第166話




すっかり日も暮れ夕日も海に沈んでしまった。

梟の鳴き声や鈴虫などの虫の声が聞こえる。 一応明りにつられてウッドデッキに虫が来たら嫌なので、倉敷さん特性の魔道具を使って家の周りに結界を張った。 結界は見ない。 べちべち音が聞こえる気がするけど見ないったら見ない。 絶対だ。


お肉の類は冷めてるかと思いきや、春子さんがこっそりアイテムボックスに入れててくれたおかげで温かかった。

残った人たちで再度乾杯し二次会がスタートした。

オーフェンさんと長谷川さんはビール、春子さんは赤ワイン、私はあっちで作った果実酒割り、灯里はコーヒーリキュールの牛乳割りだ。 お好みで各自魔道具で氷を出した。


「オーフェンさんは大丈夫ですか? 顔が赤いですけど」


「大丈夫です。 心配ありがとうございます」


「良ければこれどうぞ……。 遅いかもしれませんが」


アイテムボックスからウコンを取り出してオーフェンさんに渡す、オーフェンさんはありがとうございますと言って飲み干した。


こっちのお酒、アルコール度数どれも高いからね、ついつい飲み過ぎちゃうよね。

そして皆がお酒を飲み始めたところで切り出した。


「……ところで、長谷川さん。 何がどうなってこうなったんですか!?」


「ん? そう言う事だ」


「どういうことだー!!」


長谷川さんは説明が面倒になったらしい。

私と春子さんで粘り強く聞き出した。

はぁ……とため息をつくとお肉をビールで流しこみながら話し始めた。


「そもそも、こっちに来る前にベルゲマン公爵夫妻を領主夫妻がもてなすって話はしたよな?」


「そうですね」


「日付は一カ月後、ここまではいいか?」


「はい」


「人数は未定って言ったよな?」


「はい」


「じゃあ誰が人数決定したら知らせるんだ?」


誰が? 誰からだれに?


「どういうことですか?」


「今回、事がことだから通信の魔道具は使えない。 あ、今俺と領主が連絡を取り合っている通信の魔道具はまだ王には報告されていないからな? それは桜の話が済んでからだ。 というか今桜の話だけで手一杯だからな。 その他もろもろの魔道具の話はまた後だ。 ……っと話は逸れたが、それもあって今領主はまだ王都に居る。 王都と街だけでも結構な距離が離れている、さらに街からここ、廃村までも距離が離れている。 圧倒的に時間が足りない」


「街からここまで転移門があるじゃないですか……それに王都と街だってグリフォン使ったんじゃなかったですか?」


「表立って転移門があるって言えるわけないだろ!! あほか!! これオーバーテクノロジーもいいとこだぞ!!」


疑問を口に出したら、長谷川さんはクワっと目を見開いて反論した。

その長谷川さんの言葉にオーフェンさんが深く頷き、春子さんと灯里は苦笑いだ。

やっぱり転移門ってこっちじゃメジャーじゃないのか。 ファンタジー小説じゃメジャーなのに。


「少しでも時間が惜しい。 だから領主は先にオリヴィア様を寄越して慣れさせる判断を下したんだ」


「……わかったような分からないような」


「あと……」


「なんですか?」


「爆弾を放り込まれる身の気持ちを理解してもらうためだ」


長谷川さんの言葉に、オーフェンさんと春子さんが咽た。


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