銃と刀の魔法殺し

@ASSARIASAKI

現在地:国立魔法研究大学。1-A。

 黒色の長髪が、窓から流れる風に揺れる。


 そしてその手には、拳銃が一丁。


「お待たせしました。」


「いえ、私も今来たところですから。」


 そう言って笑う、僕と同じ年齢の女子生徒。


 しかし、着ている服はこの学校のモノではない。


 それはまるで、軍服のようなデザイン。


 スカートではなくパンツルックと、黒いコートを羽織っている。


 そして何より目立つのは、腰に装着されているホルスター。


 一丁は手に持っているハンドガンタイプの自動式拳銃。


 もう一丁は……なんだあれは、ライフルのような武器?


 見たことのない種類の銃だが、彼女がそれを抜くことはなかった。


「さぁ、行きましょうか。」


 僕の横に並んだ彼女は、そのまま歩いていく。


 そんな彼女に僕は黙ってついていく。


 向かう先は__『国立魔法研究大学』


 その名の通り、魔法について研究する機関であり、魔法の教育も伴う機関でもある。


 魔法とは、体内にある魔力と呼ばれるエネルギーを使って超常現象を引き起こす技術。


 人類は歴史において多くの兵器を作り直してきた。


 銃に戦車や戦闘機をはじめに、毒ガスなどの化学兵器から、核兵器という大量破壊兵器を生み出した。


 しかし、たった一つだけ生み出せなかったものがある。


 それは、人だ。


 倫理観か?それとも…神の思惑か?


 人は人を創れなかった。


 より良い人を創れなかった。


 強い魔法使いを持つかどうかは、運。


 大国だろうが小国だろうが、魔法使いの力量差で戦況を変えてしまうほどの強力な力。 


 それ故に魔法を学ぶことが出来る学校は、世界中に存在する。


 もちろん、この日本にも。


 それが『国立魔法研究大学』


 ここに通うほとんどの学生が、魔法のエリートである。


 もちろん、全員が全員そうというわけではないけれど。


 ただまぁ、僕にとっていい思い出のある場所ではない。


「どうされました?」


「え。あっ、すいません。何でもありません。」


 考え事をしていたら、つい足を止めていたようだ。


 慌てて彼女を追いかける。


「そうですか。それでしたらよろしいのですが……」


 心配そうに顔を覗いてくる彼女に、僕は苦笑いと一緒に答える。


「大丈夫です。それより、今日はよろしくお願いします。」


「はい。お任せください。」


 笑顔を見せる彼女につられて、僕も微笑んだ。




 『国立魔法研究大学』__通称、魔研大。


 国のエリートが通うこの学校は、入学までの狭き門を通らなければならない。


 また全寮制の学校であり、敷地の広さは日本のトップクラスだろう。


 そんな敷地内に存在している建物の一つに、僕らはいた。


「あの、本当にその格好でよかったんですか?」


 不安げに聞く僕に向かって、満面の笑みが帰ってくる。


「はい!問題ございませんよ。」


「そ、そうですか。」


 安心と困惑に挟まれていたのも束の間、「それにしても……」とつぶやいて、僕は全身を舐めるように見回された。


「とってもお似合いですね。まるで俳優さんみたいです。」


「……ありがとうございます。」


 褒めてはくれているんだけれど、何だか気恥ずかしい。


 今の服装はというと、黒色のジャケットと白いシャツ。


 濃紺色のネクタイといういたって普通のものである。


 ただ、ズボンはかなりきついので動きずらい。


 ただそれ以上に、刀が邪魔だ。


「僕も銃がよかったです。」


「あら、刀も使い勝手が良くて悪くないですよ?……それでは参りましょうか。」


「はい。」


 僕らは、目的地に向かって歩き出した。




 魔研大にはいくつかの学科が存在する。


 その中でも『魔法師育成計画科』と呼ばれるところが、最も競争率が高い。


 才能を持ちながら、魔法教育を受けることが出来なかった子供たちに、魔法教育を施す事を目的とした学科。


 その中でも、更に優秀な人材だけを集めたクラスがある。


 それがこの、1-A。


 将来を約束された、天才of天才。


 国の最高峰の授業を受けるにふさわしい者たち。


 極少数だけが在籍を許された特別な学級。


 そんな彼ら彼女らと接触するため


「失礼いたします。」


 僕らは、このクラスの担任の後に続いて教室にやってきた。


 ……もう何百回ときたところだけど。


 コンコンとノックをしてドアを開く。


 室内の視線は一斉にこちらを向く。


 見わたすと驚いた顔をしている人もいる。


 それもそうだろう、だって僕のような見た目同学年が正装で現れたのだから。


「お初にお目にかかります。本日、皆様の担当となりました、棹止さおとめと申します。」


「同じく、古囃子こばやしです。」


 軽い自己紹介を終えると、僕は彼らに言った。


「皆さんを、殺します。」


 ざわつく教室内。


「古囃子君。早く終わらせましょうか。」


「そうですね。」


 ざわつきは、悲鳴に変わった。




「棹止さん、そのライフルみたいなの使わないんですか。」


「もったいないじゃないですか。」


 殺そうとした一人の生徒が声を上げる。


「な、なんで俺たちが殺されなきゃいけないんだ……」


 棹止さんが口を開く。


「あなた達が魔法で造られた人間だからです。」


「え?」


 戸惑った様子の彼に僕が答える。


「あなた達からは、魔力原動が感知されています。」


「なんだ……それ。そ、そんなの知らない。造られたって……だって俺は17年間の記憶が……」


「偽物でしょう。」「偽物ですね。」


「そんなバカなことあるか!!お前ら、何を企んでる!!」


「しいて言うなら、世界平和?」


「ふざけるな!そんなバカみたいな……そんなので死んでたまるか!」


 男子生徒が手から、火球を放つ。


「いえ、死んでもらわなければ困るのですよ。」


 そう言って彼女はホルスターのライフルモドキに手を伸ばす。


「じゃあ俺が殺してやる!」


 二発目の火球が飛ぶ。


 僕に向かって。


 残った生徒が攻撃をしてこないように後始末をしていた僕は、完全に不意を突かれた。


 あと少しで、僕の顔が焼ける。


 だが、火球は目の前で消えた。


 まるで、何もなかったかのように。




 消えた火球に向けて、ライフルモドキを向ける棹止さん。


「な、なん……で。」


 呆然としている男子生徒を僕が切った。


 首がぐらりと床に落ちる。


「なんでしたっけその、なんとか弾。」


「魔法分散弾と、それ専用小銃です。」


「そうそれです。とても便利ですね。」


「弾数が少ないのがネックですが、とても強力だと思いますよ。」


 教室は既に死体の山だ。


「帰りましょうか。」


「ですね。」


 刀に付いた血を素早く振って雑に掃う。


「で、ここにいた生徒たちの何人が人造魔法使いだったんですか?」


「さぁ。知りません。」




「次のターゲットはどこでしたっけ。」


「≪曜日代行連合≫、この学校の卒業生だけで構成されている団体です。そして第一のターゲットは」


 土曜日担当、壊墨こわすみ けい


「えっと、使用魔法は……あらあら。」


「いったいどんな……ああ。」




 使用魔法は、時間の操作。

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