第100話 俺にできること
トライアンフが言ったようにエイジがケイリヒトを転移させたのか。
それともエイジが死んでしまったから、ケイリヒトが自分で転移したのか。
それはケイリヒトしか知らないことだけど。どちらにしても仲間の死に直面して、自分だけ生き残ったんだ。自分を責める気持ちは俺にも理解できる。
エイジとマリアが死んだことで、トライアンフたち4人の関係もギクシャクしたものになってパーティーは自然消滅した。
アレックスはリーダーとして、ケイリヒトもレヴィンもそれぞれの立場から2人が死んだことに対する責任を感じていた……いや、今も感じているんだろう。
「まあ、当時のことは仕方ねえって思うけどよ。もう11年も前のことだぜ。エイジとマリアのことを忘れろとは言わねえが、アレックスの奴はいつまでも自分の責任とかグズグズ言いやがって……ムカつくぜ」
トライアンフは何だかんだ言っても昔の仲間が大切なんだよな。だからこそアレックスに怒ってるんだろ。ケイリヒトだって俺とアレックス、トライアンフとの友好関係を強引に阻止しようとしたのは2人を守りたいって気持ちの裏返しだよな。
レヴィンのことはまだ良く解らないけど。俺とケイリヒトが戦ったときに現場に来てたのは、俺の実力を探るのとケイリヒトが痛い目を合うのを見物するのが目的とか言ってたけど。本当はケイリヒトのことが心配だったんじゃないか。まあ、レヴィンは否定すると思うけど。
みんなが仲間のことを大切に想いながら、エイジとマリアの死に対する責任を今も感じてることで関係がおかしくなってる。
いや、仲間内のことだし。余計なお世話かも知れないけどさ。トライアンフがここまで話してくれたんだから俺も言わせて貰うよ。
「なあ、トライアンフ。俺はアレックスにも同じことを言うつもりだけど。おまえたち4人はみんなで正面から向き合って話をするべきなんじゃないか。
おまえはムカつくかも知れないけどさ。もし俺の仲間の誰かが殺されてしまったら、俺は守れなかった責任を感じるし。それを忘れることなんてできないと思う」
俺は何でもできるだなんて己惚れているつもりはないけど。何であのとき一緒にいなかったんだとか、もっとやれることがあったんじゃないかとか。ずっと後悔し続けると思う。
アレックスだって同じ気持ちなんじゃないか。ケイリヒトやレヴィンだって。
「アレク。
「だけどさ、トライアンフ。アレックスたちが何でそう思うのか。おまえだって解ってるんだろ。だったらお互いの思いを全部吐き出して話し合うべきじゃないか。
昨日みたいに喧嘩になるかも知れないけど。仲間とわだかまりを残したまま距離を空けるよりマシだと思う。俺も仲間が大切だからな。おまえたちを見てると何とかしたいって思うんだよ」
これは俺の素直な気持ちだ。仲間同士が互いのことを想ってるのに、ギクシャクした関係になるなんて俺は嫌だ。
「アレク、てめえ……余計なお世話なんだよ」
「ああ。自覚してる。だけどおまえたちの関係が少しでもマシになるなら。俺は余計なお世話でも何でもやるつもりだよ」
自分でもらしくないと思う。だけどトライアンフたちとは結構関わって来たからな。他人事だと見て見ぬふりをするなんて、それこそ今さらだと思うよ。
「チッ! 仕方ねえな……アレク、てめえの口車に乗ってやるよ」
トライアンフは呆れた顔をするけど。満更でもないって感じだな。
俺も自分がやりたいと思うからやるだけだ。
※ ※ ※ ※
アレックスにも同じことを伝えて、4人が話し合う場をセッティングして貰う。
アレックスが俺の存在に気づいて仲間たちを招集したときは、互いの予定を合わせるのに結構時間が掛かったみたいだけど。今回はトライアンフは承諾済みだし。ケイリヒトも居場所が解ってるから最悪強引な手段を使うけど。問題はレヴィンだな。
俺はアポイントを取って、獣人の国ギスペルの首都グラニカにある盗賊ギルドを再び訪れた。レヴィンとはフレンド登録してないからな。『
今夜もレヴィンはいつもの格好でソファーに横になっていた。
「アレク。また直ぐに来るなんて、やっぱりあたしのことが抱きたいのかい」
「いや、そういうのは興味ないんだ。だけどレヴィン、俺はあんたという人間には興味があるよ」
レヴィンは獣人だけど意味は伝わるだろ。
「ふーん……あたしに気があるってことかい」
レヴィンは
「なあ、レヴィン。今日は別の用件で来た。俺はアレックスたちにエイジとマリアのことについて話し合うように勧めたんだよ」
レヴィンは笑みを浮かべたままだけど目が笑ってないな。
「俺はアレックスとトライアンフ、ケイリヒトにも関わってるからな。余計なお世話なのは承知の上で、俺がやりたいから話し合いの場を作って貰う。
だけどレヴィンのことはほとんど何も知らないからな。あんたが参加するかは自分で決めれば良い。それを伝えに来たんだよ」
「アレク、あんたは本当にお節介が過ぎるよ。あたしはアレックスたちがどうなろうと関係ないからね。あいつらだけで好きにやれば良いだろう」
「ああ。あんたが本当にそう思ってるなら俺も構わないと思うよ。だけどさ……」
ほとんど何も知らないレヴィンにこれ以上踏みこむのは自分でもどうかと思う。
だけどこいつの行動を見てるとさ。昔の自分を思い出すんだよ。
「耳障りなら聞き流してくれ。あんたがエイジとマリアのことで責任を感じでアレックスたちと距離を置いてるなら。あんたが思ってることを全部あいつらに伝えた方が良いと思うよ」
何を勝手なことをと言われるのは承知の上だ。俺だって何も知らない他人にこんなことを言われたら頭に来るからな。
レヴィンは無言で俺を睨んでる。縦長の瞳孔の視線を俺は正面から受け止める。
「他人を掻き回すなんて、良い趣味じゃないね」
「そうだな。だけど俺が勝手にやったことだから。アレックスたちに文句を言うなよ」
それだけ言って俺は盗賊ギルドを後にする。
レヴィンがどう出るか解らないけど。今の俺にできるのはこれくらいだからな。
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