第153話



通された場所はお座敷タイプの個室だ。 壁の一部がガラス張りになっており外の景色も眺められる和室、外は暗くなっていたが、篝火が焚かれており幻想的な景色になっていた。


「地べたに座るのかのう? 部屋のといい随分低い机じゃの」


「地べたじゃないよ? 畳だよ。 こっちは靴を脱いで過ごすのが普通なんだよ」


部屋の中をウロウロ見て回るマッヘンさん、菅井さんが付きっ切りで説明している。


満足して席に着くと料理が運ばれて来た。


懐石料理はまずは食前酒が振る舞われた。 先附に旬の野菜と魚の和物、前菜、煮物椀と続いた。 どれも地元の物が使われ、手間がかけられており美味しかった。 バイキング形式も良いけど、本職の人がこうして丁寧に計算して出してもらえるのも良いね。


「……もう無くなってしもうた」


マッヘンさんには見慣れない食材だというのに、果敢に攻める、空いたお皿はどれも綺麗に間食されていた。 ちなみにお箸が使いにくそうだったのでフォークを出してもらった。


私はお腹いっぱいになったけれどマッヘンさんと長谷川さんと相良さんは飲み足りないみたいだ。


せっかくの米どころ、売店で地酒を購入し倉敷さんたちの部屋で二次会の流れになった。


私の部屋から座布団を持ち寄りテーブルの上には日本酒がずらりと並ぶ。 バーカウンターもあったけど楽なので畳の部屋で飲むことになった。


売店でおちょこも買い一度洗う。 おつまみは買ったものと私のアイテムボックスに入っていた食べ物を提供した。

こちらにくる前に魔法で取り寄せてアイテムボックスにしまっておいたものだ。 ラインナップは鰹の酒盗にイカの一夜干し、唐辛子とマヨネーズを添えて、あさりの酒蒸しやイカの塩辛、その他に売店で購入した味玉に袋に入ったお菓子これはこれで美味しいよね。

これくらいで様子を見て足りないようであれば追加でだそう。


ついでにテレビも付ける。 今日は何がやってるかな?

テレビ欄を見てマッヘンさんが好きそうかなと科学の実験バライティーを流しておいた。


みんなに飲みたい銘柄を聞き蓋を開け注ぎ渡す。 菅井さんはあまり日本酒が得意ではないとのことなので缶の酎ハイをグラスに注いだ。 ビール大好きな長谷川さんにもビールが良いか聞いたが今日は日本酒を楽しむということだったので日本酒を注ぎ渡した。


みんなの手に渡るのを確認し



「「「「「乾杯」」」」」」


お酒を煽った。


「流石米どころ、地酒の種類豊富だな」


テーブルの上に並んだ瓶を見てそう感想を述べる長谷川さん。


「ですよね!! 私何軒か旅館行きましたがここが一番種類多いです」


「それも驚いたがあんなに大人買いする奴も初めて見たぞ。 売店で6万て」


「あ、あはははは……」


片っ端から日本酒を購入、小さい瓶だけでなく一升瓶も買ったらそんな額になってしまった。


「旨いのう、わしはこの辛いのが良い。 すっきりしてるが通ったところから熱くなるのがまた良いのう」


マッヘンさんは水でも飲むみたいに手酌で飲んでる。 そんな風に飲むものじゃないと思うんだけど……、まぁ……楽しみ方は人それぞれだよね。

ってそれはもうおちょこじゃ足りてないね。


「マッヘンさん、こちらの升使いますか?」


「ん? なんじゃこれは」


「木で作られたコップみたいなものです。 そっちのおちょこよりいっぱい入りますよ」


「おお、ならそっちを貰おうかの」


「あーレモン酎ハイ沁みるー」


くーっと美味しそうに飲む菅井さん。


「あっちにそういうお酒ないですもんね。 あっちでこっちのお酒飲んでもらったら皆いい反応してくれましたもん」


「そうなんだー、だってあっちのお酒エールしかないんだもん、エール苦手なんだよね」


「同意。 そんで冷やす道具が高くて大型のものがないから温い」


それに加わる倉敷さん、


「だろ? だからキンキンに冷えたビール飲めた時の感動といったら……神か? って真面目に思っちまったよ」


長谷川さん、あの時そんなこと思ってたの?


「なら冷やす魔道具作ったら良いのに、魔力回復出来るんだから作れるんじゃないですか?」


「そうだよ、透作ってよ!!」


「俺が作るより爺さんが改良するほうがいいだろ。 素材たんまりあんだから」


「そうじゃの? 酒のためじゃ頑張るかのう」


「私も素材たんまり刈りますね」


相良さんが張り切りだした。 魔獣は逃げたほうがいいと思う。


「出来たら買わせてくれ。 楽しみにしてるぞ」


あっちに戻ったら分解用の冷蔵庫の他に見本用にも出しておこうかな? こっちのと見比べて何かヒントになるかもだよね。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る