〈陽菜乃視点〉








(・・・・なんで… )







あの後…蒼司君に連れて行かれたのを

心配した桜が途中まで後をついて来ていたらしく

たまたま通りかかった健司が話しを聞いて部屋に入ってきた…







ケンジ「・・・・・・」






ソウジ「・・・・最近のヒナ先輩をみてると…

  僕はしばらく休む事を勧めたいですね…」





ケンジ「・・・・・・」






健司は蒼司君の話を聞きながら

手元の資料に目を向けてずっと黙ったままだった…






( なんで…こうなったんだろう… )






視界に映る足元は一歩一歩、歩いているから

今私はこのアスファルトの上を

歩いているのは間違いないんだろうけど…




歩く足に感覚はなく…

ふわふわと浮いている感じがする…






( ・・・・わたしは… )




 


急に腕を掴まれて

体をグイッと引っ張られたと思ったら

ウサギの顔が目の前にあって

眉を寄せて何かを言っているけど…






ケンジ「石田課長と話すから…今日は家に帰りなさい…」





私の耳には健司から

言われた言葉だけがずっと響いていた…






サクラ「・・・・先輩…」






部屋の外で待っていた桜にあんな顔をさせて…

新入社員の蒼司君にもあんな台詞を言わせて…






ケンジ「・・・・帰って…休むんだ…」






後輩や上司にも…

同僚達…皆んなに迷惑をかけて…







「・・・・ツッ……は…る…」






ハルト「なにがあったの!?会社は?」






「来ない…で……」






ハルト「・・・・へ…」






「・・ンッ……ぁいに…来ないで…」




 



ウサギのあんな顔を見たのは…

初めてだった…





 



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