていてください。部屋の開錠を行う魔道具となっております。また全滅の際に対応したお部屋へ復活する為に必要です」

「おう」

「お部屋はカウンター横の廊下突き当りにございます。――それではごゆっくりどうぞ」

「もう手続きみたいなのは終わりか?」

「はい、以上です」

「それじゃ早速森に行ってくるぜ! いよいよ俺の伝説が始まるんだ! 土産話待ってろよ!」


 アレスは鼻息を荒げてパシティアの手を引く。


「じゃーな! ユノ!」


 ユーノスは「いってらっしゃいませ」と頭を提げた。



 日が落ち始めた頃。

 アレスとパシティアは近隣の森深くにいた。


「――アレスーッ!」

「馬鹿やろう! お前は逃げろ!」

「でも!」

「俺のことはいいから!」


 一瞬の出来事だった。冒険者のぼの字も知らない二人が魔物の住む森へ出向いて無事に済むわけがない。

 薄暗い森の中魔物の気配にすら気付けず囲まれていた。

 アレスはパシティアだけでも逃がそうと囮を買って出ている。


「俺はこれから伝説を残す冒険者になるんだ! こい! 狼の魔物共!」


 初めて握る鋼の剣。それはアレスに扱えるはずもない。ただただ重い金属の塊。

 狼の魔物はブラッドウルフという20から30匹の集団で狩りを行う魔物。


 アレスを囲む一匹が飛び掛かった。


「うりぁーッ!」


 大振りの剣が空振り地面に突き刺さる。


「クソ! 抜けねぇ!」

「アレス後ろ!」


 隙を見つけたブラッドウルフがアレスの首筋に牙を突き立てる。それは人の皮膚など簡単に突き破った。


「いぎぃ――ぐわーッ!」

「――アレスッ! アレスッ!」


 ブラッドウルフは首に噛みついたままアレスを押し倒した。そして、次々に飛び掛かっていく。

 皮膚を食い破って腕をも骨ごと噛み千切る。


「――うぐぅッ、腕が――腕がぁぁ!」

「アレス……アレス……?」


 完全に日が落ちた森の中で赤く光るブラッドウルフの瞳。

 口には噛み千切られたアレスの腕。ぼたぼたと血を滴らせている。


「きゃぁぁぁぁー!」


 パシティアはそのまま気を失う。

 アレスはかすかに残る意識の中、抵抗できずに残りの四肢を食い千切られた。



 一時間前。宿屋。


 ユーノスは帰宅した両親と共に夕食をとっていた。


「ユノ。店番してる間に客は来たか?」

「うん。アレスとパティが来たよ」

「ん? 武具屋の息子と薬屋のとこのか?」

「うん。なんか森の魔物を倒すからって。――でも大丈夫だよ! きちんとお金も払ってもらったし、ネックレスも渡したから」


 父エボレスは難しい顔をしたがすぐにユノの頭を撫でた。


「そうか。きちんと店番できたんだな」

「当たり前じゃないか! 僕は将来自分の宿屋を持って皆に気持ちよく泊ってもらって美味しいご飯を食べてもらうんだ!」

「そうか……頑張るんだぞ! ところで母さん。明日の仕入れ・・・・・・はどうなっている?」

「ええ。今確認してきます」


 母ユニスは急いで立ち上がり、カウンター裏の部屋へ向かった。


「ねえ父さん。僕にも仕入れのやり方教えてよ! そうすれば母さんの仕事が減って少しは楽できるでしょ? いつもいつも夜のこの時間に仕事するのやだよ! 皆でご飯食べたいよ!」

