第173話


「オリヴィア様が今飲んでらっしゃるのはベリー系のフルーツビールになります」


小さめの可愛らしい瓶を持ち上げて見せた。 興味を惹かれたみたいなのでそのままアルフォート様に瓶を渡した。


「ベリー? こちらの世界にもあるの?」


聞きなれた物がこちらにもあるのかと、オリヴィア様が言葉を繰り返した。


「ベリー……そうですね、日本では苺と言います、あちらの世界の物とはもちろん別物ですが、スノーベリーなどに近いでしょうか?」


「そうなの? 食してみたいわね」


「今は手持ちに無いのであちらに戻りましたらお出しいたします」


「ありがとう」


果物は気になるよね。 私もあっちの世界の果物好きだもん。


「このフルーツビールはあっちでも作れるのか?」


渡した瓶を眺めつつ、オリヴィア様が美味しそうに飲むのを見てアルフォート様から質問が来た。


「申し訳ありません、私製法までは存じ上げていないので……」


「そうか、いや、いい。 ありがとう」


聞いてみただけだと言われたが、


「あとで検索しておきます。 お帰りの際までにはお答えできるようにしておきますね」


「ん?」


「え?」


私とアルフォート様が顔を見合わせた。 

どうやらアルフォート様は私の最初の答えで無理と悟ったらしい。

私としては今時点では知らないよ、と言う事だったんだけど。

ネット検索すれば今時作製方法なんていくらでも出てくるもの。


「まあ、教えて頂けるの? 嬉しいわ」


「あぁ……そうなんだが、いやそれでいいのか? 書物か? 書き記したものがあるのか?」


知らないのに知ることが出来る、その事実がよく理解できないようでアルフォート様は混乱しているようだ。


「書物ではないですが……知識の塊をさらってみます」


「知識の塊?」


ここでイーノス様が食いついてきた。

インターネットってなんて説明すればいいのさ。


「具体的に説明しにくいものなので、食事を終えてから実際に見せますね」


また質問攻めが来る!! そう直感し、そう言って説明から逃げた。


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