第61話 決戦
カスバル城塞の外壁から一斉に飛び降りる。
みんなもステータスが高くなったから、これくらい高さなら飛び降りても怪我はしない。
もっとも身体能力に自信のないカイだけは『
クレーターを無視して迫り来る大軍。
魔族軍11万のうち魔族が4万で、残りの7万がモンスターだ。
今回はバレスが全軍を指揮してる訳じゃないから、前線にはモンスターだけじゃなくて魔族も出て来ている。
まあ、敵として立ち塞がるなら、魔族だろうと容赦しないけどな。
俺たちはクレータを駆け下りながら、魔族軍に突っ込んでいく。
『今回はみんなと一緒に出撃するから、やり方を変えようと思ってるんだ』
エルリックとの一件の後に伝えたことは、みんな魔法やスキルを出し惜しみせずに戦おうって話だ。
発動できるバフも常に全部掛けておく。
そんなことをしたら直ぐMPがなくなると言われたけど、勿論
大軍の中に突っ込むんだから、全力で戦い続けないと数に圧し潰されてしまう。
勿論防御も回復もMPを惜しんだら持たないからな。
「『
俺はスキルを発動すると同時に、魔族軍に突っ込んで隊列に風穴を開ける。
俺はスキル無しででも問題ないけど、みんなに言った以上は率先して使わないとな。
「『
レイナが放つ白い斬撃が、敵を次々と切り裂いて行く。
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レイナ・ガルド・エリス・ソフィア・グランの物理アタッカーとタンクの5人が、壁を作りながら突き進み、群がる敵を蹴散らす。
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5人の内側からカイとセリカが攻撃魔法。神官のメアはバフと回復役に徹して、ライラとシーラが隙間を突く敵を仕止める隙のない連携だ。
強行突破する俺たちに、地上ではジャイアント、ヒュドラ、ケルベロスなどの大型モンスターが。
空からはワイバーン、ハーピー、ヒポグリフ、グリフォンが群がって来る。
ちなみに俺のグリフォンは邪魔だから留守番だ。
なあ、ソフィア。グリフォンは可愛いから殺したくないとか言うなよ。
中には80レベル超えのモンスターもいるけど、みんなのプレイヤースキルが上がっているからな。1対1で戦わなければ問題ない。
敵陣の中を突き進みながら、片っ端から敵を仕留めていく。
それでも数が多過ぎるから、全然減った気がしない。
みんな頑張っているけど、そろそろMPが切れる頃だな。
「『
俺は第5界層魔法で自分のMPをみんなに分ける。
『魔力貸与』も当然属性レベルと個別魔法レベルがMAXだからな。ロスなく全員同時にMPを渡すことができる。
「嘘……本当にMPが全回復してる。だけどこんなことをしてアレクのMPが持つの?」
セリカが珍しく心配そうな顔をする。
いや、セリカに心配されるなんて初めてじゃないか?
まあ、それは良いけど。セリカの言いたいことは解る。
レベルを上げていない
10人分のMPなんて回復させたら、普通はMPが持たないだろ。
「
「解ったわよ……攻撃も防御も回復も全力で行くわ。アレク、頼りにするからね」
「ああ。任せてくれよ」
敵陣の中を強引に進み続ける。
魔法もスキルも全開で使うからMPの消費が激しい。
MPを回復させる間隔が徐々に短くなるけど、本陣へ近づく度に敵の厚みもレベルも上がるから仕方ない。
さらに1時間ほど進み続けると、魔族軍の本陣が見えて来た。
敵の数もさらに増えたけど、俺たちが進むペースは落ちない。
俺が強引に突破してるのもあるけど、みんなも付いて来ているからな。
正直に言えば、みんなが最後まで持つとは思わなかった。
だから隠れて援護させるために、エリザベスとサターニャが部下を連れて待機してるんだけど。その必要はないみたいだな。
「アレク、もう直ぐね!」
敵を仕止めながらレイナが笑っている。
敵が強い方が楽しそうなのは、さすが勇者って感じだな。
最後の分厚い陣形を突破して本陣に迫る。
最後の守りは5体のドラゴンだ。
5体とも100レベル超と、今回の敵の中では1番の強敵だけど。強いモンスターは前線に出した方が効果的だろ。
「悪いけど、ドラゴンは俺が倒す。みんなは守りに徹してくれ」
さすがに今のみんなには100レベル超の相手は荷が重いだろ。
そうじゃなくても周りは敵ばかりだ。
下手をしたら帰り路も敵陣を突破することになるから、ここで無理はさせられない。
「アレク、解ったわよ。悔しいけど、今回はあんたに任せるわ」
「守りは私たちに任せて。アレク、無茶はしないでね」
「私だって、もっと強くなるよ。いつかはアレクと一緒にドラゴンだって倒せるようになるから」
「ああ。じゃあ、行ってくる」
俺が一気に距離を一気に詰めると、5体のドラゴンは一斉にブレスを吐く。
俺なら普通に避けられるけど、避けてみんなに当たると最だ悪からな。
「「「アレク!」」」
5体のドラゴンブレスが思いきり直撃するけど、たかが100レベル台のブレスなんて当然ノーダメージだ。
だげど、みんなに心配させるのは悪いから、さっさと片付けるか。
「『
最期も一応スキルを使う。
2本の大剣を同時に一閃して、5体のドラゴンの首を切り落とした。
俺は本陣の天幕に踏み込む。
護衛の魔族がいたけど瞬殺した。
「なあ、待たせたか? おまえは確かエリミダス侯爵だよな」
侵攻部隊の総司令官は、トナカイのような角を生やした壮年の魔族だ。
こいつはバリスタ・エリミダス。旧親魔王派の重鎮の1人で、現魔王カストロ・オルスタッシュとの権力闘争に敗れたって話だ。
カストロはバランス型だから、政敵にもポジションを与えたんだろう。
「貴様は……何者だ? 人間風情が我ら魔王軍の布陣を突破して来るとは……」
エリミダスは一応俺の元部下だし、当然顔見知りだけど。今は例の仮面をつけているから、気づいていないようだな。
だけど悪いけどさ、俺は元部下だからって1ミリも情なんて感じないから。
旧親魔王派の奴らこそ、他種族連合との戦争を推し進める連中だからな。
決め台詞を言うとか『最期だから教えてやろう』とか言って無駄な説明する趣味はないから、俺はエリミダスの首を無言で斬り落とす。
だけど、ここからは芝居っぽい台詞も必要だ。
俺は天幕を出ると、用意しておいたマジックアイテムで俺とエリミダスの首を空中に拡大投影する。
「俺が軍総司令の首を取ったぞ! 聖王国軍の勝利だ!」
レベルMAXの『
1万の魔族が一斉に敗走を始めると、他の魔族たちも慌てて敗走して行く。
『アレク様、約束はお忘れなく』
バレスの『
「アレク、上手く行ったみたいね」
「何か、結構呆気なかったわね」
微笑むエリスと、物足りなそうなレイナ。
「私は……もう疲れたよ」
ソフィアはホッとして地面に座り込む。
そうだな。上手く行って良かった。
みんなの顔を見ると本当にそう思うよ。
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