「仕入れはきちんと宿屋専門学校に行ってからだ。資格がないとやってはいけない仕事なんだ」

「でも……」


 エボレスは再度ユノの頭を撫でる。その時、左腕に付けている魔道具が赤く光った。


「ユノ。父さんもう一度出てくる」

「えー!」

「なーに。すぐに戻ってくるさ」


 エボレスは急いでカウンター裏に向かった。この部屋は魔道具で施錠してある為、ユーノスが立ち入ったことは一度もない。

 中は武器や防具が並んだ棚、薬品類の棚があり、二人の従業員とユニスが慌てて準備をしている。


「101の二名バイタル低下。一人は気絶判定を確認。もう一人は――四肢の損傷および血圧の低下。魔素もかなり低下しています!」


 そう言ったのはこの宿屋の従業員の一人であるクエラ。大きな机型の魔機から投影されている文字を確認しながら忙しく手を動かしている。

 ユニスは棚から薬の入った小瓶を集めて鞄に詰めていく。もう一人の従業員ジェイドは外の厩舎へ馬の準備をしに向かう。


 エボレスは急いで状況を確認する。


「場所は!」

「ここから3キロ北の森です!」

「四肢損傷に魔素低下、ブラッドウルフか」

「はい」

「101の顧客名簿は!」

「それが、アレス・クラットとパシティア・テンネスです」

「くそっ! 今すぐ緊急クリスタル防壁を発動しろ!」

「やっています! ですが数が多すぎて破られそうです! ――これを見て下さい!」

「なんだこの数は!? 血の匂いに集まったか――ユニスは後からこい! 俺は飛んでいく! ジェイド! 今馬はいい、カタパルト式の設置を頼む!」


 これを聞いてユニスが慌てる。


「カタパルト式で飛んで行くって!? あれはずっと使っていない魔道具よ! 整備もしていないし――」

「うるさい! 101はユノが入れた客だぞ!」

「――!! でも」

「なーに。ちょっと古いが大丈夫! 俺の親父がずっと使ってたものだ。何かあっても俺の足が吹っ飛ぶくらいさ。まあそうなったらお前が治癒してくれればいい」

「でも、もし向こうで足が使えなかったらいくらあなたでもこの数の群れじゃ――」

「俺を誰だと思ってやがる。ブラッドウルフなんぞ小指で十分よ! いいから魔道具カタパルト式の準備だ」


 エボレスは防具を身に着け、棚に掛けてある大剣を背負う。

 その間にジェイドは厩舎横にスクロールを張って魔法陣の展開の準備を完了させた。


「魔素循環良好! 準備完了しました。外の厩舎横に射出魔法陣展開完了!」

「よし! 行ってくる! お前らは馬で後から追って来い!」


 エボレスは宿の厩舎横へ急ぐ。


「はは。こんなに急ぎの回収は久しぶりだな。カタパルト式もこえー」

『聴こえてますよ! ビビってるならやらなければいいのに』


 耳に付けられている通信魔道具からクエラの声。


「まあユノには黙っといてくれよ」

『言いたくても言えない規則ですので』

「はは、そりゃそうだ。じゃ、とっとと飛ばしてくれ」

『はい。目標北北東3キロ地点。整備していないので多少の誤差は出るかもしれませんが我慢してください』

「了解!」

『カウントを開始します! 3、2、1――』


 魔法陣が起動すると風切り音が響き渡った。辺りの空気が一気に収束して一瞬の無音の後とてつもない爆音と共にエボレスは発射した。



    ◇



 森ではパシティアの意識が戻り始めていた。遠くの方から何かの音が耳に入る。


(なんだろうこの音? 叫び声?)


「おうわぁぁぁぁぁーーー!!」


 そして上級炎魔法の爆発のような音と共に閃光が走った。

 パシティアはこの音で意識がハッキリと戻り目を開けた。


「いてててててて。――足は無事みたいだな」


 砂煙の中に見える人影。

 パシティアはぐっしょりとした股に違和感を覚えながら体を起こす。


「私……気絶して――そういえばアレスは!!」


 蘇る気絶前の光景。込み上げてくる胃の内容物。


「うぐっ、おうぇええぇぇ」


「おおっと。101が気絶から回復。どうすればいい?」

『こちらでも回復を確認。……とりあえず気絶させておいて下さい』

「はあ? どうやって?」

『しょうがないじゃないですか! ユニスがいないと気絶魔法とかないですし! 殴ればいいんですよ!』

「あのなぁクエラ。息子の友達を殴れってか!?」

『回収作業を見られると暗部が来ますよ? きちんとマスクもして下さいね!』

「ちっ! 分かったよ! やるよ!」


 砂煙が風によって晴れると、一瞬の目視では数えきれない程のブラッドウルフが姿を見せる。それらは一斉にエボレスへ飛び掛かる。


「血の気が多い魔物だことッ! ――あらよっと!」


 エボレスは背中の大剣を片手で軽く振り回す。

 魔素の乗った大剣は風の刃を纏い、台風のようにブラッドウルフを薙ぎ払った。しかし死体の上を雪崩のように湧いてくるブラッドウルフ。

 エボレスは真上に高く飛び上がり、魔素の質を風から火に変える。火の魔素が乗った大剣は暗闇を払うように赤く燃える。


「おうらぁぁぁ!!」


 直下に叩きつけられた大剣から大きな火柱を上げてブラッドウルフを焼き払う。


 パシティアは胃液でイガイガする喉の傷みの中、手も足も出なかった魔物がおもちゃのように飛んでいく様をただ茫然と眺めていた。


(――す、すごい! これが本物の冒険者なんだ!)


