昭和ノスタルジー 〜70年代の小さな町の商店街〜

陽咲乃

第1話 消防団


 私が子供の頃住んでいたのは、福岡県の北九州市。大きな山が坂の上にそびえ立つ、小さな町の商店街だ。


 坂を下った先に路面電車が走っている、なかなか風情のある町だっだ。

 ちなみに“電車”とは路面電車のことであり、俗に言う電車のことは“汽車”と呼ばれていた。

 大人になって東京に出てきたばかりの頃、“汽車”と言っては笑われたものだ。


 小さくても活気のある商店街で、同級生も大抵どこかの店の子供だった。


 そんな商店街のおいちゃん達が、かっこよく見える瞬間があった。火事が起きたときだ。

 皆、町の消防団に入っているので、サイレンが響きわたると、すぐに店を飛び出し、全力疾走で町を駆け抜けて行く。


 魚屋のおいちゃんなどは、黒いエプロンに長靴を履いたまま猛スピードで走って行くので、かなり目立っていた。


 皆も興奮して「頑張れ〜」などと口々に叫んでいる。おいちゃん達が戻るまでは、近所の人たちが交代で店番をしたりして助け合っていた。

 信頼し合っている商店街ならではの光景だったなと、今でも懐かしく思い出す。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る