〈ハルト視点〉









セイ「なんだえらくご機嫌だな?笑」



 


 

ハルト「えっ?笑」






オーダーを通すとキッチンから

成泉が顔を出して「どうした?」と声をかけてきた






ハルト「なんでもないよ…笑」






セイ「なんでもあるだろ、その顔わ!笑」






俺はバイトが終わると早めにロッカーへと行き

脱いだ制服をぐしゃぐしゃなまま

リュックに詰め込むとコートを羽織り

ポケットの中に手を入れると

昼間ヒナと撮ったプリクラが入ってなく

「えっ?」と両手をポケットに入れ

左のポケットに何か入っているのが分かり

ポケットから取り出して見ると…





ハルト「・・・・へ?」






俺は自分の左耳を触りピアスがあるのを

確認してからもう一度手の中にある

サフィアのピアスを見た…





ハルト「・・・・ヒナ?」





俺はロッカールームから出て走りながら

ヒナに電話をかけると

電話に出ないかと思ったヒナが電話をとって

「もしもし」と言うから

「ヒナッ!」と呼んでハッとした…






「今終わったの?お疲れ様」






ハルト「・・・・うん…今日は忙しかったよ!笑」







俺は何でヒナが電話に出たのかが分かり

ピアスとプリクラの事を気づいていないふりをして

このままヒナに会いに行こうとした






ハルト「今から出るから」





「・・・・はーちゃん…」





( ・・・・やめて…)





ハルト「タクシー捕まえるから待ってね」


 



「・・・・・・」






今日は11月30日で…

1年前の今日…俺たちは最後のデートをした後に

日付けが変わる前に最後の電話をして別れた…





そして今は23時50分で後10分もしないで

11月30日が終わる…






「はーちゃん」





( やめて…言わないないで… )







ハルト「タクシーこないな…

  走っていくからちょっと待ってて?笑」





そう言って俺は走りながら

今日のヒナの笑顔を思い出していた…

いつもよりも人目を気にせず

駅のホームでキスをしてくれたり

電車の中でも俺に肩を寄せてくれていて…






「はーちゃん…今日楽しかった」





ハルト「俺も楽しかったよ!

  また…来月はゆっくり行こうね?」





( 言わないで… )





「良かった…最後にまた一緒に行けて」





ハルト「また来月行くでしょ?笑」






声が震える…

走っていて息が上がってるのもあるけど…

少しずつ目尻に涙が溜まってきているのが分かる…





 

「ふふ…笑 ルッコラもありがとうね?

  久しぶりにパスタにして食べたよ…」





ハルト「・・・・ツッ・・また…作ってよッ!」





( ねぇ…ヒナ、言わないで )





「お爺さんとの畑の話を聞くのも楽しかったし…

  お婆さんの手料理も美味しかった…」





ハルト「やめてってばッ!……ぃわないで…」

 





俺は歩道でそう叫ぶと走る足を止めて

涙で上手く呼吸できない息を整えながら

「やめてょ…」と言った





「・・・・ハル…」






ハルト「なんで…約束したじゃん…

  また来月行くって…いちごも…

  来年の春になったら…

  一緒に食べようって…約束したでしょッ…」






「・・・・ごめんね…」






ハルト「・・・ンッ…な…んで…

  俺が子供だから…?

  ぉれもっと…ちゃんとする…ら…

  ヒナに…似合う男に…なるからッ

  だから…だから…ぉねがい…から…」


 




「そのままの…21歳のハルが大好きよ…」






ハルト「だったら…ナンデそんな事言うのッ…!

  ナンデ…離れようとするんだよッ!」






ヒナを怒鳴らないと約束したのに

周りには歩く人もいるのに…

道路に膝をついて泣きながら叫ぶ俺は…

やっぱりガキなんだと思う…











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