第251話
廃村
「とまあこっちも大変だったんだよなぁ」
「そうなんですか」
最近の長谷川さんは忙しい。
こっちに来たと思ったら報告をして領主の下に帰ったり、帰ったと思ったら商業ギルドに顔を出したり情報収集に街に出たりと良いように使われているらしい。
そんな中で最近の出来事を教えてくれている。
「いやぁビックリしたわ。 ドルイット侯爵家の令嬢をここまで拉致ってくるってどんな考えなんだ?しかも本人が行きたいと言ったからってだけでだ」
「ドルイット侯爵家からここまで馬車でどれくらいなんですか? グリフォンだと数時間みたいですけど」
テーブルの上のお茶を飲みながら指を折り考えるそぶりを見せる。
片手じゃ足らなくなったみたいでカップを置き、両手で数え始めた。
「まず、王都を挟んで反対側にある。 ここから王都まで馬車で1週間くらいだろ? 王都からドルイット侯爵領まで5日くらいか?」
「まって、グリフォン早すぎじゃない?」
「まぁ、空だしなぁ」
空だしなぁで済む話なのか? 凍傷とかならないの? 来た人達無事だったけれども。
「あれ? そのシャーロット嬢はなんでドルイット侯爵領を通ったんですか? ミラーリア領ってドルイット領と近いんですか?」
「まてよ今地図を出す」
そう言って長谷川さんがアイテムボックスから地図を出してくれた。
この国の地図初めて見たよ。
ブリストウ領は……ここか。 めっちゃ端だね。 この森はここの辺り?
「ブリストウ領って国の外界部分にあるんですね。 国境ってどこと接してるんですか?」
「国境というか……この森の先が中立地帯になってるんだ。 まぁ……明確な区分けはされていない。 なんというか魔物が急激に強くなるからな」
「魔物が強くなる?」
「人の手に負えないような魔物が住んでいる森。 それに接しているんだ。 国境と言っても他国と接しているわけではない。 人が攻め入れない森だからめんどうな腹の探り合いはしなくても良いが、言葉が通じないから一度攻めてこられたらデッドオアアライブだ。 そう言う意味でも相良は都合が良い人材なんだよなぁ」
戦闘大好き人間だもんね。
地竜も倒しちゃうくらいだもんね。
楽しそうに魔物に挑んでいきそうな様子がありありと浮かんだ。
「そうなんですねぇ」
「っと話がそれたな。 ミラーリア領だっけか? ここだここ。 ドルイット領の隣になるな」
長谷川さんが指さした場所を見る。 地図で見るとここも森が広がっているようだ。
「ミラーリア領も広大な森がありますね。 ここも魔物が多いんですか?」
「ここよりもずっと少ない。 だからあの人数で動けたっていうのもあるんだろうが……ミラーリア領は薬師の家系だ。 ポーション類の一大産地になる」
「そうなんですか」
長谷川さんから教えてもらった情報によると、ミラーリア侯爵は代々ポーションの研究やら薬草の研究を行っている家系らしい。
ブリストウ領から遠いっていうのもあるが、治療とかも自前のポーションで賄えるから渡り人もいないんだとか。
渡り人に人気が出そうな土地なのにね。
ポーションとかって異世界で人気じゃないか。
その隣のドルイット侯爵領は魔道具作りが盛んな土地らしい。
ドルイット侯爵自体も魔道具好きだったもんね。
初めてここに訪れた時の転移門に頬ずりしていた姿を思い出す。
あれは好きっていうレベルじゃなくて変態の域に達していると思う。
「じゃあなんでシャーロット嬢はここに来たんですか? しかも私に接触しようとしたなんて」
「そこなんだよな。 その前に来たミラーリア家ご用達の商会も気になる。 ミラーリア家は渡り人に興味が無いはずなんだよ」
二人でうーんと首を捻る。
「まぁ、アルフォート様達に対しての態度を見る限り会いたくは無いですけどね」
「それに関してはここから出なければ会う事は無いから大丈夫だ。 だから街には行くなよ」
「分かりました……」
「……にしてもいつの間に……ここはどこまで変えるつもりだ?」
話はいったん終わりだと言わんばかりに長谷川さんが幌馬車の外を見やる。
「え? 暇だったんで頑張りました」
私は皆が対応に追われる中廃村メンバーで廃村の改良を頑張っていた。
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