第172話



「皆さん、テレビはそれくらいにして食事にしましょう」


テレビに没頭していた皆さんはハッと我に返ったようだ。


イーノス様やアルフォート様は目が疲れたのか目頭を押さえている。 ……そりゃテレビが無いところからきて半日近くテレビを見続けたら目も疲れますって。

長谷川さんはいちいち解説をさせられたのか喉を抑えていた。


「今日の夕食は何かしら?」


「今日の夕食は串焼きです」


「串焼き? 野営食かしら?」


野営……。 確かに!!


オリヴィア様の言葉を聞くとそう見えてくる不思議。 確かに野営って串に刺して焼いて食べたりするよね? 確か。 あれ、選択間違えたかな?


私たちからして囲炉裏でのご飯って特別感があるけれど、あちらの世界の人からしたらそうでもないかもしれない。


「野営食にしては……色々ありますね。 これは草ですか?」


イーノス様まで野営食って……。


「確かに。 野営の時はこんなに綺麗に刺さないですし、草も焼かない。 こんなに種類も多くないですね。 たいていは……干し肉ですませますし、串に刺して焼くものと言えばその場で狩れたものにかぎりますからね」


アルフォート様まで……。 なんか野営食談義が広まってく。 公爵……前国王の従者だよねイーノス様、領主だよねアルフォート様。 なんでそんなに野営食に詳しいの。


取りあえず座ってもらおうと席に案内をしようとして動きを止めた。

上座……この場合どっちが上? 領主であるアルフォート様? それとも公爵の従者のイーノス様?

私が悩んでいる間に、長谷川さんがイーノス様を上座に座らせた。 公爵の従者の方が上なんだ。


宿の人に教えてもらった通りに炭に火をおこして周りに串を刺していく。


「飲み物はいかがいたしますか? お酒はこちら地元の日本酒や地ビールの他にアイテムボックスからも出せます」


「お薦めはなんでしょう」

「私もお薦めをいただこう」

「私もお願いしてもいいかしら?」


みんなそろってお薦めって。

せめて好みを……って飲まなきゃ分からないか。


「ではせっかくですから地元のお酒を楽しみましょう」


と地ビールから飲んでいくことにした。

そして焼いている間に皆で前菜に舌鼓を打った。


「エールでも種類豊富なんですね」

「これを飲んだら元の世界のエールは飲めないですね」


イーノス様とアルフォート様がそう感想を述べる。 長谷川さんは大丈夫かなとチラッと見ると、今日は控えめに飲んでいるみたいだ。 

折角なので今日は地ビール尽くしにしてみた。

ここの地ビール3種の他に、いろんなところの地ビールをアイテムボックスから出した。 

前回バーベキューの準備で色々取り寄せたかいがあったね。


オリヴィア様が確か果物のお酒を好んでいたので、オリヴィア様向けのはフルーツビールだ。

色んな果物の物があって彩も華やか、女性向けだよね。

何度もお酒を嗜まれたかいがあって、疑うことなく素直に口に含むオリヴィア様。


「エールなのに苦みが少ないですね」


口元を手で隠しつつ驚いたように感想を述べる。


「オリヴィアは何を飲んでいるんだ?」


そんな様子のオリヴィア様にアルフォート様が興味を惹かれたみたいだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る