第16話 治療日と登録1




「灯里さん居ますか?」


お昼過ぎ、夕食の約束をしてクイナさん達と一旦別れ冒険者ギルドを訪れたらカウンターに灯里の姿が無かった。


手近の受付で灯里の名前を出し呼んでもらった。



「お待たせお待たせ!」


受付の列から外れて待っていると奥から灯里さんがやってきた。


「忙しかった?」


「今日は低ランク向けの治療日だったからその手伝いをしてたんだ」


「治療日?」


「こっちでは医者がいないんだ。病気も怪我も全部魔法でちょちょいのちょい。神殿で治してもらえるよ。ただ怪我の度合いで金額が嵩むから低ランクの冒険者や一般市民だと怪我を我慢しがちなんだよね。で、冒険者ギルドで金額補助して神官を週に一度派遣してもらってるの。後簡単な怪我は包帯巻いたりして応急処置してあげてるんだ」



「そうなんだ」


灯里は棚から用紙と魔道具らしき板状の道具を持ってきて起動させた。


「はい。用意できた。こっちの用紙に名前、年齢、性別、を記入してね」


ペンを渡され言われた通りに記入して行く。


「これって日本語?」


「私達に見えてるけどこっちの人達にはこっちの文字に見えるらしいよ。はいOK。次に こっちの板に手を置いてもらって良い?」


言われた通りに銀色の板に手を置いた。そこから白い光が出たかと思ったら色が変わり黄色になっていった。


「はい。終わりだよ。後はカードの発行だね。こちらはギルドの銀行と連携しておく?」


「銀行と連携?」


「大金を持ち運びたくない人向けだね。登録した人以外出金出来ないようになってるから安全だよ」


「じゃあお願い」


「はーい。カード発行は半日かかるから夕方になるね。時間は大丈夫?」


「それなりに時間かかるんだね」


「まーねー。どうする?」


「この冒険者ギルドでできることって何があるの?」


「このギルドは地下には練習場、2階には採取用の図鑑などがあるよ。後はこのフロアだと依頼書の掲示板、買取受付、パーティー募集掲示板何かがあるね」


「じゃあ冒険者ギルド内をちょっとうろうろしてみる」


「分かったもし出る時は教えてね」


そう言って灯里は用紙を持って戻って行った。


さて、私は掲示板でも見てみようかな。


この時間帯は依頼を受けるにしては遅すぎる、依頼達成するにしては早すぎる時間みたいで人がまばらだ。


掲示板の前も空いていた。


掲示板の依頼書は少なかった。


用紙が少し黄ばんできた討伐依頼、依頼料が少ない採取依頼、内容があやふやな依頼、そんなものばかりが残っていた。


採取依頼を見るとヒール草が1束銅貨5枚、わななき草が1束銭貨7枚枚、朝露草が1束銅貨2枚等。


他にも実やら葉やらもあった。全部ど銭貨や銅貨だ。


どれも聞いた事がない物ばかりだ。と言うか依頼料銭貨とか銅貨って少なくないか?複数受けるの前提なのかな?


どう言う物なのか興味が湧いたので2階にあると言う図鑑を見に行くことにした。



受付の人に場所を聞き2階に行く。


資料室と書かれた扉を開けると職員の制服を着た人が居た。


「何かお探しですか?」


「採取用の図鑑をみたいんです」


「それでしたらこちらの棚にありますよ」


「ありがとうございます」


室内は10畳ほどの広さだった。


先客が居たみたいで職員に質問したりしている。だいぶ若そうだし冒険者になりたてなのかな?

勉強熱心なのは良い事だよね。


他にも数人棚の前で資料を探したり何かを書き写したりしていた。


私も教えられた棚の前に行き本を探した。


本棚には植物図鑑の他に魔物図鑑や歴史の本なんかもあった。


お目当ての本を手にすると空いている席に座りパラパラとページを捲った。


元の世界での図鑑は写真付きだったがこちらの世界の図鑑はイラストだ。


植物名はあいうえお順ではなく発見順みたい。簡単に並べ替えできないからね。


書かれている内容はまず毒の有無。採取場所、採取可能時期、採取用途などなど。


毒に関しては重要だよね。野営中に食べたりすることもあるだろうし。


場所は後から何度も書き直されたのか汚い。


時期とかかなりアバウトだ。この時期に見かけたよって感じな物ばかり。四季がはっきりしてないのかな?


採取用途や採取方法なんかは詳しく載ってる。その後の処理方法も詳しく載ってる。取れなくなったら大変だからか。それとも直接金額に関わってくるからなのかな?


相場なんかは載ってなかった。


植物図鑑というより採取図鑑って感じだ。


個人的に逃げる薬草シリーズが興味深かった。薬草を罠にかけるって何!?


見たことない植物ばかりでとても面白かった。なんなら採取に出かけたいくらいだ。


攻撃も防御もできないから今は無理かなと思いつつ本を棚に戻した。


窓の外を見るとまだ日は高い。


夕方まで時間はありそうだなと思いせっかくなので魔法の練習をする事にした。

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