第15話
「ふああ、よく寝た……」
いつも以上に気持ちよく寝られた気がする。疲れがバッチリ取れたし今日も一日頑張れそ……
「ってあっ!!!」
「おはようございます、美咲様。よく眠れましたか?」
そういえば私エドワードに添い寝されちゃってたんだ。ベッドで一緒になった瞬間に寝ちゃったみたいだけど……
「そ、それはバッチリ眠れました……でもエドワード、何もしてないよね?」
寝てからの記憶が無いから、何かされちゃったかも……
「あなたは絵川美咲様ですが、あなたの肉体はオリヴィア様のものです。美咲様が考えているような良からぬことをするわけがありませんよ」
あ、そりゃそうだわ。この肉体はオリヴィア様のものなんだから変な事考えてもするわけ無いわ。
「もしかして、して欲しかったんですか?」
蠱惑的な笑みを見せるエドワード。やめてくださいお願いします。
「冗談ですよ。それでは朝の支度を始めますね」
そして何事も無かったかのように仕事の顔になるエドワード。
今まで翻弄された私は何だったのかしら……?
散々エドワードに翻弄されてしまったが、すっかり身も心も回復した私はそれからの魔闘祭に向けた訓練に耐え続けた。
そして本番当日になった。
「それでは、予定通り頑張ってくださいね」
「うん、分かっているわ」
「じゃあよろしくお願いします」
『それでは第127回魔闘祭を始める。各々自分の実力を発揮し、良き戦闘を見られることを期待する。』
という理事長の言葉から、魔闘祭は始まった。
「皆今までの訓練で十分なくらい力を付けてきた。僕たちは間違いなくこの学年で一番強いクラスだと断言できる。そんな僕たちなら、上級生にも勝ち、優勝を目指すことも可能だろう!」
「「「おおー!!」」」
開始後、私たちのクラスは何故かクリストフが纏め上げていた。
本来なら公爵家の私がやるべき事だと思うのだけれど、それに誰も違和感を覚えることは無く皆盛り上がっていた。
本当に仲いいよねこのクラス。喧嘩もいじめも無いし、身分によってお互いが態度を変えることも無い。
多分私の次に身分の高いクリストフとフランチェスカが相手の身分によって態度を変えないのが良い影響を与えているらしい。
他のクラスは同じ身分の生徒だけで固まっていたり、侯爵家や公爵家の生徒に他が付き従う関係だったりすることが多いし。
一応マリーのクラスも似たような感じなのだけど、マリーに対する憎悪がある生徒が多すぎて仲は一番悪いのよね。
「リーグ戦の表が今届きました」
クラスの士気が最高潮まで上がったタイミングで、マルゲリータが一枚の紙を持ってやってきた。
魔闘祭の集団戦はリーグ戦の方式を取っていた。
3学年×5クラスの15チームを4つに分けて、グループごとに総当たりすることになっている。
今回私達が相手するのはマリーとデヴィッドがいる1年1組と、ストーリーでは残念ながら大幅にカットされていたため情報が少ない2年2組と3年4組の3クラス。
「初戦は1年1組です。ご存知の通りデヴィッド王子が居るクラスですね。それでは今回の作戦について説明いたします——」
『間もなく初戦を開始します。該当クラスは各々の試合会場に集合してください』
「——となります。もう時間なので、早速向かいましょう」
丁度作戦の説明が終わったタイミングで集合のアナウンスが鳴った。
団体戦の会場は訓練場と同じく教室一つ分くらいのサイズの部屋で、空間魔法によって拡大されている。
しかしその規模は訓練場の比ではなく、東京ドーム4つ分くらいのサイズらしい。
そして、訓練場のように無機質な空間ではなく、実践を想定した環境が多数作られている。
今回私達が戦うリーグでは、森が採用されることになっていた。
指定された側から扉を開けて中に入ると、まず私たちの陣地があり、周囲は森と書かれていた通り数々の木によって囲まれており遠くを見渡す事は出来ないようになっている。
『それでは、全ての試合の準備が完了したようなので、試合をスタートします。始め!!』
その合図と共に、クラスメイトは皆各々の役目を果たすために動き出した。
