第252話

この廃村に来てから早くも数カ月になる。



こちらに来た時の季節は初夏だったが今は雪もちらつく冬だ。


最初は色んな場所に泊まったり、自販機の魔道具を作ったり、果実酒作りやビール造りで楽しかったが……まぁ飽きた。


と言う事で魔法の練習も始めたのだった。


菅井さんと一緒に風魔法を練習して草刈りをしたり、慣れてくると木を切り倒したりした。

切り株を掘り返すために土魔法の練習もした。


灯里から習って身体強化の魔法も練習し切り株を引っこ抜いた。

ついでに邪魔な石もアイテムボックスに収納したりして整地を行っていた。


私と一緒に練習していた菅井さんも楽しそうに魔法を練習して今では相良さんに拉致られ魔物狩りに連れ出されている。

たまに顔を出しに来た高梨さんも拉致られている。


高梨さんはその後討伐した魔物を回収して冒険者ギルドに卸しに行ってくれる役割をしてくれる。

手間賃は販売金額の2割が高梨さん、5割が相良さん、3割が菅井さんだ。

そしてそれを私が日本円に換金している。


更にあちらの商品を日本円で販売しているから実質私の総取りだ。

倉敷さんとマッヘンさんの分は魔道具を現物支給と現金支給半々で高価買取している。

もちろん一度安値で登録してからだけど。


だから私の手元にこちらのお金がじゃんじゃん貯まっていた。

いくら貯まったのかは数えてない。


そして商業ギルドに設置した自販機からもお金がじゃんじゃん入ってくる。

商品補充が遠隔で出来て良かった。


毎日朝と夜に商品の残数を確認し、補充をしていた。


「売れ筋はやっぱりお酒だよね。 ビール大人気」


最初から売れていたお酒類。


販売前から人気だったもんね。

でも最近は事務用品もそれなりに売れ始めている。


理由は灯里。

灯里をアドバイザーにして自販機で売られている商品をもとに、こちらの職人が作った商品が売れているからだ。


自販機で売られている値段も高いから、職人が自販機の商品よりも低めに価格設定して売っても採算が十分とれる。


それで成功した人が近くに居るから自分も作ろうって人達が真似をするために購入しているみたい。


ある程度広まったら次の商品と入れ替えよう。

元の世界でも事務用品は必需品だったもんね。

つまりは作成する人はそれだけ必要って事だ。

便利だと広まれば広まるほど色んなところで雇用を生み出してくれそうだ。

勝手に広めてくれい。

そう願いを込めた。


話が逸れた。


元々この廃村にはボロボロになった家屋が沢山あった。

草に覆われたり雑草で生い茂ったり。


魔物に破壊されたり等。


相良さんと菅井さんと私で雑草を風魔法で刈り取った。

土魔法と身体強化の魔法で木を切り倒し切り株を除去したら次は廃屋だ。


風魔法で倒壊させ、アイテムボックスに収納し土台は土魔法と身体強化で掘り起こしてアイテムボックスに収納した。


だだっ広くなった空き地をどうするか皆に聞いたら好きにしろと返答があったので私が自由に楽しむことにした。


簡易で作られた小屋も何とかしたいなぁと思いながら用地だけは確保しておいた。


畑や果樹園とかは作る?


今は作らなくてもいいか?


だって食事は皆取り寄せちゃうから。

果樹園も今はいいかな。

冒険者に採取依頼してるし孤児院にも加工を頼んじゃってるもん。


物作り用の建物はいくつか欲しいかも。

作業小屋、作業しやすいやつ。


時間経過の魔道具も大型の欲しいね。

となったら各自理想の作業小屋の案を出してもらってから作った方が良いかな?

皆も仮の小屋よりも自分好みの作業スペースが欲しいよね。


そう思って皆に聞きに行ったら思いのほか意見が出た。

やっぱり今の作業小屋では物足りなかったらしい。


倉敷さんもマッヘンさんも大型の物や数を作るとき外で作業してたもんね。


そうして完成したのはただ単に器だけじゃないそれぞれの理想の魔道具満載の作業家だ。


家が完成したのは時期は侯爵の来訪以降だ。


あの時はまだ草刈りや木を倒して芝生を植えたぐらい。


それに合わせて風魔法と土魔法と身体強化が使えるようになったので次は水魔法の練習も開始。


張った芝生に水魔法で水やりをした。

水たまりが出来ない様に均等に撒くのって難しいね。

道は舗装されてなくて土だし、芝生は単なる雑草にしか見えなかったよ。


ちなみに魔法があるから家を建てる建築時間は短縮できた。


ホームセンターに行って道具を色々買いそろえもしたしね。

マッヘンさんが興奮してヤバかった。 色々とヤバかった。


ちなみに、私の家だけでも室内の作業部屋は仕上げにモルタルも使用し、頑丈でつるりとした床になってる。

イメージはレンタルキッチンに魔道具を色々入れた感じ。

水道高熱は魔道具を設置。

下水にはスライムを使用。

どこに居ても快適な温度になるように空調も設置。


私は主に果実酒やビールとかを作る想定をしているから大型の時間経過の魔道具も作ってもらった。

作業テーブルには浄化の魔道具も設置されている。

触れば綺麗になる仕組みだ。


普通の作業台と物を入れるので低めの作業台も作ってもらった。

倉敷さんの魔法って便利。

魔道具ではなく普通のテーブルとかだとそれほど魔力を消費せずに作れるらしい。


皆の家が出来たら私はまた村の整備に取り掛かった。


冬場の今は練習を兼ねてスケート場を作ったよ。


今は火魔法を練習している。


スケートをして冷えた体を温めるのに低温の炎を作る練習をしている。

そのうち炎が無くても自身の周りを温められる魔法が出来るかな?


という訳で長谷川さんはコンクリートで舗装された道や今は茶色くなった芝生、道沿いに設置された街灯の魔道具、スケートリンク、公園のように植えられた木、設置されたハンモック、果てはマッヘンさんの要望で設置されたサウナ小屋と併設された水風呂。


廃村とは言えない変貌した村に乾いた笑いが漏れていた。

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