第14歩 『気が付いたら頼ってる』
「それで、元気なかったのか......お前」
「あぁ、雪に嫌われたかもしれない」
今は昼休み。
冴島に連れられて、前の時と同じ空き教室に二人でいる。
「お前、シスコンだったのか」
「シスコンじゃない兄なんてこの世にいるかよ」
「そっちの方が大多数な気がするぞ」
「妹がいないやつはみんなそういうんだ」
今朝朝食の時もいつもみたいな会話はなく、登校時にも気が付けば雪は先に家を出ていた。
親から「喧嘩したんなら早く仲直りいなさい」なんて言われてしまった。
「まぁ、でも雪ちゃんの気持ちも分かるぜ。俺だって、美喜多さんの話を鵜呑みにすることは出来ない」
「お前もか......いや、仕方なとは思うんだけどさ。あの場で、美喜多さんの様子を見てたらその意見も変わると思うぜ」
「.....お前、大丈夫か?壺とか変な絵とか買わされてないか?」
「失礼な」
冴島に相談したのは失敗だったのだろうか。
もういい、この話は俺だけの問題にしておこう。
「ところで、聞き忘れてたんだけど、木下先輩ってどういう人?」
「露骨に話題変更をしてくるなよ。まぁ、いいけど。えっと木下先輩は、イケメンで性格もよくて真面目で、頭もよくて運動神経もよくて、将来が約束されている感じ?」
「へぇ」
「あと、妹がめちゃ可愛い!」
「雪の方が可愛いだろ、絶対」
「はいはい。......ってか、お前本当に木下先輩のことなんも知らないのか?」
「あぁ、まったく」
「お前、社会出たら困るぞぉ~」
自分よりも社会性のあるやつに言われると妙に説得力があって凹むなぁ。
というか、木下先輩ってそんなのにも有名人なんだ。
なのにあんなことするなんて......。
「まぁ、いいや。なぁ、紅貴」
「なんだよ急に真剣な顔になりやがって」
「木下先輩に復讐するんだよな?」
「あぁ、するよ」
「それでもし、紗代を救えたとしたこの先お前は紗代とどうなりたいんだ?復縁とか考えてるのか?」
「復縁もなにも、俺はまだあいつの『別れましょう』というメッセージに返信をしていないんだ。......まぁ、でも後はあいつ次第にあるのかな」
呆れたよう表情を浮かべる、冴島。
最近よく人に呆れられる気がする。
「つまり紅貴は紗代と復縁したいということだな」
「だから、あいつの───」
「俺が聞いてんのはお前の意思」
俺の意思。
木下先輩をどうにかしたその後───。
俺は紗代とどうなりたいのだろうか。
未だに返信を出来ない自分を鑑みると、やはり紗代とよりを戻したいのだろうか。
それとも、他人のためとはいってもあんなやつと体の関係を持ってしまった紗代を許せないのだろうか。
「......また、紗代と一緒に過ごしたい」
「......そうか」
冴島は少し複雑な表情を見せたがいつものように明るい表情になって
「だったら、紗代と話をしてこい!後悔してもいいって傷ついてもいいっていう覚悟があるなら!」
「なんで、復縁できない前提なんだよ?!」
「そういう覚悟をもてってことだよ!」
背中をばんばん叩かれる。
彼なりに元気とかやる気とかを注入してくれているんだろうか。
冴島とは時々話すだけの関係だったのに、今回の件でえらく関わるようになった。
特段モテるわけでもないし、優秀なわけでもないが俺の目には木下先輩よりもかっこよく映っていた。
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