10月29日(火)

〈陽菜乃視点〉









ソウジ「ヒナ先輩…ちょっといいですか…」






蒼司君の顔を見て背中が嫌な冷たさを感じた…

蒼司君の後をついていきながら

彼の背中から醸し出されている雰囲気に

息苦しく感じ首まである服の襟部分を

手で少し引っ張った…





蒼司君に連れていかれたのは

ミーティング用の小部屋で

部屋に入ると直ぐに廊下側の簾を下ろし

外から中の様子が見えないようにされた…





楽しい話でないのは分かった…

彼が手に握りしめているのは昨日私が作った資料で…

その資料がグニャッと曲がる強さで

蒼司君が握りしめているという事は

使えないという意味なんだと分かったから…





「座ってください」と言われ

蒼司君も目の前の席に腰を降ろすと

形を変えた資料をテーブルの前に置き

「見てください」と言ってきた…





資料を手に取り中身を確認するが

何に問題があるのか分からず

蒼司君の顔を見上げると

彼は口を少し開けて

私を信じられないという様に

目を上下しながら見てきた






ソウジ「先輩のミスとは思えないから

   誰かから嫌がらせでもされているのかと

    思ってましたけど…

  まさか、本当に先輩のミスなんですか?」






蒼司君の言葉に余程のミスなんだろうと思い

隅から隅まで見てみるけど…

おかしな点は一つもなかった…






ソウジ「・・・・アナタ会社を潰す気ですか?」





「・・・・へっ…」





ソウジ「毎朝、朝礼出てるしミーティング資料も

  行き渡ってるはずですよね?

   なら今うちの会社が何処と取引してるかも

   その頭の中にはちゃんと入ってますよね?」





「・・・・あっ…」






蒼司君の言葉に口に手を当てて固まった…

取り引き会社の名前を間違えている上に…

私が資料提供しようとしていた会社は

その会社と…ライバル関係に当たる同業者だった…





「・・・・コレ…資料は!?」





ソウジ「僕の方で昨日の夜に作り替えてから

  上司に渡しましたよ…」





「作り替え…」






ホッとはしたけど…

自分のしたミスの大きさに足は震えたままだった…






ソウジ「・・・・先輩休んだらどうです?」






「・・・・や…すむ?」





ソウジ「ミスも見抜けなかった先輩には…

    正直、仕事頼みにくいです…」





「・・・・・・」


 




ソウジ「頼んでも…不安です…」





「・・・・・・」





ソウジ「今の先輩じゃコッチの負担が増えます」









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