裏切られた俺は再び歩き出す

第1章 心の迷宮

プロローグ

 冷たい秋の夜風が窓を開けたことで入り込んできた───その代わり不快な臭いが外へ出ていく。

 冷たい空気が侵食していく部屋の中、心身共に疲弊している私は、今すぐにでも洗いたいベッドの上に仰向けで倒れた。

 枯れたと思っていた涙が一滴、溢れ出る。


「・・・・・・寒い」


 室温は徐々に下がり、汗を吸収した服を着ている所為でその水分が冷やされ、体温を奪っていく感覚に襲われる。実際そうなんだろうけど。


「風邪は───嫌だ」


 本当はこのまま寝てしまいたいくらい身体は重く、立ち上がるのも支えがいる状態だけれど、仕方ないと諦め、地に足をつける。

 敷布団のカバーを外し、気休め程度に外に干す。カバーは今から私の身体と一緒のお風呂で洗う───いつものことだ。

 嫌な、習慣だ。

 

「・・・・・・え?」

 

 布団を干し終えると、偶然目を向けた先の電柱に人影を発見する。

 暗く、顔は見えないけど、向こうも私に認識されたと気付いたのだろう。すぐに背を向け何処かへと走り去った。


「警察に相談───するなら、動画に撮っておくくらいしないとか。それに、警察なんて呼んだらなんて思われるか」

 

 仕方なく諦め、忘れる事にした。 

 精々、次にこの時間───近い内に訪れるであろう夜中にベランダに出る時は用心するくらいで、今日は留めておこう。

 私は部屋に戻り、しっかりと鍵を閉め、お風呂場へと向かった。

 

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