第3話 終焉の夢
見上げれば、広がる青空。
見下ろせば、燻る何か。
目の前にはあなたとの思い出の百日紅。
無残にも花は全て散ってしまった。
それはまるで、すべてを奪われた私のよう。
家族を奪われ、友達を奪われた。
大人たちの勝手な都合で。
たくさんの人が、たくさんのものを失くして泣いた。
そんな中、私が立つのは百日紅の下。
あなたに助けられた命とともに。
あなたとの秘密の約束を胸に。
蝉が鳴きやまない。
それは、永遠に続く鎮魂歌のようだ。
こんなにも些細な夢なのに、どうして叶わなかったんだろう。
視線の先には、崩れた黒こげ防空壕。
こんなにも早く離れてしまうのか。
永遠を誓った夏は、友達の消えた夏。
悲しい秘密は、ふたりだけのもの。
「ありがとう。また、会えるよね」
あなたが見つからないから、終わらないかくれんぼ。
あの頃のように、あなたを探す。
終われないかくれんぼ。
一人でいるのは、怖くて寂しい。
すぐにでも泣きだしてしまいそうなほどに。
「もういいかい……?」
あなたに会いたくて泣いた。
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