第213話
王都の商業ギルド
王都の商業ギルドはブリストウのギルドと違い室内が豪華に飾られている。
商業ギルドの顔、扉から始まり有名な彫刻家に彫らせた彫刻が置かれ、絨毯も手入れが行き届きさらに半年に一度は交換がなされている。
それもすべては貴族御用達の為だ。 みすぼらしいものだと蔑まれ侮られてしまう。
他の商業ギルドから集まった異世界の商品がここに集まり、それを求め貴族の使用人が、もしくはお得意様が連日やってくる。
そうやってここは王国随一のギルドとなった。
商業ギルドの5階、商業ギルド長のザルフの私室
この部屋も高価な家具で彩られ部屋には大枚を叩かないと買えないという通信の魔道具まで置いてあった。
それも内密に貴族とやりとりをするためだ。
もちろん部屋には防音の魔道具も置かれていた。
ブリストウ領の商業ギルドに通信をし終えると部屋の主であるザルフは悪態をついた。
私腹を肥やし身に詰めたせいか恰幅が良く、身に着ける物には見栄えの良いものが目立つ。
「ええい、オーフェンめ噛みつきおって、忌々しい」
切った勢いそのままに座り心地の良さそうな椅子にドカッと腰を下ろす。
ザルフの体重に椅子はギシリと音が鳴った。
カナメルの奴よりはましだと今まで放っておいたが……そろそろ変え時か。
あやつも随分長い事ブリストウ領に置いてしまったな。
あそこの領は他の領と違い任命する手順が面倒だ。
それは何より特殊な森のせい。
渡り人がやってくる森を有するが故だ。
それゆえ金も生む。
渡り人の持つ品物は大金を動かす。
この国にはない未知の味、それに毎回来る渡り人によって物も変わる。
その味がお金を払っても購入できない希少性を孕み、味わうことにより貴族間での羨望につながる。
その利権を得ようと儂の所にお金が舞い込む。
ソルレイユ伯爵とナルーヴァ伯爵の所が特に見栄っ張りで熱心だった。
連日手にした金銭を思い出し顔がにやける。
おおっといかん。
だから任命するには色々と貴族の思惑が絡んでしまう。
下手に紐付きの者を送ってしまえば儂の所に商品が届かず他に流れてしまい、逆に真っ白過ぎると貴族の誘惑に負けて流してしまう。
そう言った面でオーフェンは実に便利だった。
渡り人から買い取った商品を言う通りにこちらに流し、貴族からの要求は軽くいなす。
それに胡坐をかいた結果が今回につながったのだろう。
……領主と言っていたな。
長くあちらに居たせいで、それなりに挨拶する中になったのだろうな。
だが、あの領主は他の貴族と違い渡り人とは関わろうとしない。
私も何度か商品を勧めはしたがその時の購入のみでつながりは持とうとしてこなかった。
それぐらい潔癖だ。
まぁ陛下から任命されている地の領主だ。 簡単には靡くまい。
顔見知り程度をさも親しげに話すなど……あやつもとうとうおかしくなったのだろうな。
面倒だが後任を考えるか。
それよりも今度来た渡り人は取り寄せだったのか。
全く……無駄に商品を他に流しおって……。
しかも一度魔力を大量に消費したと聞いたぞ!! 全く儂の商品を無駄に使いおってからに!!
勝手をしたオーフェンに苛立ちを覚える。
……まぁいい。 あれだけ言ったんだ。 しばらくすればこちらに届くだろう。
渡り人もこちらに来てから十分躾けねばな。 勝手に魔力を使われぬように。
むろん王室には気づかれないようにせねば。
……とするとどこが空いていたかな?
王都南のスラムの地下は一杯だし、北側は王城に近すぎる。
城壁側のあの場所がいいか?
あそこは魔道具作りの渡り人用に空けてたな。
全くあの渡り人はどこに行ったんだ? 追っ手を放ってるが一向に戻って来んし!!
サーウェル子爵からの問い合わせが煩いというのに。
連絡が無い以上これ以上考えても仕方のない事だと深く息を吐き頭を振る。
考えを戻し、報告にあった魔道具を思い出す。
にしても自販機とは一体……。
これも新しく売り出せるかもしれんのう、いくらで売ろうか。
これからのことに思いをはせて笑みがこぼれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます