第7話
何か出てきた。確かフランチェスカと同じ侯爵家のクリストフ・ダディだったっけ。
「上級魔法を習得しており、この国に存在する4つの剣技を習得している天才、この私を見込んでやってきてくれたのでしょう?」
あー、理解。ナルシストね。確かに凄そうな実績を並べ立てているけれど、オリヴィア様以下なのよねえ。
「知らん、誰だお前」
あ、バッサリと斬られた。
「この、クリストフ・ダティを知らないと……」
本気でショックなようで、膝から崩れ落ちていた。恐らく今までの人生では何度も天才だ神童だなんて囃し立てられてきたのでしょうね。
「知らんな。初めて知ったわ」
「あ……」
ギュンターの止めによってナルシストは完全にノックダウン。うつ伏せで倒れてしまった。
「倒れてしまったがこいつじゃないから問題無い。わしが目を付けたのはジュリア・ラブロックじゃ」
なんと我が取り巻きであるジュリアだった。
「え、私ですか?」
唐突に選ばれたことにより驚きと喜びを隠せないでいる。
圧倒的強者に選ばれたのがとてもうれしかったみたいね。
「ああ、お前じゃ」
ちょっと待って、オリヴィア様じゃないんですか?????
どう見ても最強だし天才だし見込みもありまくりでしょ!?
「どうしてジュリアなのかって顔をしている者が何人かいるの」
そりゃそうよ!私は天才オリヴィア様なのよ!っ確かにジュリアはすごいけれども!頑張っているけれども!
「この中で一番可能性を感じたからじゃよ。確かに強さだけで言えば他にも何人かおる。例えばここで倒れている奴とか、オリヴィアとかがそうじゃな」
分かっているじゃない。私は最強無敵の完璧レディなのよ!
「オリヴィアに関しては強すぎてわしが関与できる伸びしろが少ないし、他の奴らは才能にかまけてこいつよりも努力をしていないからの」
なるほど。確かにオリヴィアはもう最強だからこの人に教えてもらうことで伸びるってことも無いものね。うん。
「ま、文句があるのであれば後でわしの所に来い。とりあえず授業に戻るぞ」
何か言いたげなクラスメイト達の意思をぶった切って授業に戻った。
「とりあえず今回は模擬戦じゃの。わしが実力をちゃんと確認したいのもあるが、皆も他の奴らの実力を知っておきたいじゃろ?」
まさかの模擬戦スタート。最初にエドワードからそれを聞いた時、正気か?って思ったわ。
流石に皆乗り気じゃないよねって周囲を見渡してみると、何故かギラギラしていらっしゃる。
なんで?戦闘民族なのあなた達?
ゲーム中に男子が模擬戦で盛り上がるって話があったけど、女子もってどういうことですか。
「とりあえず組み合わせは既に決めてきた。極力実力が拮抗するようにしてきたが、数名どうしようもなかった奴が居るのでそれに関しては頑張ってくれ」
「今回は1撃でも先に相手に食らわせた方の勝利とする。戦闘方法は各自自由に選んで構わない。また、場外に出た場合は仕切り直しとなる。何か質問はあるか?」
これはゲームでも聞いたルールだった。殺さない為のルールなんだけど、それをすり抜けるために馬鹿みたいな威力の攻撃をマリーに当てようとした令嬢が居たわね。
まあ私の取り巻きの一人らしいんだけど。
だってオリヴィア様がやったら消し炭になるものね。
「無いようだな。では始めるぞ」
ギュンターに指名された順番に試合が始まる。
男子対男子、女子対女子というわけではなく、本当に実力が拮抗してそうな相手を選んでいるようで、どの試合もちゃんと成立していた。
とはいっても中身が優れているかといえばそういうわけではなく、某スマ○ラのサドンデスを見ている気分だった。
まあ私には戦闘の経験なんてないから分からないだけかもしれないけど。
「じゃあ最後だ。オリヴィア・エヴァンス対クリストフ・ダティ」
私の相手は例のナルシスト。さっきまでショックで気絶していた男だ。
「僕があなたを倒して見せます。最強の座はこの私です!!!」
さっきの醜態はどこへやら。もしかして寝たら忘れるタイプとかかな。
「さっさとはじめましょう」
「先生!」
「準備は良いようだな。始め!」
「はああ!」
試合が始まると同時に一気に距離を詰めてくるナルシスト。
魔法を展開する前に倒してしまおうってわけね。けれど、
「間に合ってしまったわね」
防御魔法の展開が間に合った。つまり、これからナルシストの攻撃は一切入らない。
昨日の勉強時間の大半をかけて練習した甲斐があったってものよね。
後はお楽しみタイム。
つまりグミ撃ちの時間よ!!!!
