第177話


「……これなんですか?」


「ん? これか? これはほれ、桜が希望しておった魔道具の部品を選定しておったんじゃ」


今頼んでる魔道具って……、


「自販機……ですか?」


「確かそんな名前じゃったかな? 透が一通りレシピで必要そうな魔道具を作ったからのう、解析は済ませたから、後はわしがそれに合った素材で組み立てじゃ」


楽しそうに置いてある骨を触るマッヘンさん。


「これはどこに使われるんですか?」


「まさしく骨組みじゃ。 何種類かの骨と鉱石を混ぜ込んで型枠を作るんじゃ」


「骨を混ぜるんですか?」


「あぁ。 今回は色々術式を混ぜ込むからの。 属性値、純度、硬さ、組み込む素材と魔力との相性、色々と検証せねばならん、一つだけでは作れんのじゃよ。 今回は色々詰め込むから楽しみじゃわい」


「そうなんですか」


……とてもじゃないけど家の相談なんてできないな。 しょうがないネーアの街にある家に転移門設置しよう。

いや、まて。 私無理やりここに拉致られてきたんだよ? しょうがないってなんだ? ここになじみ過ぎじゃないか? 


恐ろしや恐ろしやと思いつつ幌馬車の転移門からネーアの街へ行き自宅へ帰ると転移門を設置した。




「自宅に戻るので用があるときはこれで連絡してくださいね」


幌馬車の自室の中に転移門を設置し終えたので戻る前に倉敷さん達に知らせておいた。


「ちょっと待て、いつの間に街に行ったんだ?!」


「めんどくせえな。 ここじゃ駄目なのか? 自宅じゃなきゃ駄目なのか?」


長谷川さんに驚かれ、倉敷さんには顔を顰められ素材提供係として難色を示された。


「フルーツビール作りたいのでここじゃ狭いんですよ、自宅で作業します」


「フルーツビールってあれか? あっちで作り方検索してた……」


「そうですそうです!」


「フルーツビールってなんじゃ?」


「果物を使ったビール……エールのことですよ」


「甘いのか……」


お酒と聞いてマッヘンさんが食いついたが、果物のお酒と聞いて興味を失ったようだ。


「作業場か……屋根が着いとればいいのかのう? そんならすぐできるぞ?」


「え……?」


「爺さん、材料はこっちで持つから頼む」


「う……うむ? 仕方ないのう」


そう言ってマッヘンさんは相良さんに空き家の解体で出た廃材を出させて材料を見繕う始めた。

足りない分は長谷川さんが街で調達することで話が付いた。

え? 家ってそんな簡単に建ててもらえるものだっけ? 私がおかしいの?


「よし、爺さんに任せとけ。 ついでに俺のも頼むな、よし。 これで解決だな」


しれっと自分の分も追加したよ倉敷さん。


「透も手伝うんじゃぞ。 長谷川、おぬしもじゃぞ」


「「……」」


「わ……私も手伝います!!」


数日たって気づけば私だけじゃなくて皆の分の簡易作業小屋が作られた。

幌馬車じゃ手狭になったのか。 私だけじゃなくみんな思ってたのか。

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