第33話 商業ギルドと試飲
夕方
商業ギルドにて
「今日も買取お願いします!」
「金遣い荒過ぎだろうっ!!」
ギルマスに突っ込まれた。
昨日も一昨日も相当買い取ったはずだぞと言われてしまった。私もこんな使うと思ってなかったです。
こうなった経緯を話すと果実酒の試飲会が始まった。
広い会議室に机を並べその上に出来たばかりの果実酒を並べる。
この場にいるのは商業ギルドのギルマスのオーフェンさんと春子さん、商業ギルドの副ギルド長のマイケルさん、受付の女性と手の空いている職員の方々合計10名。時間も時間で帰るだけの人が集められたみたいだ。お酒だからね。
酔って仕事になりませんじゃ話にならないからね。
「…綺麗ですね」
ほうっと顎に手を当て値踏みをするギルマスのオーフェンさん。
「…懐かしいわね」
春子さんは少しだけ表情を崩して目を細めた。
職員の人がコップとお玉を持ってきてくれて飲み比べが始まる。
「赤っ」
「彩りいいね」
「甘っ」
「甘すぎ…」
「香り良いね」等等そこらで感想が呟かれている。
「これ…レモン入れた?」
林檎の果実酒を飲んだ春子さんの問いにいいえと答える。
そう聞くと春子さんは席を外し何処かからか水差しを持ってきた。
「レモンに似たレモナの果実水よ」
水差しの中にはレモンに似た輪切りの果実が浮いている。
林檎の果実酒は確かに甘かった。
春子さんは自分のコップの中を見せる。
残りの量はコップに対し残り一割を切っていた。
それにレモナの果実水をコップに対し8割まで注ぐ。
赤みが薄まり薄らとした色合いになった。
それを一口飲むと頷き私の方にコップを寄越した。
「飲んでみて」
コップを受け取り一口含む。
「あ…飲みやすい」
レモナの酸味がいい感じに林檎の甘さを中和して飲みやすくなった。
「果実酒作る時そのまま作ったでしょ」
「はい」
「もしかして作るの初めてだった?」
「梅酒しか作ったことなかったです」
「なら次作るときはレモンも一緒に入れて作ると飲みやすくなるわよ」
コップを春子さんに返し、林檎とレモナのお酒を飲みながら春子さんは教えてくれた。
その様子に気づいた他の職員も真似をしてレモナの果実水を入れ始めた。
「ん!美味しい」
「これはいいね」
甘過ぎるという評価から好転した。
…甘過ぎるのがダメならば
「こういうのはどうですか?」
アイテムボックスから氷の魔道具を取り出しかき氷状の氷をコップいっぱい出し甘い果実酒をかけた。
そこにアイテムボックスに入ってた市販のレモンの果汁を出しかける。
スプーンを取り出してみんなに見せるように掬い食べた。
……大人なかき氷!
それを真似して食べる人も現れた。
「これは売れそうだ」
「原価は高いけど薄めたらそこまででも無いね」
「うん。甘いお酒女性に受けそう」
ギルマスのオーフェンさんは周りの反応を見て
「橋沼さん、この果実酒試しに販売してみますか?」
買取も出来ますねと言われた。
「委託販売ですか?」
してみたい気はするが…これ……魔力めっちゃ使う。
せめてこっちの材料で作成の目処が付いたら……いや時間経過の魔道具結構魔力使う。
「そうですね」
「…………無理です。魔力めっちゃ使います」
なんなら魔法で取り寄せた方コスパいい。
作るの楽しかったけど。作るのすっっっっっっっごく楽しかったけど!!
「そうですか」
「こちらで度数の高いアルコールを売ってる場所はありますか?」
時間なら置けばいい。アルコールや氷砂糖があればワンチャン…!
「…残念ながら。こちらでは10%台がせいぜいですね」
無かったぁぁぁぁぁ。
「そうですか…」
「ちなみに度数の高いアルコールの製造方法などはご存じないですか?」
「芋と麦を使うことくらいしか分からないです…」
「そうですか」
10%台じゃこっちの材料のみで作るのは厳しそうだ。
お互いに残念そうな表情をした。
「ではアルコールの度数を高める方法が見つかりましたら声がけさせてください」
「こちらこそよろしくお願いします」
今ある果実酒は全部買い取ってくれることになった。
商業ギルドと提携している酒場で市場調査をするらしい。
全部で星金貨10枚と白金貨8枚で買い取ってくれた。
果物と氷砂糖分、もっと販売価格上げようとしてくれたけどこれでも充分高いのでおまけしておいた。
1080万円でおまけってなんだっていう話だけど。
春子さんから果実酒のコツも聞けたから十分だ!今度はこちらの果物で作ろうっと。
日も暮れてきたし宿に帰ることにした。
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