私はナルシストが居る大体の方向に、ウォーターボールを大量に打ち込む。
大量に水の玉が破裂したことで一時的に霧のようなものが発生して様子が見えなくなる。
やったかな?
視界が開けると、そこには横たわったナルシストの姿が。
「勝負ありのようじゃな。勝者、オリヴィア・エヴァンス」
意図的にフラグを立ててみたけど、別に大番狂わせが起きることはなく、勝利で終わった。
「お疲れ様でした。流石オリヴィア様ですね」
試合終了直後、私の元へ駆け寄ってきて褒めてくれたのはフランチェスカ。
「別に大したことないわよ。ただ防御魔法を張って、初歩の初歩であるウォーターボールを撃っただけだもの」
実際大したことはしていない。別に同時発動したわけでも、標的に追尾させたとかでもないからね。
確かに防御魔法の方はかなり高度かもしれないけど、防いだのは一発だけだし、あれなら別にもっと簡単なものでも変わらない。
「今回に関してはジュリアの方が凄いわ。良くやったわね」
だからこれが素直な感想である。本当に凄い子だよね、この子。
「はい。ありがとうございます」
どうやら自分の実力を出せてご満悦のようだ。
「盛り上がっている所悪いが、今日はこれで授業は終わりじゃ」
ギュンターはそう言って帰っていった。
ってことは今日一日の学校が終了ね!頑張ったわ、私!
「それでは帰りましょうか」
これにて無事初日を終えることが出来た。
「ということでどうにか成し遂げたわよ!」
部屋に戻るとエドワードが待っていてくれたので今日あったことの報告をする。
とはいっても内容は基本的に知っているので成功したか否かしか無いんだけど。
「それは良かったです。お疲れ様でした。流石オリヴィア様が見込んだ方なだけありますね」
「いやあそれほどでも~」
イケメンに普通に褒められ、労わられるだけでも嬉しいのにオリヴィア様が見込んだ方だって!幸せものね私?
「ここは誰も見ていないので構いませんが、オリヴィア様の体でそういうことはやめてください」
「あ、失礼しました」
無意識のうちに幸せが行動に出ていたみたい。気を付けなきゃ。
「今日は取り巻き含めてマリーに対して嫌がらせをしなかったんだけど、これで大丈夫よね?」
我に返った私は、エドワードに念のため聞いておいた。
「はい。マリーが王子と仲良くなり出してからが本番ですね」
「それなら良かった。後、エドワードが取り巻きにしておきたいって言ってた人達、めちゃくちゃ良い子じゃない?」
オリヴィア様を慕っているということでポイントが入っている部分もあるのだろうけれど、それにしても普通に良い子達な気がするんだけど。
特にフランチェスカ。侯爵家としてプライドが高いのはあるんだけど、それ以外は相手思いの良い子だったわ。
正直嫌がらせをさせるのは少々心苦いんだけど。
「そうですね。とりあえず安心してください。当面は大丈夫ですから」
まあ実際に嫌がらせをするようになってから考えればいっか。
「分かったわ。じゃあ今日も授業お願いね」
「はい、分かりました」
早速明日も完璧なオリヴィア様を演じるための勉強が始まった。
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