そしてマルゲリータは陣地に留まり、魔道具で相手を感知して大まかな状況を把握しつつ、陣地から通信によって指示を行っていた。
で今回の私の役目はというと、陣地で何もせずに座っているだけ。
というのも、マルゲリータは私の力に頼らずに行ける所まで進みたいと言ってきたからだ。
マリーに直接攻撃が出来る折角のチャンスだから前線に出たいという気持ちが強かったのだけれど、可愛い可愛いマルゲリータの頼みだからね。
一応エドワードに確認したら、個人戦の方が重要だから問題ないと許可が出たので大丈夫。
だから私はマルゲリータが頑張る姿をのんびり眺めていた。
「予想通り正面から攻めてきたようね。正面の方は敵が見えたらゆっくり後退してください。そして両サイドの皆さんは横から攻めあがってくる方に注意しつつ、中央に寄ってください」
「良い感じです。ただあまり深追いはしないでくださいね。敵の数は限られていますので、安全に倒していけばいずれ全滅できます」
一応王子がいるクラスだから比較的優秀な生徒を多く集めていて総合力はかなり高いんだけど、陣地の破壊ではなく強気に全滅の方の勝利条件を狙いに行くみたい。
ざっくりと索敵した感じ、周囲に1組の生徒は居ないようね。なら皆が戦う様子を見てみようかな。
じゃあまずは正面に居るフランチェスカから。
『逃がさないわ!皆、行くわよ!』
見てみると、クラスの皆が挟まれないように逃げる1組の生徒たちに向けて様々な魔法を放っている所だった。
フランチェスカはジュリアから教わったウォーターランスを使い一人、また一人と敵を戦闘不能に追いやっていった。
じゃあ次は右側に居るジュリアね。
ジュリアの居る集団は一言も喋らず、静かに身を隠していた。
場所的に1組の子達の後退した先かしら。
普通ならその位置にいたら気付かれるのだろうけれど、1組からしたら緊急事態だから索敵をしている余裕なんて無いみたいで、あっさりと潜伏できているようね。
ということはつまり、
『なんでここに!?』
不意打ちが成功するというわけで、前線に居た子達はみるみるうちに倒されていった。
「全員倒し終えたことを確認したら本陣に全員で向かってください。数で押しきれば確実に勝てます」
指示を受けたクラスメイトは倒し損ねた生徒が居ないかを入念にチェックした後、一か所に固まってから本陣に向かっていた。
本陣には最低限の人員しか残っていない上、優秀な生徒もデヴィッド以外居なかったため、人数差をひっくり返すことは出来なかった。
「流石ね。マルゲリータ」
一組にも当然有力な生徒が多数在籍していた筈なのに、こちらのクラスは一人も倒されないという完勝だった。
「皆様が上手く動いてくれたからです。今回は大した策を講じているわけではありませんから」
「それもそうね」
マルゲリータの読みと指示は完璧だったけれど、相手の連携がガタガタ過ぎたのはかなりのマイナスポイントよね。
無属性魔法使いは味方を回復させられるから、他のクラスと比較したら防御が圧倒的に固くなるのよね。だから受け寄りの戦術を構築するのが普通。
だけどクラスメイト達はマリーが安全な後衛で引き籠るだけという状況が許せないらしくて、最前線に送り込まれていたのよね。
嫌いなのは分かるけど勝負にその感情を持ち込むのはまずいでしょ。
ま、正しい戦法を取ったとしても一組が予選でどこかに勝利する展開は無いからどうでも良いんだけど。
「やったぞー!」
清々しい程の快勝だったので、戻ってきた皆もかなり機嫌が良さそうだった。
「次も俺たちだけで勝てるんじゃね?」
「でも2年だぜ?」
「いくら強いつっても1年しか差が無いしな!」
「でも油断すんなよ?総合力じゃ確実に負けているんだからな」
「まあ、でもマルゲリータさんの采配があればどうにかなる気がします」
「確かにそうですわね」
若干調子に乗りすぎな気もするけれど、正直その気持ちは分かるわ。
「はい、次の相手は2年2組です。作戦は——」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます