〈ハルト視点〉








ハルト「いやだよ…ねぇ、ヒナ…」






「友樹君には…沢山助けてもらったな…

 ヤッパリ頼れるブルーだね…

 あと俊君は…口が軽いからなぁ…

 そこが可愛いところだったけど…」





ヒナの言葉に首を振りながら何度も「ゃ…て…」と

涙で上手く言葉にならない声をあげた…






「洸君は友達思いのいい子だし…

  たまにツッパしちゃうけどね?笑

 悟君にはウジ男なんて言って…

  適当なお説教しちゃうし…

  ハルの友達にバカ大学生なんて怒鳴っちゃったしね?笑」

 

 


 


ヒナの言葉を聞きながら俺は膝に力を入れて

立ち上がりヒナの元に足を向かわせた…

俺の大切な友達を…大切に思ってくれる

アナタだからこそ…

余計に会いたくなった…





( あの日ヒナがいたから… )






バーでヒナが洸達に声をかけなかったら

俺は今皆んなと笑い合っていなかったかもしれない…






( ・・・皆んな…アナタの事が大好きだから… )






「煌君には…泣かされたけどね…笑

  だけど…彼には大切な事を沢山教えてもらった…

  ありがとうって…伝えてくれる…?」






初めてヒナの口から煌の名前を聞いて

ヤッパリちゃんと覚えていたんだと

口の端が少し上がり「自分で伝えてよ…」と

笑いながら答えヒナに会いたいから…

涙で汚れた顔のまま走った…



 



「ハル…あなたの友達は良い子ばかりね…笑

 友樹君達も、煌君も…

 バイトの皆んなも…大切にしなさい…」


 




ハルト「・・・・・・」






ヒナの言葉を聞きながら

もうすぐ24時になるんだと分かり

奥歯にグッと力を入れて走った





「試験勉強もちゃんとするのよ?

 あと…来年は大学生最後の年だから…

 就職活動も…卒業研究も…

 忙しくなるからちゃんとお婆さんのご飯を食べて

 温かいベッドの上で寝なさい…」






袖で顔を拭きながら必死に走るけど

ヒナの家はまだまだ遠くて…






「 ハル…ありがとうね…

  あなたと過ごした一年は楽しかった…」



 


息を整えたいけど足も止めたくないから

耳から聞こえるヒナの声を聞きながら

溢れ出てくる涙を更に服の袖で拭った…



 



「・・・・アパートじゃなくてコンビニに行って…」

 




ハルト「ゃ…だよ……会いに…行くからッ…」






会いに来るなと言ってるんだと思い

走りながらそう答えると…






「あの部屋にはもういないのよ…」


 




走っていた足を止め「えっ…」と声がでた…

ヒナの言葉の意味が分からず動けないでいると



 



「コンビニに渡してあるから…」





ハルト「・・・・いないって…ヒナ…」





「・・・ぅんッ・・・」






電話の向こうから鼻をすする音が聞こえたから

ヒナも話しながらずっと泣いていたんだと気づき

本当に最後の電話になるんじゃと怖くなり

スマホを耳から離し時間を見ると

23時59分だった…






ハルト「待って!切らないでヒナッ!!」






「・・・ハル……素敵な大人になって…ね…」






ハルト「ダメ……ダメだよッ…ヒナッ!!」







そう叫ぶとさっきまで聞こえていた

ヒナの泣いてる声が聞こえなくなり

電話が切れたのが分かったけど

通話終了の画面を見るのが怖くて

耳に当てたままヒナのアパートへとまた足を向かわせ

「ヒナ…返事してよ」と繋がってもいない

電話に話かけ続けた…








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