第38話 悪徳商人




「え…400?は?金貨5枚だぞ?は?」


「?じゃあ3500のチョコだと?」


混乱しているハンスさんを余所にピンときていないイリスさんがユリウスさんに問う。


「約9倍だから白金貨4枚と金貨5枚かな」


「白金貨4枚!?!?!?」


金額を聞いたイリスさんは眼を見開いてチョコを見た。


「これで白金貨4枚と金貨5枚!?」


「…………え?」


そこに顔色を青くしたクイナさんが会話に加わる。


「このチョコの山って…………」


分かりやすく冷や汗をかいている。


「50000円分なら酒盗の約125倍だから……星金貨6枚白金貨2枚金貨5枚かな?」


「えっ…………………」


ユリウスさんから金額を聞いたイリスさんとクイナさんは見てわかるくらい動揺した。


「星……金貨?」


「えっ………これ………えっ………?」


「もう出してもらっちゃったよ…………」


二人は泣きそうだ。


「はい!なので残りは49400ですよ!選んでくださ「選べるかっっっっ!!!!」」


ハンスさんに目一杯突っ込まれた。


「いや…いやいやいや。おかしいだろ。元々俺たちの報酬白金貨1枚。これは分かるか?」


「そうですよね?」


「はい。これの金額は金貨何枚?」


そう言って酒盗の空き瓶を見せられた。それはハンスさんが競りで買ったやつだ。


「金貨5枚でお買い上げいただきました」


「そう。金貨5枚。つまりこれ二つで白金貨1枚分になるんだ。分かるか?」


「はい」


「それが魔力400つまり400円。分かるか?」


「むー。でもパン一個銅貨1枚ですよね?元の世界でパンって一袋100円です。だから100円が銅貨1枚です」


「もうどういうこと?」


「こらイリス。諦めるな」


私とハンスさんの応酬にイリスさんは頭を抱えた。


それを見ていたユリウスさんはイリスさんを嗜めた。


クイナさんは青い顔してふるふる震えてる。


「それはそっちの世界だからだろう。今はこっちの世界にいるんだ。こっちの物価に合わせろ」


「むー」


「むくれてもダメだ。今回のチョコ代は払う。代金は星金貨6枚白金貨2枚金貨5枚だっけか?ユリウス」


「そうだ」


「まず桜は果物欲しがってたよな?今俺たちの手元にある果物から依頼にそう果物を選んでくれ。残りは現金で支払う」


「いや悪いですよ!そんなつもりで渡したんじゃないです!」


「それは価値を考えなかった桜が悪い。諦めて受け取れ!ユリウス、イリス、クイナもそれでいいな?」


「「うん」」


「構わんよ」


「ぇえ………」


なんか押し売りみたいなことになってしまった…。


「じゃ…じゃあせめてお金じゃなく果物でお願いします!支払いは今じゃなくできる時で!!」


このままだとハンスさんに押し切られそうだ。何とかハンスさん達の負担を減らすべくそう提案した。


じっとこちらを見るハンスさんを負けじと見返す。


「……分かった」


何とか頷いてもらえた。


「これに懲りたらもうちょっと相場考えろ。いいか?」


「………はい」


「魔力100に対して金貨1枚。それくらいで丁度いいはずだ」


「………はい」


「見ろ。お陰でイリスとクイナがとんでもないことなってるじゃないか」


「………はい」


ちらりと二人を見ると青い顔して涙目になってた。多分その様子からして灯里と一緒にした女子会の事も頭に浮かんでるみたいだ。ご飯奢ったりして足りてたと思ったら全然足りてなかった。それどころか借りが増えてた!!って感じかな……。


「って事でユリウスには悪いことしたな。選ばせられなくでごめんな」


「私は別に構わんよ」


そうか。ユリウスさんには何も渡してなかったな。


「せめてユリウスさんにも一つ渡したいです」


「む………」


再びハンスさんを見返した。


一瞬顔を歪めたかと思ったらはぁーっとため息をついて頭をガシガシ掻いた。


「……ユリウス。一つ選ばせてもらえ」


ユリウスさんは苦笑して頷いた。


そしてユリウスさんが適当に選んだ物は○○禁カレーだった。


ユリウスさんに辛いものは平気かと問うと平気だよと答えてくれた。が、心配になったので手持ちであった物をアイテムボックスから取り出してみんなに味見して貰った。


食べる前は、苦言を呈したそばから…と苦い顔してたハンスさんだったが一口食べてあまりの辛さに撃沈した。


ハンスさん、クイナさんは一口でギブアップ、イリスさんは大量に汗をかきながら美味しいと言い、当のユリウスさんは飄々と食べていた。


そんなユリウスさんには買ったはいいものの食べれなくて冷蔵庫に眠ってた罰ゲームによく用いられるハバネロ、ジョロキアのソースを貰ってもらった。辛さはオリジナルソースと四段階の辛さがある内の上から2番目。ついでにハバネロの実も処分してもらった。良かった。大変良かった。ユリウスさん凄い。私含め他三人はドン引きだった。ついでに持ってた私もドン引きされた。


そこに目をつけて引き取り料として星金貨2枚分値引き交渉した。


その後はハンスさんが持っているアイテムボックスから果物を見繕わせて貰って多めに見積もり星金貨4枚分。


残りは森で何か果物があったら採取してきてくれるという事で落ち着いた。


全く………悪徳商人に騙された気分だよ。とはハンスさんの談である。


生きた心地しなかった。とはクイナさんの言葉である。


私も金貨1枚に対して円は100と心の中にシッカリ刻みつけた。

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