第43話 孤児院と依頼と駄菓子屋2





「これがお手伝いのお金です」


「確かに受け取りました」


みんなにお菓子を配り終え今日の作業の終了を告げた。


もはやみんなお菓子に夢中だった。


駄菓子をアイテムボックスに片付けるとオリバー先生に話しかけ最初の応接室へと戻った。


「果物もお菓子もありがとうございます」


今日不参加の子や小さい頃向けにも100円分づつお菓子の詰め合わせをオリバー先生に渡しておいた。


「いえいえこちらも助かりました。何せあの量ですから」


一人でやったんでは最低でも数日は掛かったと思う。


「また機会がありましたらお願いしますね」


「是非よろしくお願いします」


右手で握手をし孤児院を後にした。








「で…何か用かな?」


孤児院から出て家に戻る最中誰かに跡をつけられていた。


遠くから監視するでもなく足音を消すでもなく、…むしろこの雑音だらけなのに聞こえる足音って何!?


そんな至近距離でつけてるの?気づいて欲しいの?何なの?


一応魔道具をつけてるので何かあっても安全だ。そう言う思いからつい強気になる。


家までもう少しというところで振り返り相手に問いただした。


「…………って貴方達」


そこに居たのは昨日冒険者ギルドでぐるぐる巻になった二人だった。


確かアレクとユリナだったっけ?


「何か用?」


そう問えば罰の悪そうな表情をする二人。


「昨日は………すまなかった」


「昨日はごめんなさい」


バッと頭を下げる二人。昨日とはまるで印象が違うので面食らってしまった。


人通りが少ないとは言え通行人はいる。


一目が気になったので取り敢えず家に入ってもらうことにした。





「で?何であんなことしたの」


しょぼんと落ち込む二人にお茶を入れて小さいテーブルに置く。


家具がまだ揃ってないので地べたに元の世界から持ってきたクッションを置いてその上に座ってもらった。


「…………」


しばらくして語った内容を聞くにはどうやら私がこっちにきたことと関わりがあるような内容だった。


まず二人の年齢は16才、昨年孤児院から出て冒険者を始めたそうだ。


今までは冒険者ギルドで先輩の冒険者の手伝いや採取、小さな魔獣を狩ったりして暮らしてきたそうだ。


そしてもうすぐオリバー先生の誕生日があるらしい。


今までは孤児院の子達でお祝いしていたが今年は自分達でプレゼントを渡そうと計画してたらしい。


今までの稼ぎだったら何とか捻出できそうだねと二人で話していたところで渡り人が来てしまい魔獣が激減。


他の冒険者まで今まで見向きもしなかった採取依頼や小さな魔獣を狩るようになってしまった。


他の街に出稼ぎできる腕がある冒険者はそちらへも多少流れたらしい。


この二人はそこまでの路銀もなければツテもなく苦しい苦境に立たされたそうな。


ようやく稼げそうな採取依頼…私が出した依頼をこなしたはいいものの貰えたお金は期待していた金額の半額。


そこに果物を引き取りに来ていた私を見て頭に血が昇ったらしい。


捕まった後はギルド職員に引き渡され説教された挙句孤児院にまで連絡が行きオリバー先生にも叱られたらしい。


ここでようやく頭が冷えて謝ろうにもどこにいるか分からない。


今日はオリバー先生のツテで荷物運びの手伝いに行ってたみたい。


仕事が終わり孤児院に顔を出そうと思ったら孤児院から出てきた私を見つけた…と。


話しかけようと思ったがタイミングが掴めず逆に声をかけられてしまったらしい。


最後の方はぐずぐず泣きながら語られた。


うーむ。


しょうがない。


「今日はこれから空いてる?」


「「………空いてる」」


「オリバー先生の誕生日はいつ?」


「…明後日」


「じゃあ今日と明日は私が二人を雇う。それでいい?」


「いいのか………?」


「私達酷いことしちゃったよ…?」


「まあ良いよ。人手は欲しかったし」


ほら顔上げてと顔上げさせると涙と鼻水でぐちゃぐちゃだった。二人にタオルを渡して拭いてもらった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る