第44話 反省と依頼1



「さて…先生に何をプレゼントしようと思ってたの?」


「…まだ決めてない」


「そっか」


テーブルに置いてたお茶をグイッと煽り


「ちなみに昨日の果物のランクは何だったの?」


「それはギルドの人がDランクって…」


「Dランクね」


確か金貨1枚だったはず。半額は結構痛手だね。


「分かった。じゃあ今日は二人で金貨1枚、明日一日手伝ってもらって二人で金貨2枚。これでいいかな」


「金貨2枚!?やる!やるやる!」


「金貨貰えるの?!」


「よし。じゃあ早速始めるか」





やることはお酒造り。


先に2階に上がって保存瓶を魔法で出しておく。氷砂糖と焼酎も。それを邪魔にならないようアイテムボックスに入れる。一応目の前で魔法で出すのはやめておく。アイテムボックスはこっちでもあるみたいだし驚かれないでしょ。


作業机の上にはレモナの実を出しておいた。取り敢えず1箱。全部で7箱あるので嵩張ってしまう。ハンスさん達からの貰い物の果物で一番多かった。実りが良いので大量に採ってたんだと。アイテムボックスに入れておけば腐らないからね。


市販のアイテムボックスにも時間停止がついてたのには驚いたっけ。


物作りの魔法を貰った渡り人が設計図作ったらしいけど。


まあそんなことはいいか。


他の果物はレガージュの実が4箱、サマーベリーが5箱、葡萄っぽいブブの実が3箱、バナナみたいなナナの実が4箱、手のひらサイズのアロナの実が6箱、謎果実のミミーの実が2箱、アボガドのような見た目のリウの実が1箱、ザクロっぽいザロクの実が2箱、ベリーシリーズのスプリングベリーが3箱、オータムベリーが4箱、白いウィンターベリーが1箱。後は孤児院で出さなかったAランクのオーガツリーの実。これが4箱。


ウインターベリーは雪の中でしか成長しない珍しい果物らしい。孤児院で仕分けしながら食べたらとても甘くて美味しかった。


下の階から二人を呼んで作業をする。


レモナは半分は厚めに皮を剥き、もう半分は皮付きだ。輪切りにしたり適当な大きさに切る。

切り分けた物を入れる大きめなタッパーは無いので保存瓶に入れておく。必要量をトングで取り出す事にする。

皮なし輪切り、皮なし乱切り、皮付き輪切り、皮付き乱切り4つの瓶いっぱいになるまで切った。


次にレガージュの実、これはまず半分に切ってアボカドと同じような要領で種を取り出す。皮は食べられるみたいだからそのまま。後は適当な大きさに切り分ける。ただしこれらの作業を極力力を加えずに行った。触るだけでシュ…っと音がするんだもの。


これも取り敢えず保存瓶1つ分切った。


サマーベリーは小さな枝から摘む。一房?6-7粒が付いているのでそれを丁寧にバラした。これは2瓶。全部バラしておいた。


ブブの実もサマーベリーと同じように房からバラした。ただサマーベリーよりも粒が大きいので全部で1.5瓶になった。


ナナの実はまだ保留。青臭いんだもの。あ、時間経過の魔道具使えばいいのか?でも急ぎじゃないし別の日でいいか。


アロナの実も皮ごと切ろうとした。包丁を入れた瞬間水風船が破裂したみたいに水滴が飛んだ。


「ごめん!飛んじゃった」


「大丈夫です」


「アロナの実は皮剥いてからの方が飛びにくい…っス」


「そうなの?ありがとう」


手のひらサイズのアロナの実は薄い紫色で弾力が凄い。巨峰の粒を手のひらサイズにして限界まで水分詰め込んだ感じ。皮を剥くと半透明の実が出てきた。果汁が凄い。


半分に切ると中の種を取る。小指の先くらいの細長い種が数個入っていた。取り除いて適当な大きさに切り分けた。これも保存瓶1つ分にしておいた。


続いてミミーの実を切ろうとしたら…


「これも剥いてからの方がいいかな?」


ミミーの実はアロナの実に似ていた。大きさは同じくらい。色は薄い水色。触り心地は少しフニャっとしてる。


「ミミーの実って確か…」


「魔力…だよな?」


「何々?」


二人は顔を見合わせた。私だけ分かってない。


「これ採取した人に聞いた方がいいです。採取した人の魔力で味変わってます」


ユリナさんが答えてくれた。


「マジで………」


そう言われたのでミミーの実はハンスさん達に確認してから切ることにした。


これ見分けつくのかな…。


続いてリウの実。見た目アボカドそっくりだ。半分にするべく刃を入れる。真ん中に達する前に固い感触があった。種大きいな。ぐるりと一周する様に刃を入れ、アボカドの種を取る要領で左右の実を回し実を取る。実は鮮やかな赤みがかったピンクだ。後は実と皮の間に指を入れ滑るように実と皮に分けた。意外と実は固い。後は適当に切り分ける。保存瓶の半分の量にしかならなかった。



ザロクの実。



「……………どうやって割るのこれ」


硬っっっっっっっっっ!!


くるみみたいな殻で包丁が入りそうにない。金槌?金槌が必要なの?あれ?孤児院に持ってった時ってこんなだったっけ?これ種?


「ザロクはこうするんです」


ユリナさんがザロクの実を手にし台に置き支えると包丁の持ち手部分で叩いた。


ガンッ!!


すると硬かったザロクの実は綺麗に半分に割れた。あれだ。ガチャガチャのカプセルを足で踏んで開けるみたいな感じ。中から黒い粒々が出てきた。イクラを黒くした感じ。


「にしても二人とも果物に詳しいね」


テキパキと作業してくれるし凄く作業捗る。手際がすごく良い。


「採取メインで活動してたので…」


「狩りより危険も少ないっスから」


今は荒らされて全然採れないから稼ぎが少ないんですけどねと落ち込むユリナさん。


最初のイメージは最悪だったけどね。


「これからもお願いしたいくらいだよ」


というと二人は勢いよく顔を上げ


「是非!!」


と声を揃えて言ってきた。


「分かった。一人じゃ手に負えない時は声かけるよ」


そう言いながらザロクの実を処理していった。コツを掴めば結構簡単に開いた。全部開けても保存瓶1つ分にしかならなかった。


ザロクの実が終わると次はスプリングベリー、見た目は小ぶりな苺。色は薄めの赤。ヘタを取り瓶の中に入れていった。

保存瓶1.5瓶になった。


オータムベリーは茶色い実だ。栗のような見た目。何でベリーって名前何だろう?まあいいや。

殻は硬め…一箇所切れ目を入れて縁を押し中身を出す。地味に手間がかかるな。

取り敢えず保存瓶1つ分でやめた。時間かかりすぎる。


ウィンターベリーは真っ白。皮も食べれるので房から外してバラしておく。保存瓶3割分ぐらいにしかならなかった。


「オーガツリーの実だ…」


「凄い…」


最後に出したのはハンスさん達が採ってきた?退治してきた?オーガツリーの実。クイナさんに習ったように皮を厚めに剥き輪切りと乱切りそれぞれ1瓶づつ用意していった。


ここまでで今日の作業は終わりにしておいた。

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