 木々が燃え焦げた匂いと魔物の焼けた咽るような匂いと共に静寂が訪れた。


 エボレスはブラッドウルフが片付いたと分かるとハッとして腰のマスクを手に取って顔に付けた。

 黒色で顔を覆うマスク。目元に穴が開いている。


(暗かったし俺だってバレてはいないだろう……)


 一つ息を吐いて覚悟を決め、手刀を作ってパティに近寄った。


「あ、あの! 助けていただいてありがとうございま――」


 パシティアは的確に後頭部へと入った手刀によってパタリと気絶する。


(ごめんな……)


「よし! 魔物の鎮圧完了。101両者生存確認。一名四肢欠損によるショック状態。一名俺の華麗なる手刀によって気絶。ユニス達の到着には後どのくらいかかる?」

『はい。数分で到着予定です』

「一応止血処理はしておくが――」

『エボレスは処置をしなくて結構です! ユニスの到着まで魔物の警戒をしておいて下さい!』

「いや、俺だって止血位でき――」

『結構です! ユニスの仕事を増やさないで下さい!』

「……了解」


 エボレスは残念そうにマスクを外してその場に腰を降ろした。


「あ! そうだ、ユノはまだ起きてるか?」

『先程食器を洗う音が聴こえていましたのでまだ起きているかと』

「そうか。帰ったらアレをやらせないとな」

『いいんですか? 規則に抵触しそうですが』

「大丈夫大丈夫!」


 その後到着したユニスの治癒術によりアレスの四肢は回復。101を運ぶのはジェイスの仕事。

 ジェイスの乗ってきた回収馬車で宿へ運ぶ。一緒に馬車に乗ったエボレスとユニスは回収した二人の顔を見る。


「なんだか若い頃を思い出した」

「あなたも昔は冒険者になるって言って私を引っ張っていったわね」

「そりゃ村一番の治癒術師で美人っていったらお前しかいなかったからな」

『おおっと! 惚気は101の搬送後に通信を切ってからベッドでお願いしますね! 毎回聞かされる身にもなって下さいよ!』

「まあいいじゃねーか! このフォーマンセルももう長い。お約束ってやつだろ」


 会話を聞いていたジェイスは鼻で笑う。

 ユニスは馬車に揺られながら夜空を眺めた。


「ユノはこのまま宿屋になるつもりかしら?」

「だろうな。さっきも仕入れ・・・のやり方教えろって言ってたくらいだ。母さんと最後までご飯を食べたいんだとよ」

「……そう。今は誤魔化して食料の仕入れを教えるしかないわね」

「そうだな。俺的には違う仕事に就いてもらいたいもんだがな」

「全滅回収……宿屋の本当の仕事を教えるのは守秘義務に反する。昔の人は変な機密を作ってくれたもんね」

「全くだ。バレたら暗部が来るしな」



    ◇



 ユーノスは次の日に使うベッドメイク用のシーツを仕分けていた。


(そういやアレス達遅いな? 宿を取ったの忘れて自分家に帰ったのかな? ん? もしそうならベッドメイクはどうするんだ? 使ってないから明日の101号室はやらなくていいのかな?)


 二枚目のシーツを畳む。


(クエラさんって確か今日は泊まり込みの日だからまだいるよね。訊いてみようかな)


 ユーノスはカウンター裏の部屋をノックした。


「クエラさーん! ちょっと訊きたいことがあるんですけど!」


 部屋の中からは慌てた音が聴こえてくる。金属やら何やらがガシャーンといった音。そして静かにクエラが出てきた。


「ユノちゃん。どうしましたか?」

「ほっぺにクリームついてますよ?」

「え!? うそ!? ちゃんと拭いたはずなのに!」

「……嘘です」

「…………」

「父さんには黙っておいてあげます。僕だってこの時間はおやつ食べたくなりますし」

「ははは……ありがとう」


 するとエボレスが帰ってきた。


「あ! 父さんおかえり!」

「お、おう! ただいま!」


 エボレスは演技がかった動きでカウンターの帳簿を開いた。そして適当に目を通す。


「お! あっちゃー!」

「父さんどうしたの?」

「いや、あのな。101号室ってアレス君達だろ?」

「そうだよ。でもまだ帰ってきてないみたい」

「それがな。全滅しちゃったみたいで、今上に復活したみたいなんだ」

「……そっか、魔物にやられちゃったんだ。でもここで宿を取っててよかった。ちゃんと復活するから!」

「そうだな。で、例のアレ。やってきてくれないか?」

「え! 僕がやってもいいの!?」

「もちろん。ただ今回は特別だからな。普段は勝手にやったらだめだぞ」

「うん! 分かった! じゃあやってくるね!」


 ユーノスは急いで101号室へ向かい扉を開けた。

 ベッドには傷一つないアレスとパシティアが眠っている。


 ユーノスは緊張の面持ちでベッドの前に立ち大きく手を叩いて『パーン!』と鳴らす。


 この大きな音で寝ていた二人は目をパッチリと開けた。


「おお! 全滅してしまうとは大変でしたね。でもご安心ください。大賢者マーリンの加護により復活することができました。今後とも是非我が宿のご利用お待ちしております!」

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