第8話 宿



教えてもらった宿はギルドからも程近く賑やかな通りから一本中に入った場所にあった。  


煉瓦造りの2階建てで可愛らしい雰囲気の宿だ。


「こんにちは」


「いらっしゃいませ」


「今日って空いてますか?」


「空いてるよ何泊だい?」


「えっと一泊いくらになりますか?」


「朝晩食事込みで一泊銀貨3枚だよ」


「じゃあとりあえず10日お願いします」


「はいよ。 金貨3枚だね」


お金が入った袋をアイテムボックスからだしお金を支払った。 


「はい。 ……確かに。 部屋は2階の一番奥になるね、これが鍵だよ。 食事は隣接の食堂で食べておくれ。 これが食券だよ」


「ありがとうございます。 ……すみません。 灯里という女性が訪ねてきたら教えてもらっても良いですか?」


「なんだい。 灯里ちゃんの知り合いかい? 分かったよ伝えるよ」



鍵を受け取りお礼を言うと2階へ上がり部屋へと向かった。


部屋はシンプルな作りだった。


シングルベッド一つと机と椅子、清掃は行き届いており落ち着く部屋だった。

そして驚くことに小部屋が一つ有り洋式トイレがあった。


灯里さんがおすすめするだけはあるな!


とりあえず扉に鍵を掛け荷物を置きベッドへダイブした。


お日様の香りがする。


シーツに顔を埋め匂いを嗅ぐ。 心が落ち着く匂いだ。


「寝る時間はないし貰った異世界howto本でも読むか」


起き上がり荷物から冊子を取り出し目を通すことにした。


椅子に腰掛けパラパラページを捲る。

元の世界とこっちの違いについて書いてあった。


お金について

この大陸の地図

この国の地図

この街の地図

おすすめの飲食店

魔法について

魔獣について

スタンピードについて

各ギルドについて

この街の渡り人の取り扱いについて

貴族の渡り人の取り扱いについて

この国の渡り人の取り扱いについて

教会について

植物について

知識チートをするに当たって

等々他にも色々書いてあった。


基本的に渡り人とこちらの世界の人たちの関係は良好みたいだ。

この街に籍を置けばほぼ安全らしい。

貴族は理由をつけて渡り人を確保したいらしい。 特に回復魔法の使い手を。

国は渡り人に対してノータッチらしい。 一応人数だけは把握するみたいだ。

過去に渡り人の魔力の高さに目をつけ戦闘の道具にしようとした国があったらしい。

逆に結束した渡り人により逆襲されて滅ぼされた国があるらしい。

それからこの国でも他の国でも渡り人に無理強いをすることは無くなったらしい。

数年居れば戻ってしまうのだから元から居ないものとして扱うみたいだ。

藪を突いて蛇出すなって事みたい。


魔法については回復系、攻撃系、作成系、特殊系、みたいに項目が分かれてた。

回復は怪我の治療や病気の治癒

攻撃は魔法攻撃特化。これは殆どいないみたい。通常の属性魔法は使えるからね。

作成は錬金とか合成とか種とか生産関係

特殊は鑑定とか通販とか契約とか一番種類が多い。よく分からないものは取り敢えず特殊らしい。


これらは今までこんな魔法がありましたみたいな感じでサラッと流されてた。 いろんな魔法があったからこちらの世界の人は色々耐性がついてるぞ。 ……あれ? なんかやっちゃいました? とか言うなよ。 黒歴史になるぞと助言があった。 書いた人もなんかあったのかな?


中々面白くて読み耽ってると扉をノックする音が聞こえた。


「失礼します。灯里さんがお見えですよ」


「はい! 今行きます」


冊子を鞄に入れて一階の受付へと向かった。

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