5月7日(火)

〈タツヤ視点〉










タツヤ「・・・・白玉?」






企業説明会の会場に着き

車に積んできた資料やポスターを降ろしていると

車が一台入って来て何気なく顔を向けたら

弟が熱を上げてる女に似ていた…






「もう!免許ぐらい取ってから入社しなさいよね!」





ソウジ「それパワハラ発言ですからね!」





「何がパワハラよ!!」





ソウジ「先輩も免許持ってたって

  ペーパードライバーじゃないですか!

  国道を時速40キロで走る人初めてみましたよ」





「あそこは法定速度が40なのよ!!」






タツヤ「・・・・・・」






なんだか分からないが駐車場の

真ん中で恥ずかしい内容を言い合っていて

声をかける気にもなれず知らないフリをして

資料の入った紙袋を両手に持って会場へ向かった






( ・・・・あってるよな? )






あの階段を降りる時に一度見たきりで

髪も伸びていてイメージが少し違うが…

多分白玉のはずだが…






「チョット!何で君がポスターで私がパンフなのよ!

  重さが全然違うじゃない!」


 




ソウジ「先輩の身長じゃこのポスター

  床について曲がっちゃいますよ!笑」






「曲がらないわよ!!」






後ろから聞こえてくる白玉達の会話を聞きながら

陽兎から聞くお姉さんのイメージは全くなく

むしろ逆のイメージしか湧かなかった…





会場に入り自分のブロックを確認してから

うちの会社名の書かれているスペースを見つけ

紙袋を降ろし次の荷物を取りにまた車へと向かうと





白玉と一緒にいた顔の良い後輩の男が

ポスターを手に中へと入って来て

(白玉は?)と見渡すと姿は見えず

車に戻りながらも首を振って探していると





「あのバカ新人…」





階段の下から白玉の声が聞こえて降りていくと

紙袋の取っ手が破れて床に置いたまま

困っているようだった








俺は小走りで車から予備の紙袋を手に取り

白玉の元へと戻っていくと

無理に持とうとしたのかさっきよりも

紙袋は裂けていて中のパンフがはみ出している






タツヤ「コレ…」


 




白玉に後ろから声をかけると

しゃがんだまま「え?」と振り返り

俺を見ると目を見開いて固まっている…






( ・・・・なんだ?知ってんのか? )





「・・・・・・」





白玉の目線が俺が首から下げている社員証に

向けられていることに気づき

陽兎の兄だと知っているんだと思った





タツヤ「紙袋どうぞ」





「あっ…ありがとうございます…」






俺も白玉の首から下げている社員証に目を向けたが

ジャケットの間に入り込んでいて

名前を確認できなかった





( この暑いのに…ジャケット? )





白玉が着ているのはこのシーズン用の

薄手のものに見えたが中に着ている物も

首までしっかり隠れるようなデザインで

暑くないのかと思った





ソウジ「どうしました?」





ポスターを運び終わった後輩が

階段を降りて近づいて来て

俺の事をナンダという顔で見てきている





「紙袋…破れちゃって…助けてもらったのよ」





白玉は俺の渡した紙袋に中身を入れ替えると

後輩の男に「はい」と差し出した






ソウジ「詰め込み過ぎなんですよ」





「・・・・残りの降ろしてくるからそれ持って行ってて…」





俺が陽兎の兄貴だと分かり

さっきまでの雰囲気と違う白玉に笑いが出そうになった





ソウジ「すみません、ありがとうございました」






後輩は俺に頭を下げて「先輩早く来てくださいよ」と

言ってから階段を上がって行き

白玉も俺に「助かりました」と礼を言い駐車場に

行こうとするから俺も白玉の後に続いた





タツヤ「暑くないです?」





「えっ?」と顔を向けた白玉に

「ジャケット」と言いサンサンと照らす

太陽をチラッと見ると





「あっ…暑いですね…ハイ…笑」





少し苦笑いをして答える白玉に

首元を出せない理由があるんだと分かり

それが何なのかも検討がついた…





( ・・・・ガキだな… )





バカな弟で申し訳ないと白玉を見ながら思い

自分の車へと歩いて行った








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