第154話


「んで、桜」


「はい?」


にっこり笑って名前を呼ぶ長谷川さん、なんだか嫌な予感がした。


「領主からの伝言だ。 王族がカタログギフトを使用する可能性が高い。 行き先を考えるように。 とのことだ」


「はい?」


ん? いまなんて言われた?


「えーっと、 王族が?」


「おう」


「カタログギフトを?」


「おう」


「使用する?」


「そうだ」


「なんで?」


どう言うこと?


「……ここにくる前に緊急連絡で領主が王様に連絡を入れた。 その理由として王都までの距離が関係ある。 まずネーアから王都まで1週間はかかるの分かるよな?」


「かかりました」


「戻ってくるのはどうやった?」


「相良さんと一緒に空の旅という名のジェットコースター……」


「…………そんな事やってたのか」


長谷川さんに呆れられた。

え? 知ってたから聞いたんじゃないの?


「はい」


「まあ……いい、領主も似たような手段持ってるからな」


「領主も空のジェットコースターするんですか!?」


あれってそんなメジャーな移動手段だったのか!?


「んなこたしねぇよ!! ……魔獣を使うんだ。 グリフォンだグリフォン」


「なにそれファンタジー!!」


「王都に魔獣が現れたら大騒ぎになるから緊急時以外王都へ乗り入れ禁止だがな、

今回はことが事だ。 通信の魔道具も盗聴の危険性がないとは言えない。

だから領主が直接最短で報告に行くとグリフォンを使用する旨を緊急連絡入れたんだ」


「それとカタログギフトどう繋がるんですか?」


「危機感無さすぎだろう。 桜の魔法について報告に行くんだ!!」


「えっ!? 」


「え、じゃねぇ。 あの魔法、領主止まりな訳ねえだろ。 普通に王様案件だ」


「大丈夫ですよ桜さん。 例え王であろうと打ち砕きます」


私と長谷川さんの会話に割って入る相楽さん。

砕いちゃダメでしょう!!


「そこ!!さらっと怖いこと言うな!! お前ならやりかねん!!




……と言うか簡単に王を倒すとか言うな。 それがどう言う結果を生むか分かってんのか? 渡り人とあちらの住人とで戦争でも始めたいのか?」


「私の邪魔をするなら構いません」


「今居る渡り人、これから来る渡り人とあちらの住人に禍根を残してまでか?」


「はい」


二人の間の空気がピリピリしている。


「……桜はどうだ?」


「うぇ?!」


唐突に声がかかり声が裏返ってしまった。


「そんな展開桜は望んでいるのか?」


「……望んでません」


私は嫌だ。 あっちの世界に行ってから難癖つけられることも多かったけど良い人の方が圧倒的に多かった。 そんな人達と憎しみ合うなんて嫌だ。


そんな想像をしてしまって気分が滅入る。


「……だとよ。 どうする? 魔力のパトロンがそう言ってるぜ?」


「……分かりました」


「相良の言う武力行使が必要な奴には使えば良い。 俺はそれは止めない。 だがその前にこっちに一報を入れろ。 お前よりもこっちの繋がりはあるから手助けくらいはしてやる」


「……しょうがないですね」


相良さんが苦笑しながらそう言った。 なんか話がまとまりそう?


「だが、あくまで俺は領主側ということ忘れんな。



……と言うわけで桜、相談料としてあのcmでやってたビールサーバー宜しくな」


……え。

あのシリアスな雰囲気はブラフだったの? 本命はそこ?!


「「「大変だな」じゃの」だね」


「お前らもお前らだ!! 人ごとじゃねーよ!! ちょっとは魔道具を隠せ!! 特に倉敷!! お前王都の貴族の間で話題になってたからな!!」


「は?」


話を大人しく聞いていたマッヘンさん、倉敷さん、菅井さんはまとめて叱られた。

長谷川さん曰くここまでさらけ出して話すつもりは無かったらしい。

あまりにも、あまりにもオープンで色々秘密を秘密としない姿に警戒するのがバカらしくなったらしい。 長谷川さんに皆まとめて叱られた。


「んで……話戻すぞ」


「「「「「はーい」」」」」


「領主の意向としては残すつもりで話をしてくれるらしいが、王自ら赴いて判断するって流れになりかねん。 だから場所を見繕っておけって訳だ。 永遠にあちらとおさらばしたく無ければ場所探せ。 以上」


「……話は分かりましたけど具体的にどんなのが良いんですか? カタログギフトは高級ですけどこれで良いんですか?」


王様好みとか難解すぎる。 私としてはここも充分高級旅館なんだけどどうなの? 狭く感じるの? どうなの?


「それは実際に行って見て確かめるしかないだろ。 領主から連絡あるまで使いまくるぞ。 明日王都に向けて出立するって言ってたから……まだ時間はある」


「分かりました」


「……うまく丸め込まれたけど単に自分が行きたいだけじゃないのかなー?」


そんな菅井さんの言葉は長谷川さんにスルーされた。


そうだよね。 なんか私達のためって言ってるけど結構長谷川さん自分の都合入れてたよね!?


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